【更新は不定期。】

『野遊び』
   フランス仕込みの時差ボケを抱えたまま、先週は金沢と秋田で講義の後、日本海沿いを走る奥羽本線で函館に向かいました。あまりに強行軍なので、青森で途中下車して一泊したのですが、幸か不幸か、駅前に「ホタテ刺身」と大書した赤提灯が目に留まり、気づいた時には、私の足が勝手に飲み屋の敷居をまたいでいました。
 ところが暖簾をくぐってみると、まったく客気がなく、古ぼけた店のカウンターの向こうにいたのは、二人の婆さんたちでした。一瞬「しまった」と思ったのですが、「よーぐ、ぎたべえ」という婆さんたちの津軽弁にほだされて、ともかく腰を下ろすことにしたのです。
 しかし結果は、正解でした。元津軽美人だったはずの婆さんたちが、次々と差し出してくれるホタテの刺身、ニシンのヘシコ、生姜味噌おでん、漬物などの郷土料理の旨いこと。ブルゴーニュ・ワインの酔いが抜けるまもなく、またもや地酒「じょっぱり」で深酒をしてしまいました。
 おかげで翌朝、やや千鳥足で北海道の原野に立つ羽目になったのですが、実は今回、「ありがとう断食セミナー」で使う酵素作りという大事な使命をおびていました。イタドリ、オオバコ、フキ、トクサ、ハコベ、カタクリ、カンゾウ、山ニンジンなど、まさに春の生命力を謳歌する20種類以上の野草を30キロも摘み、澄み切った渓流の水で洗ってから、細かに刻んで砂糖と混ぜ合わせ、樽に漬けました。毎日混ぜて十日間ほど発酵させ、さらしで濾し、海の精を加えると、命の源ともいえる酵素の出来上がりです。
 生命が生きていく上で必要不可欠とされる酵素には、消化酵素と代謝酵素の二種類があります。前者は食べ物を分解し、後者は生命を維持します。それらは潜在酵素と呼ばれるもので、人間の体内には三千種類以上もあるそうですが、残念ながら一生のうち作られる量が決まっているのです。「金の切れ目は縁の切れ目」といいますが、もっと恐ろしいことに、「酵素の切れ目は命の切れ目」というわけです。
 大切な潜在酵素を食べ過ぎなどで消化のためだけに使い過ぎると、病気になったり、老化を早めたりしてしまいます。そういう意味でも、やっぱり少食がいいのです。断食セミナー中には、口から食物が入ってこないので、消化酵素を節約できるだけでなく、外部からも熱処理していない植物酵素を繰り返し摂取してもらうので、免疫力を高め、老化を防止することになります。どうりで参加者の顔が、目に見えて若返るはずです。
「ありがとう断食セミナー」で年間使用する酵素は、函館日赤病院の看護師だった永田慶子さんに一任しています。永田さんご自身も重篤な病いから酵素療法で見事に健康回復された方ですが、私も年に一度、「野遊び」をかねて北海道まで出かけ、少しでも純度が高く、パワフルな酵素作りをお手伝いすることにしているのです。
 断食中には、参加者に少しばかり空腹を耐えてもらうことになりますが、お腹が減ったぶんだけ、若返ると思えば、これもまた楽しからざるやです。お腹が空いても、せめて心だけは「ありがとう」の声に満たされて、満腹状態でいてほしいと願っています。
 富士の霊峰のご加護があるのか、とても和やかな雰囲気のうちに、二泊三日があっという間に過ぎてしまうのが、わが「ありがとう断食セミナー」の特徴ですが、おかげさまで、このところ満員御礼が続いています。せっかく申し込んで頂いても、キャンセル待ちをお願いすることが多く、申し訳なく思っています。一人でも多くの方に参加して頂くために、目下、西日本での開催も検討中ですが、正式に決定した時には、ホームページで広報させて頂きます。(2012・5・16)



「カタクリの花」




「カンゾウ採り」




「酸素で甦った永田さん」




「川辺の仕事」




「茂辺地の清流」


「折々の言葉」バックナンバー