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『法然院に辿り着いた感謝念仏』
  二〇〇九年も引き際になって、ひとつの朗報が私の手に齎されることになりました。それは、京都の風の集いが、東山鹿ケ谷の法然院で開かれることになったことです。法然院は、法然その人が弟子の住蓮や安楽たちと、六時礼讃という音楽的な念仏を称えていた草庵跡に建てられた由緒ある寺院です。
 法然以前に、南都北嶺で実践されていた観相念仏は、観仏を主目的としていたので、誰でも称えられるものではありませんでした。また、そういう大寺院で念仏会に参加できるのも、僧侶や貴族に限られていたのです。
 法然は、従来の観相念仏を換骨奪胎し、乱世の苦しみに喘ぐ民衆の誰もが愚鈍に称えることができる、称名念仏を生み出したわけです。彼の称名念仏の本質を一言で言うなら、希望のない時代にあって、誰もが幸せに近づき得る確かな道筋だったのです。ですから、もし法然が現代に生きていたら、感謝念仏のような宗派色がないものを説くのではないかと、私は以前から想像していたのです。
 そういう事情もあって、感謝念仏を法然院でさせて頂けるということに深い感慨を覚えるのです。ある意味、ひとつの奇跡と言っていいぐらいです。そこで「アリガト」を高らかに朗々と称えれば、「思想の革命家」法然上人への報恩と、斬首された住蓮・安楽への慰霊となることは、まちがいありません。
 茅葺の山門が迎えてくれる法然院は、京都でも最も風情のある地域の一角にあり、銀閣寺と哲学の道が近くにあります。境内には、谷崎潤一郎や河上肇の墓地があることでも知られています。京都駅から少し時間がかかりますが、早い目のお越しになり、付近を散策されるとよいのではないでしょうか。
 ふだんは拝観ができない格調高いお寺の書院を使わせて頂くことになっていますが、とりあえず来年前半は、2月11日(祝)と5月1日(土)の開催を予定しています。トークは、多方面で活躍されているご住職の梶田真章師との対談形式でさせて頂こうと思っていますので、万障繰り合わせてご参加ください。
 それにしても、八年前に東京池上で始めた風の集いが、今日まで一度もキャンセルにならなかったことも、ひとつの奇跡と言っていいようにも思うのですが、それがようやく念仏の原点に辿り着いたという気がします。このように、またひとつ、私の夢が実現する運びになったのは、皆さまのご理解とご支援の賜物と深く感謝いたします。(2009・12・20)
 

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