■第14回例会報告

●日時:2004年9月18日(土)午前10時〜午後5時30分

●場所:早稲田大学西早稲田キャンパス14号館7階会議室(716室)

(当日の連絡先:14号館防災センター03−5266−9297)

●文献
Handbook of Developmental Cognitive Neuroscience (Cognitive Neuroscience of Development)Charles A. Nelson (編), Monica Luciana (編)

●文献について

発達認知神経科学は急速に発展しています.心理学の従来の研究手法に加 えて脳画像等の新しい技術に基づく手法が,発達を研究する上で重要に なってきています.本書は,神経発達,感覚運動,言語,認知,感情等に 関する研究論文から構成されています.本例会では,言語に関する2論文と 認知に関する2論文を取り上げます.編者の一人のCharles A. Nelsonは,ミ ネソタ大学の心理学の教授です. なお、本書に関する出版社の内容紹介が, http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?tid=4222&ttype=2 にあります.

例会当日の時間割および報告者

司会:月本洋(担当幹事)
10:00−11:10 第19章 Speech and Language Processing in Infancy:A Neurocognitive Approach
報告者:布施光代(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
11:10−11:20 小休憩

11:20−12:30 第20章 Language Development in Children with Unilateral Brain Injury
報告者:阪脇孝子(早稲田大学大学院教育学研究科)
12:30−13:30 昼休み

13:30−14:40 第25章Neural Bases of Memory Development: Insights from Neuropsychological Studies in Primates
報告者:石橋健太郎(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)
14:40−14:50 小休憩

14:50−16:00 第27章 Spatial Cognitive Development
報告者:野田満(江戸川学園人間科学研究所)
16:00−16:10 小休憩

16:10−16:50 ショートレクチャー
16:50−17:30 全体討論
杉下守弘先生をコメンテイターにお迎えしてショートレクチャー をお願いし、その後、全体討論を行います。終了後、懇親会を予 定しています。自由参加ですが、ふるってご参加ください。

コメンテイター杉下守弘先生のプロフィール

【学歴および主な研究】1943年3月6日に東京に生まれる。1968年早稲田大 学・哲学科卒。1973年東京大学大学院医学系研究科を修了し、保健学博士 を取得。1974年10月よりケンブリッジ大学およびロンドン大学に留学し、 Zangwill O.L.教授指導のもとで神経心理学の臨床と研究に従事。1976年2 月より、ロンドン大学精神医学研究所にてEttlinger G.教授指導のもとで サルの神経心理学の研究に従事。同年4月、アメリカ合衆国カリフォルニア 工科大学にてSperry R.W.教授指導のもとで分離脳患者の研究に従事。1981 年9月、医学博士(東京大学医学部)取得。
 これまでに行った主な研究として、失語・失認・失行の研究(1968年−現 在)、部分的分離脳の研究(1970年−現在)、側頭葉切除後の高次脳機能の研 究(1983年−現在)、機能的MRIの研究(1994年−現在)などがある。

【職歴】1981年5月、東京大学医学部脳研究施設 助手。同年10月、(財) 東京都神経科学総合研究所リハビリテーション部門 副参事。1993年6月、 東京大学医学部音声言語医学研究施設 教授。1994年4月、音声言語医学研 究施設長併任(1997年3月迄)。1997年4月、大学院重点化により、東京大学 大学院医学系研究科 認知・言語神経科学分野 教授。2004年4月、脳血管 研究所 教授、(社)報徳会医科学研究所長 現在に至る。

杉下守弘先生ショートレクチャー要約
(以下、月本の記憶に基づいての要約なので、間違い等があるかと思いますが、 ご了承ください)

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杉下守弘先生のショートレクチャーは、「脳から心を見る」という題であり、3部から構成されていた。

1.脳の形から脳機能を調べる研究
 ・ガルは、脳の形から脳機能を調べることを主張したが、同時に、大脳機能局在も主張した。
 ・著名人(夏目漱石、アインシュタイン、新渡戸稲造等)の脳のMRI画像の紹介があった。
 ・最近、アインシュタインの脳に関する論文が出て、アインシュタインの脳が特殊な形であることがわかった。これがアインシュタインの才能と関係があるだろうと一般に思われている。音楽家の坂本龍一氏の脳も脳梁が非常に太い部分があり、これが坂本氏の音楽の才能と関係があるだろうと思って、他の脳梁の非常に太い人を(杉下先生が)探したが、その人は音楽の才能がないことがわかった。したがって、アインシュタインの場合も、その才能を脳の異常性から説明できないかもしれない。
 ・これらの著名人の脳はかなり昔の脳であり、ホルマリン漬けをしているが、水分がなくなっているので、MRIで測定するときには、かなり手間がかかった。
 ・脳の形から、脳機能を調べるときには、脳の大きさの個人差や性差があるので、或る特定の部位の大小の判断が難しい。

2.脳損傷から脳機能を調べる研究
  ・失語症や左右分断等の脳損傷の研究の紹介があった。
  ・20世紀のしばらくの間は、大脳局在説に対して否定的であった。
  ・脳損傷から脳を調べる研究は、脳損傷例があつまらないと研究ができないので、時間がかかる。最近は、研究者が、この分野にあまり来なくなっていて、非侵襲計測の方に行ってしまう。

3.非侵襲計測(fMRI)による脳機能研究
  ・fMRIによる数多くの研究がなされたが、新発見は少ない。
  ・fMRIの画像解析は難しい。
  ・fMRIによる研究は、複数の分野がからむので、異種格闘技のようである。
  ・ひらかなと漢字は別々の脳の部位で処理されているという知見に対する反論があった
  ・MRIデータを見るためのツール(MRICRO)の紹介があった。このMRICROで簡単に脳の断面が見れる。
  ・光トポグラフィーやMEG(脳磁図)に対しては否定的なご意見であった。
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■例会報告資料

必要に応じてダウンロードしてください。ダウンロードの方法

第19章 ワード

第20章 ワード

第25章 PDF

第27章 ワード

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