【更新は不定期。】

『祈り』
  大変なことが起きました。東日本大震災は、平成の国難です。これによって、日本は大きな試練を体験することになりますが、勤勉な日本国民は、必ずそれを克服できると思います。なぜなら、縄文時代以来、無数の天災を生き延びてきた精神の柔軟さが、日本民族のDNAに刷り込まれているからです。今まで原爆にも大空襲にも生き残り、見事に復活してきた国民ですから、大丈夫です。
  ですが、いちばん心配なのは、原子力発電所です。物理的な破壊は、何年かかろうと、人間の努力によって回復できますが、放射能汚染となれば、もはや人間の手を離れて、子々孫々に禍根を残すことになります。
 この文章を書いている時点では、福島原発の一号機と三号機をはじめ、いくつかの原子炉が危機的な状況にあります。ベントを開いたり、海水を注入するというのは、壊滅的なメルトダウンを回避するための、想定外の、いちかばちかの最後の手段だと思います。
 メディアには報道されなくても、現場では何十人かの技師と作業員が自らの被ばくを覚悟で、必死の取り組みをしているはずです。最悪のシナリオは、そのうちの一つが決定的なメルトダウンを起こし、その大爆発が他の原子炉の連鎖反応を招くことです。こうなれば、原爆が投下されたのと、同じ状況です。それは、技術立国・日本の終焉を意味します。
 私は、アメリカ留学中、日本代表団の通訳として全米各地の原発を視察した経験がありますが、きっと福島原発は爆発を回避すると思っています。その理由は、非科学的な発言ですが、日本という国には、「徳」があるからです。日ごろから神仏に手を合わせている国民の祈りがあります。そして、この国には新しい文明構築のために生き残る使命があるのです。
 国難は、大きなチャンスです。被災者にとっては、震災は大きな悲しみ以外の何物でもないと思いますが、平成の日本国民が正面から受け止めなくてはならない運命の出来事です。
 今や被災者を救うために、全国民が節電・節水・節食に努めるべきです。この「折々の言葉」を開いてくださった方は、日本のどこに暮らしておられても、ぜひそれぞれに節電・節水・節食に励んでください。一人一人が、身の回りの電化製品のスイッチをオフにするという、小さな行為から始めるべきです。
 菅総理も、13日夕の記者会見で「国民が心を一つにして、この国難を乗り越え、よりよい国をにしよう」と真剣な面持ちで訴えていました。その通りです。被災者の痛みを感じながら、国民の一人一人が助け合いの精神を発揮するのなら、それこそがこの国に再び「神風」を吹かせることになると思います。
 私は、地震発生当時、音羽の講談社で、次の本である『仏教はサイエンスだったのだ』の打ち合わせをしていました。最新の高層ビルが不気味な音を立てながら、大きく揺れました。その瞬間に、日本のどこかで大災害が起きたことを直観しました。その時、編集者に話していたのは、「これから、文明史的に日本の出番がやってくる」ということでした。(その後、ホテルまで5時間歩いて戻りました。)
 その日本が、この大震災を経験しているのです。これは、国民に与えられた「産みの苦しみ」です。今までの奢侈の生活習慣を改め、「小欲知足」の生活を実践しなくてはなりません。とくに日本中の若者には、ボランティアとして現地に向かってほしいです。それは、幸いなことに兵役もない平和な国の若者が果たすべき最小限の義務でもあります。(若くない私も時期を見て、参加する予定です。)  2011年中に開く「風の集い」の参加費は、必要経費を除いて、すべて震災地への義捐金とします。どうか、ふるってご参加ください。そして感謝念仏の中に、被災者への祈り、日本再生への祈りを込めてください。(2011・3・13)

「祈る土偶」