脊椎・脊髄診療班

広島大学整形外科の脊椎・脊髄外科外来では、脊椎、脊髄疾患の診察、治療を全般的に行っております。 昨年度手術を行った疾患ではもっとも多い疾患は頚椎症脊髄症で、次いで腰部脊柱管狭窄症となっております。 この他椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍、脊椎腫瘍や、側彎症、脊椎骨折、胸郭出口症候群など、様々な疾患に対して 手術を含めて診察、治療を行っております。

診断にはMRI、CT検査などの画像診断に加えて、脊髄・神経の障害を機能的に診断する方法として、 1995年より頭蓋磁気刺激法を用いた運動誘発電位測定を行っております。この検査により脊髄・神経の障害が 客観的に診断でき、早期診断、他の疾患との鑑別、あるいは安全で低侵襲の手術が可能となっており、学会、 論文にてその有用性を報告しています。

治療としては、まず内服治療あるいは注射によるブロック治療を行います。それでも症状が改善しない 患者さんには手術を行うことになります。我々は安全で、なおかつ手術後の痛みが少なく、早期社会復帰が可能な、 なるべく侵襲が少ない手術を目指しています。我々は1980年代より、世界に先駆けて脊椎・脊髄の手術に 手術用顕微鏡を導入して手術を行っております。これにより脊髄・神経組織を手術中に傷つけることが無いような 安全な手術が可能になるのはもちろんですが、傷からの出血は最小限に抑えることができ、手術創も小さく、 術後の痛みも少なくて済みます。また、脊髄腫瘍などとりわけ慎重を要する手術では、手術用顕微鏡での操作に加えて、 脊髄の機能を電気的にモニタリング(監視)しながら手術を行っております。 また脊椎の手術では、手術中に金属のネジ(スクリュー)を骨の中に挿入することがあります。しかし、身体の外から骨の中のスクリューの方向を確認することが困難でした。近年、ナビゲーションシステムを導入することで、骨の中をどの方向にネジが進んでいるかを、画面上で確認することができるようになり、より安全に手術を行なうことが可能になりました。
代表的な疾患を簡単に説明します。

左図:ナビゲーションシステム 右図:ナビゲーション操作画面

 

頚髄症

人間の神経は脳から脊髄という太い神経となって下行し、途中で沢山の神経根という枝を出して、 手足の筋肉や皮膚にまで枝分かれして体の隅々を連絡します。脊髄は脳から体のあちこちへ繋がっていく本幹なのです。

頚椎症性脊髄症は、椎間板ヘルニアや加齢によって生じた骨棘などにより、脊柱管内で脊髄が圧迫されて起こる病気です。 両手足のしびれで発症し、進行すると運動障害、排便排尿障害を起こし、放置すると最終的には頚椎より下が 麻痺してしまいます。症状は徐々に進行していくので、ある程度以上進行すれば手術が必要になります。 手術はあまり急ぐ必要はありませんが、進行しすぎると改善が期待できなくなるので、タイミングを逃さないよう 注意が必要です。診断のためにはレントゲン、MRI、CTなどの画像診断で脊髄の圧迫を確認するのが主ですが、 当科では脊髄の電気的診断も行って、より確実な診断を目指しております。

実際の手術では、椎弓形成術がもっともよく行われます。これは頚椎の後ろにある椎弓に溝を作り開くことにより 脊柱管を広げる手術です。我々は1990年以降、片方の骨を繋げたまま片開き式にドアを開くように脊柱管を拡大する 「片開き式」の椎弓形成術を行い良好な成績を収めています。この手術法は拡大した椎弓が構造的に強いだけでなく、 同時に椎間板ヘルニアを摘出可能で、神経根の圧迫も取ることができる優れた方法です。さらに2003年始めからは 特別に加工したハイドロキシアパタイト製の人工骨を用いて、広げた椎弓の隙間にスペーサーとしてはさんでしっかり 固定しており、より早期の社会復帰を計っております。手術時間は3時間以内、出血量はごく少量で済みます。 手術の2日後には歩いてもらうことが可能で、ほとんどの方は手術後2、3週間で退院されます。

手術の効果ですが、脊髄は圧迫が解除されると少しずつ回復しますが、回復力にはかなりの個人差があります。 いずれにしても脊髄は脳と同じで一旦障害が起こると回復力に乏しいため手術のタイミングを逃さないことが肝心です。

以前から両手足のしびれがあり、最近お箸が使いにくい、足がふらつく、という症状が出てきた方は この病気の可能性があります。早めに受診されることをおすすめします。

左図:術前MRI 右図:術前脊髄腔造影CT
脊髄が前後から圧迫されているのが分かります(赤矢印) 同様に脊髄の圧迫が認められます

 

左:手術前 右:手術後
脊柱管は狭く、脊髄(*印)は強く圧迫されています。赤矢印の位置で椎弓の両側を削り、黄矢印の様に椎弓を開きます。 人工骨の椎弓スペーサー(*印)を用いた椎弓形成術により脊柱管は良好に拡大されています。拡大した椎弓はスペーサーにより強固に保持されており、早期離床、社会復帰が可能です。

 

腰部脊柱管狭窄症

脊髄は、脊柱管の中を下行していくと腰椎の上部で馬尾と呼ばれる神経の束になります。

腰部脊柱管狭窄症は、この馬尾神経が狭くなった脊柱管で圧迫されることにより起こる病気です。 症状は足のしびれ、痛みが主な症状です。特に代表的な症状は間歇性跛行といって、長い距離を歩くと 足のしびれが強くなって歩き続けられなくなるものです。座ってしばらく休むとまた歩けるようになります。 腰を前屈みにしていると比較的楽なのも特徴です。腰部脊柱管狭窄症は、激痛を伴う場合としびれが主体の場合があり、 また片側の症状のこともあれば両側の症状の場合もあります。

先ほどの頚髄症では早めに手術する方がいい、と書きましたが、腰部脊柱管狭窄症ではそれほど手術を急ぐ必要はありません。 と言うのは、歩けなくなるまで進行するのは珍しいことと、馬尾神経は脊髄よりも強い回復力を持っているからです。 従って、手術を受けるかどうかは痛みがどれくらい強く、長く続いているかどうかによって決まります。 またご本人の生活スタイルにも大きく影響されます。

診断はレントゲン、MRIを中心に行います。治療としてはまず、内服薬や注射、湿布などで行い、 どうしても痛みが続く場合手術と言うことになります。手術は後方から狭い脊柱管を拡大するものですが、 頚椎の場合と異なり腰椎では椎弓を形成する必要はなく、圧迫している後方の椎弓を切除するだけです。 手術の2日後には歩いてもらうことが可能で、手術後2、3週間で退院出来ます。
手術の効果ですが、一般的に足の痛みがもっとも良く改善し、間歇性跛行もかなりの程度軽減します。 ただ、しびれは残存することが多く、注意が必要です。

左図,中図:手術前脊髄腔造影像 右図
白く造影されているところが脊髄を包む硬膜嚢で,造影剤の見えない部分(赤矢印)では,硬膜嚢の中の馬尾神経が圧迫されていることが分かる. MRIでも脊柱管内の脊髄液が白く見え,これが周囲から圧迫されている(赤矢印)

 

 

ページトップへ戻る

広島大学整形外科-ピックアップ-
診療予約のご案内 診察日のご案内 アクセスマップ スタッフ紹介 お問い合わせ