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『帰国10周年』
  私が17年にわたるアメリカとシンガポールでの生活に終止符を打ち、日本に戻ったのは、今からちょうど十年前の2000年12月1日でした。
 子供たちが向こうのインターナショナルスクールに通っていたので、家族をシンガポールに置いたまま、東京外国語大学に逆単身赴任したのでした。それまで日本といえば、京都でしか暮らしたことがなかったので、東京の独り暮らしも、どこか海外生活を続けているような感じでした。
 帰国直後は友人もなく、寂しい生活でしたが、すぐにいろんな方たちとの出会いがあり、いっきに縁が広がりました。仕事上も、東大や医科歯科大など五つの大学で教え始めるなど、目の回る忙しさとなりました。
 一年ほど経ったとき、よく読者からの手紙が届くようになり、それでは読者と直接お会いできる場所を設けようと、風の集いを池上本門寺で始めました。
 記録を取っていないので、確かなことは分かりませんが、今まで300回前後の風の集いを開いたのではないでしょうか。これだけ頻繁に海外に出たりしているのに、そのうち一度もキャンセルがなかったのは、一つの奇跡と言えます。
 その風の集いも全国七か所に広がり、さらに健康断食も隔月に開くことになるなんて、十年前には想像もしなかったことです。参加者数は、そのつど異なりますが、毎回、その時のご縁が作る味わいがあります。
 主宰者である町田宗鳳という人間に、特別な能力や人徳があるわけでもないのに、ちゃんと人が集まって下さり、その時、その時の学びがあり、喜びがあります。とくに集いの最後に、参加者が語って下さる感想には、しばしば深い感銘を受けます。
 風の集いは、宗教活動ではありません。信じるべき教義もなければ、読むべき聖典もないからです。敢えて言うのなら、信じるべき教義は自分であり、読むべき聖典は自分の心です。風の集いで称える感謝念仏も、そういう気づきをもつためのものです。
 皆さまのおかげで、この十年間に数え切れないほど多くの方たちと、良いご縁を結ぶことができました。ありがとうございます。それは感謝の輪と言っていいものです。そして、これからもその輪がますます大きく広がっていくことを願っています。どうぞ、ご家族や友人を誘って、「風のように」お越しください。(2010・12・1)

   

「風の奇跡」