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「『ニッポンの底力』(講談社+α新書)」
  東日本大震災直後に急きょ、書き下ろした『ニッポンの底力』が7月20日から発売されます。比較宗教学や比較文明学の観点から、私が現代日本人に訴えたいメッセージをこの本の中に詰め込みましたが、以下のような全体構成になっています。
 第一章:復元力をもつ日本文化
 第二章:フクシマは文明の「折り返し点」
 第三章:日本の進化に不可欠な首都移転
 第四章:母系制社会と「女の力」
 第五章:アジア文明の夜明け
 おおよその内容は、以前から私が胸のうちに温めていた考えですが、大震災という歴史的試練を目の当たりにして、一気に吹き出してきました。ですから、執筆には一か月ぐらいしかかかっていません。
 日本は、すでに色んな意味で新しい時代に入りました。古い価値観にとらわれていれば、苦しくなる一方ですが、新しい価値観に切り替えれば、自由で楽しい時代が始まったことに気づきます。
 ところで、サッカー女子ワールドカップで「なでしこジャパン」が、見事に初優勝を遂げたことは、三つのことを象徴しています。一つ目は、「根拠のない楽観主義」の力強さです。常識的に考えれば、アメリカ人選手と比べれば、子供のように小柄な日本人選手が、それまで21敗もしていたアメリカチームに勝てるはずもなかったのです。案の定、つねに追い詰められるような試合運びでしたが、苦境に陥っても笑顔を絶やさなかった日本チームの楽観主義が、幸運の女神のほほ笑みを引き寄せることになりました。
 試合前にキャプテンの澤選手が、「いつも、みんなで仲良く、楽しくプレーしているので、負ける気がしない」と繰り返し言っていましたが、その通りの結果になりました。現代日本社会に求められているのも、そのような楽観主義を生み出す人と人との「絆」です。
 国民が「これから日本は、ますますダメになるんじゃないか」なんて思っていれば、その通りになります。反対に、「震災のおかげで日本は、もっといい国に生まれ変わるのだ」と思えば、そうなるのです。
 二つ目には、いよいよ女性の時代がやって来たことを象徴しています。本書でもわざわざ「母系制社会と女の力」という章を設けているのは、私にそういう予感があるからです。女性が元気で、賢く生きてくれればこそ、われわれ男性はいよいよ頑張れるのです。近代文明は男性原理で動いて来ましたが、次なる文明は、まず女性原理が台頭し、次第に両性具有原理に移行していくことになるでしょう。
 三つ目には、アメリカ文明からアジア文明へのパラダイム・シフトが始まったことを象徴しています。力とスピードを誇るアメリカチームよりも、チームメンバーの絆を大切にしながら、辛抱強くプレーした日本チームが勝ったのは、アジア文明の本質にも、そういうものが大切になることを意味しています。
 何もうぬぼれる必要はありませんが、日本人は過去から受け継いだ精神遺産を大切にし、それを世界に発信していく自信を持つべきです。「地震」が「自信」に結びつけば、この大惨事で犠牲になられた方々の霊も浮かばれるというものです。
 ところで、最近出た健康雑誌『ゆほびか』(9月号)でも、感謝念仏のことが特集されています。その冒頭に、エステシャンの今野華都子さんとの対談が掲載されていますが、私にとっても忘れがたい対談内容でした。健康断食に何度か参加された池永重彦さんと井上雅夕美さんにも、貴重な体験談を寄せて頂けたことも、嬉しく思いました。
 今年は、まだまだいろんな本を出す予定がありますが、『ニッポンの底力』は、その先駆けをなすものであり、これからの私の仕事を大きく方向づける重要な出版だと考えています。ニッポンが元気になるためにも、一人でも多くの方に読んで頂ければと念じています。
(2011・7・19)

「熊野川上空に漂う雲海」