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『生卵と私』
 還暦を迎える今年、つらつら思うのは、よくもいろんな人に迷惑をかけて生きてきたもんだということです。10代、20代、30代、40代、50代、どこを切り取ってみても、人様に迷惑をかけっぱなし。そしてこれから本格的な老いを迎えるわけですから、以前にも増して迷惑をかけ続けるのは、眼に見えています。
 そういう大迷惑男の私が、厚かましくも還暦記念パーティーというものを開くことになったのですから、笑止なものです。「何がめでたいのか。お前なんか、人に迷惑ばかりかけて来たんだから、恥を知りなさい」という声が聞こえてきます。
 お説ごもっとも。反省しております。私の場合、その迷惑のかけ方もグローバル・スケールですから、お詫び行脚に出るとしても、大層なことになります。
 いろいろと人様に迷惑をかけながら生きてきた私ですが、『生きてるだけでいんだよ』(集英社)という本の著者としては、「やっぱり生きてるだけでいいんじゃない?」と、どこかで開き直っているのです。
 セレブじゃあるまいし、誕生日パーティーなんか開くのは、おこがましいのですが、60年も私という愚かな人間を支えてきてくれた宇宙のいのちに感謝する宴と思えば、これはとても楽しいプランに見えてくるのです。
 それで、はっと閃いたのです。パーティー会場では私のテーブルの上に、生卵をうず高く置いておき、「マチダの我がままには、憤懣やるかたなし」と感じておられる方に、ぜひそれを思い切りぶつけてもらおうと。そうすれば、この一大イベントが私にとって、またとない懺悔の場となります。
 「何言ってんだ。甘いぞ。生卵なんかで済むと思うのか。石を用意しておけ」というご意見もあるかと思いますが、それじゃ、あんまり痛いし、血も流れるので、今回ばかりは生卵でご勘弁ください。
 そもそも60歳なんて、まだまだ鼻垂れ小僧みたいなもので、仰々しく祝うほどのこともないのですが、私の還暦を口実に全国から有縁の方に集まって頂き、ご縁を広げて頂ければと考えております。それも、ハイヤット・リージェンシーという三十三間堂と国立博物館に挟まれた美しいホテルを会場とできるのも、京都生まれの私にとっては、ありがたいことだと思っています。
 特別ゲストに安田喜憲国際日本文化研究センター教授を迎えて、二人で「日本は世界を救い得るか」というテーマの対談をしようと計画しています。テレビにもよく出演されている安田先生のことは、すでにご存じだとは思いますが、日本古来の自然観を文明史的観点から高く評価し、アニミズム・ルネッサンスを訴えておられる環境考古学者です。
 理系の安田先生と文系の比較宗教学者である私の掛け合い漫才的な対談になるのではないかと想像しています。ほかにも歌や踊りで応援して下さる方もおられるので、きっと「嬉しく、楽しく、ありがたい」集いになるでしょう。
 翌日の24日(日)には、法然院で「風の集い」を開きますので、少し早い目にお越しくだされば、紅葉の「哲学の道」散策を楽しんで頂くことができるのではないでしょうか。
 というわけで、この旗本迷惑男の還暦祝いに万障繰り合わせて、ご参加くだされば、まことに光栄に存じます。ところで、改めてお伺いしたいのですが、生卵はいくつぐらい用意しておけば、よろしいでしょうか。
 日時: 平成22年10月23日(土)PM18:30〜20:30
 申し込み先ホームページ: 「町田宗鳳:還暦記念パーティーのページを開く」
(2010・5・30)