膝関節外科

広島大学整形外科の膝(ひざ)関節診療班では、スポーツ障害や一般外傷、加齢的変化などによる膝関節の障害を全般的に扱っています。特に前十字靭帯損傷後十字靭帯損傷などの靭帯損傷の手術件数が多くを占めています。その方法も、今では世界的に主流となっている自分の腱の一部を使って靭帯を再建する手技を以前から用いており、正確で侵襲の少ない関節鏡視下(内視鏡)手術を行っています。また、変形性膝関節症に対しては人工関節置換術や矯正骨切り術、創外固定器を用いて牽引を行う手術など、膝の骨壊死に対しては骨軟骨柱や人工骨を用いた手術などを行っております。さらに当大学病院で特徴的なことは、自分の軟骨を培養して軟骨損傷部に移植する、組織工学的手法を用いた自家培養軟骨細胞移植を行っていることです。患者さんは広島県内はもちろん、中国・四国地方、近畿地方、さらには関東地方からも来られております。スタッフは安達伸生(あだちのぶお)整形外科教授を中心に構成されています。学問的な活動も非常に活発であり、治療の成果を検討する臨床研究や、治療の根本を探求する基礎研究を日本や世界で数多く発表しています。

当診療班で対象としている外傷・障害には以下のようなものがあります。
前十字靭帯損傷、後十字靭帯損傷、内側側副靭帯損傷、外側側副靭帯損傷、軟骨損傷、変形性膝関節症、リウマチ性膝関節症、骨壊死症、半月板損傷、円板状メニスクス、成長軟骨障害、離断性骨軟骨炎、膝蓋骨脱臼・亜脱臼、分裂膝蓋骨、オスグッド・シュラッター病など。
当診療班で特徴的なものや代表的な例を簡単に説明します。

組織工学的手法を用いた軟骨再生

膝の障害では軟骨は大きなテーマです。関節軟骨は修復能力が乏しいため、一度損傷を受けるとなかなか治りにくい組織です。これまで、変形に至る前の限局する関節軟骨欠損について色々な治療法が工夫されてきました。前教授の越智学長は、当時島根医科大学に在任中の1996年に、アテロコラーゲンゲル包埋自家培養軟骨細胞移植術という方法を世界に先駆けてスタートしました。これは、自分の関節軟骨から軟骨細胞を分離してアテロコラーゲンというゲル状の足場の中で増やし、軟骨欠損部に移植するという方法です。この治療法により、これまで多くの患者さんにおいて良好な治療成績を収めてきました。この技術の広い普及のためジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社(愛知県蒲郡市)に技術移転を行い、全国5ヶ所での臨床治験を終了した後に厚生労働省に保険診療収載を申請し、2013年に保険診療の適応になりました。

前十字靭帯損傷

前十字靭帯損傷はサッカー、バスケットボールなどのスポーツをしている際、方向転換や片足着地などで膝を捻った時に受傷することが多い外傷です。前十字靭帯が損傷すると、関節の安定性が損なわれることで次第に不安定感を生じ、日常生活・スポーツに支障をきたすようになります。そのまま放置すると、二次的に半月板や関節軟骨の変性・損傷をきたす可能性があり、将来的に歩行困難の原因となってしまいます。前十字靭帯は治癒能力が乏しいため、手術以外の方法で損傷した靭帯が十分な機能を保って治癒することはほとんどありません。そのため、日常生活において膝の不安定感に不自由する場合やスポーツ復帰を望まれる場合はもちろん、半月板や関節軟骨損傷の進行を防ぐためにも、自家腱(自分の体から採取した腱)移植による靭帯再建術が必要となります。移植材料としては、膝屈筋腱、骨付き膝蓋腱、大腿四頭筋腱などを用いることが多く、いずれも良好な成績が得られています。当科では以前から膝屈筋腱もしくは大腿四頭筋腱を用いての靭帯再建術を行っています。その再建方法も、損傷した前十字靭帯の状態や膝屈筋腱の太さ、スポーツ活動量などに応じ、患者さんに合わせた解剖学的靭帯再建術や靭帯補強術を行っています。

半月板損傷

半月板は大腿骨と脛骨の間に存在し、膝にかかる荷重を分散し衝撃を吸収したり、膝関節を安定させたりする役割があります。半月板は主に線維軟骨とコラーゲンから成る三日月型の組織で、膝の外側と内側に別々に2つ存在しています。半月板が損傷すると、膝の痛みや不安定感などの症状を認め、将来的には軟骨損傷の原因となってしまいます。半月板損傷には、外傷に伴い半月板が損傷を受けるもの、先天的な形態異常などに伴うもの、加齢などによる変性に伴うものなど様々な原因があります。明らかな外傷以外に半月板損傷が生じるものとして、円板状メニスクスがあります。これは先天的な半月板の形態異常で、ほとんどが外側半月板に生じます。円板状メニスクスは通常の半月板より大きく厚く、軽度のストレスがかかっただけで容易に損傷することがあります。
半月板損傷に対しては、関節鏡による半月板部分切除術や半月板縫合術が行われます。半月板縫合術は断裂した半月板を縫合する方法ですが、関節包に付着している辺縁部以外では半月板の血流が乏しいため、この部分での断裂はなかなか治癒しません。当科では、このような治療が難しい患者さんに対しても、骨髄由来フィブリンクロット移植などを併用した半月板縫合術を行っており、できるだけ正常な半月板を残すことで半月板の機能が保たれるように工夫しています。

プロ・アマチュアスポーツとの関わり

スポーツ障害の中で膝関節の障害は多く見られ、重要な問題となっています。広島大学整形外科の外来へは、中・高・大学のスポーツ選手はもちろん、広島東洋カープ、サンフレッチェ広島、バレーボールのJTサンダースなどのプロ選手も多数診察に来られ、手術も行っております。また、広島東洋カープの試合などのプロスポーツの現場にも、チームドクターとして当教室の同門の医師たちが参加しています。

広島東洋カープとの交流

広島大学整形外科は公式チームドクターとしてチームをサポートしています(左写真:調印式での越智学長(写真左)と株式会社広島東洋カープ 代表取締役社長 松田元氏(写真右))。また、第86回日本整形外科学術集会総会において、越智学長が始球式を行いました(右下写真:始球式に向かう越智学長(写真 左)とゲストとしてバッターボックスに立ったGail Hopkins先生(写真 右:元広島東洋カープ外国人選手、現整形外科医))

サンフレッチェ広島との交流

サンフレッチェ広島が2012年、2013年、2015年にJ1リーグ優勝の偉業を成し遂げました!広島大学整形外科からも、チームドクターとして選手をサポートしています。優勝セレモニー(左写真)とトロフィーを持つ広島大学整形外科チームドクター(右下写真:左より月坂先生、寛田先生、今田先生)