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『神々が幸わう国』
  このお彼岸は、九州に来ています。まず福岡の寺院で、お彼岸の中日法要にお話をさせてもらいました。とてもお念仏熱心な浄土宗のお寺で、私が到着してみると、大勢の檀信徒が木魚を叩いて、お念仏をあげていました。やはり住職が真剣にお勤めをしているお寺は、自然と檀家さんも感化されていくものです。私も講演前に、こっそりと彼らに混ざってお念仏をさせてもらいましたが、ずいぶんと私の本を読んだり、テレビの全番組を見てくださっていた方たちが多く、とても熱心に話を聞いてもらいました。
 博多では久しぶりに、昔の教え子二人と会い、食事を共にしました。一人は名古屋大学で教えた女子学生ですが、今は九州大学の博士課程に進学しています。長年カンボジアでボランティア活動をしてきましたが、結婚しているにも関わらず、いつかカンボジアで尼さんになるのが夢だと言います。
 もう一人は、東京大学在学中から風俗関係のバイトばかりしていた不良男子学生ですが、最近、急に連絡があり、聞けばなんと司法試験に合格し、弁護士の卵になっていました。十年近く前に教えた学生と、こうして縁が続き、再会できることは、教師冥利に尽きます。
 それから、熊本の玉名市に移動し、私の本を愛読してくださっている、地元のお饅頭屋さんの素敵なご夫妻を訪れました。驚いたことに、足を運んでみると、朝から二十人ほどの方が集まっておられました。皆さんと、しばらく感謝念仏もしましたが、こういう形で全国各地で、「にわか風の集い」が開けたら、楽しいだろうなと思いました。(ごちそうになった出来立てアツアツの生成(いきなり)饅頭の味も最高でした。)
 それから宮崎に入りましたが、日向の国は美しい山並みの中に、大小さまざまな神社が林立していて、まさに神々が集う場所という印象を受けます。なかでも高千穂神社、幣立神社、青島神社は格別の神域であり、神々の荘厳な声が聞こえるような気がします。
 それにしても東国原氏が、せっかく宮崎県知事として選ばれたのに、東京都知事選なんかに心奪われ、一期で辞任したのは残念な話です。天孫降臨の地で国興しをすれば、将来、もっと大きな仕事が与えられただろうに、彼は俗界の権力欲に目がくらみ、判断間違いをしたと思います。
 これからさらに鹿児島の大隅半島に向かい、国立鹿屋体育大学で開かれる日本体育学会年次総会で講演します。宗教学者が、スポーツ専門家の学会に呼ばれるようになったのですから、確実に時代は変わってきたと思います。(2011・9・26)
     

「高千穂峡」