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『永照院の石仏たち』
   最近、永照院に五体の石仏をお迎えしました。いずれも愉快な表現をもつホトケさまたちです。まず参道の登り口では、にっこり笑っている石仏が手をあげて、「ようこそ、おいで下さいました」と迎えてくれます。ただし、帰り際に振り返れば、「さよなら、また来てね」という表情に変わっています。
 参道をゆっくり登っていくと平坦な場所に出ますが、そこでは法衣を着た小僧さんが昼寝をしている姿の石仏が待っています。坂道を登って来て、多少とも息が切れているでしょうから、「ここいらで、一休みしてください」と言っているのかもしれません。
 永照院の玄関にたどり着けば、お念珠を手にしたお坊さんが、「よく、ここまで登って来られた。ご苦労さん」と、満面の笑みで迎えてくれます。それが、三つ目の石仏です。
 では、あと二つの石仏は、どこにおられるのでしょうか。それは、お寺の裏にある階段を登って行かないと見ることができません。そこは、永照院の聖なる護摩壇です。とは言っても、そこで護摩を焚くのではなく、時々、焚き火をして焼き芋を焼いているだけです。
 そこにレトロ風のピクニック・テーブルも設置してあります。そこに腰かけてみると、あと二体の石仏が見えます。一つは、男女二体の仏さまが、仲良く寄り添っている石仏です。人間は互いに支え合ってこそ、強く生きることができることを表しています。
 もう一体には、「見ざる、聞かざる、言わざる」の三匹の猿たちが刻まれています。まあ、世間の事には、ああのこうのと、いちいち口出しせずに、ここでゆっくりして、英気を養いなさいというわけです。
 よくもこれだけの石仏が集まって下さったものです。永照院は、まわりに民家も何もない寂しい場所にありますが、私は執筆のために、そこに籠っている時も少しも寂しくなくなりました。いつか永照院・風の集いにご参加くださった折には、ぜひ石仏参りもしてみてください。(2012・4・19)



「永照院の石仏」


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