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『裏方さんたちへの思い』
   10月23日、まさに私の誕生日に、故郷の京都で還暦・『法然の涙』出版祝賀会を開いて頂くことができました。こんな徳も才能もない人間には、勿体なく、ありがたいことです。
 参加者には貴重な時間とお金を使って、ご足労頂いたわけで、そのことを思うと、ほんとうに穴にも入りたい気持ちです。しかし、パーティーの中味は、文句なしに楽しいものでした。
 安田喜憲・日文研教授との対談は、のっけから私へのパーソナルな質問の連発で肝を冷やしましたが、結果として「日本は世界を救い得るか」という演題にふさわしい内容だったと思います。その後の歌やフラメンコも、ほんとうに心の籠ったもので、聴衆の魂を揺さぶるものでした。
 還暦は人生の再出発点と言われますが、私はご縁を結んで頂いた方々が、それぞれにあの日を境に、きっと新たな一歩を踏み出されるのではないかと想像しています。
 それにしても、このパーティーは佐伯宏美さんとそのご家族、そして何人かの友人の惜しみなき応援があって実現したものです。そもそも全国七か所の「風の集い」や「健康断食」も、すべて裏方さんとして、無償でご奉仕してくださる有志の支援があって成立しています。私一人では、何一つできないことです。今回の出来事を機会に、その「裏方さん」たちに改めて心からお礼を申したいと思います。
 私は子供のときから、表舞台の中央に立たされることが多い人間だったように思います。決して自分が「目立ちたがり」というわけではなく、むしろ陰にいるほうが好きなのです。その証拠に、私は裏通りの立ち飲み屋の隅っこで、ひっそりと酒を飲んでいる時が、いちばん幸せなのです。
 ところが皮肉にも、現実はその反対方向に動いてきました。小学校の学芸会で、中学校の生徒会で、お寺では数百人が集まる大法要で、今は講演会や国際会議で、つねに表舞台の目立つ位置に立たされて来たように思います。そのぶん私が「出来る人間」というわけではなく、そういう役回りをする星を生まれつき持ち合わせているのだと思います。
 もちろん、そんな私にも人知れず歯を食いしばって、下積み生活をした経験もたくさんあります。だからこそ私は目立つことなく舞台の裾で気配りをし、汗を掻いてくださる裏方さんたちに、申し訳なく思い、また感謝したいのです。
 実際には、表舞台に立つ人間よりも、舞台裏で奉仕をされる方のほうが、人間としての実力をもつ人が多いのです。舞台で踊らされているのは、単に人形にしか過ぎません。そのことを十分に理解しつつも、今日もまた、舞台の上に呼び出される私は、(赤い?)褌を締めなおして、みずからを戒めていきたいと思っています。(2010・11・1)
   

「アンタ、どうして14で家飛び出したんや」