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『脂肪を希望に変える』
   先日、三十回目の「ありがとう断食セミナー」を盛況のうちに終えることが出来ました。第二十九回断食は、天候に恵まれ、珍しく富士山が三日間ずっと雄姿を見せていましたが、今回はあいにく曇天が続きました。それでも三日目の朝、雲の中から全容を現してくれた時は、じつに感動的でした。
 私は、今も臨済宗に僧籍のある身ですが、じつは日本の神々が大好きです。そのせいか、この断食も富士山のコノハナサクヤ姫の守護のもとに開かれていると感じています。美しい神さまです。断食中は、近くにある浅間神社の境内に湧き出る名水「木花咲水」を汲んで来て、参加者に飲んで頂いています。
 断食を周期的に実践すれば、長寿につながることは、生物学の臨床実験でも証明済みですが、困窮の時代に生きた法然上人や親鸞聖人などが長生きされたのも、きっと時々、断食しておられたに違いないと想像しています。
 前回の断食で、やや肥満気味の、福島から来られた男性が、「脂肪を希望に変えるために、やって来ました」と自己紹介のおりにおっしゃって、参加者全員を笑わせて下さいました。皮下脂肪や内臓脂肪が燃焼して、希望に変わってくれるのなら、飽食の時代に生きる我々にとって、こんなありがたいことはありません。
 仏教には「煩悩即菩提」という言葉があるように、迷いが深いほど、悟りも大きいのです。とすれば、「脂肪即希望」という考え方も成立するはずであり、少しばかり太っちょのほうが、人生に抱くべき希望も大きいことになります。
 私はこのごろ一日一食主義を実践していて、お金が貯まって困っています。(冗談!)別に長生きしたいわけではありませんが、南雲吉則さんの本の表紙に書いてあった「二十歳若返る!」というフレーズに乗せられただけです。
 何しろ呆れるほど大器晩成型の人間なので、八十歳ぐらいでも現役でいないと、人並の仕事ができないと考えているからです。おかげで、とても体が軽くなってきました。昼食に何を食べようかと考えなくてもいいし、夕食がとても楽しみになりました。
 私は、菜食主義ではありません。雑食人間です。昔は揚げ物が大の苦手だったのですが、今は串揚げが好物の一つになっています。最近は草食系の若者が増えているようですが、寅年生まれの私は、還暦を過ぎても、立派な肉食系です。誤解のないように言っておけば、群れるのが嫌いで、興味のあるものだけを追いかけるという意味です。
 はからずも、自然食主義者にはガンにかかる人が結構おられます。正食といって、体に安全なものばかり口にしておられるはずなのに、不思議なことです。恐らく、ナニナニは絶対に食べてはいけない、という原理主義的な拘りが健康を損ねているのだと思います。
 何でも感謝して美味しく頂くという「食に向かう姿勢」が、大事なのです。そして、「食べる道楽」を知るためには、絶食という「食べない道楽」も欠かせません。惰性で何でもモグモグ食べておれば、お腹が醜く出てくるだけではなく、成人病にまっしぐらです。
 ごく最近、アメリカで巨大ハンバーガーを食べていた女性が失神し、救急車で運ばれたというニュースが流れましたが、テレビで見てみたら、とても太った女性でした。地球上では、毎日四万人の人々が餓死しているというのに、悲しい話です。できれば、その女性にはハンバーガーをかじったまま、即身成仏してほしかったです。
 ほんとうに食べたいものを少し頂く。そして満足できるような体質になっていけば、生き方そのものから、卑しさが消えていくはずです。それこそが、脂肪が希望に変わった瞬間です。(2012・4・27)



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