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『ついにアプリに登場した町田宗鳳』
  時代も変われば、変わるものです。「異端力」(祥伝社新書)という本を出したばかりですが、私が般若心経を上げる声が、今週から全世界にアプリで流れるようになりました。日英二か国語で要点を解釈しているため、販売開始と同時にアメリカとオーストラリアで、ダウンロードした人たちが数人いたようです。
 思えば、今からちょうど四十年前、私が二十一歳の時、フィリップという大手レコード会社が、私の読経の声を『禅』というタイトルのLPレコードに録音しようとしたことがありました。私には何の知らせもないまま、大徳寺がレコード会社と契約したようですが、こともあろうに私は録音当日、なんと寺から「家出」をしたのでした。大きな仏殿に複雑な録音装置が設置されているのを確かめてから、朝も明けぬうちに大徳寺を出ました。
 そういう世俗的なことを忌み嫌っての逃避行でしたから、当時は何の悔いもなかったのですが、年を取ってからつらつら思うに、「二十代前半の若いハリのある声で録音しておけば、一生の思い出になったかな」と、今さらながら少々後悔しています。
 それが巡り巡って、今回のアプリによるリリースとなったわけですから、つくづく不思議な巡り合わせだと思います。よく、「町田さんは、いい声していますね。さぞかしカラオケが上手でしょうね」と言われますが、そんなことはありません。私は高校時代、合唱部に入っていたのですが、お寺でお経ばかり上げるうちに、だんだんと歌が歌えなくなり、ついに音痴になってしまったのです。
 先日も、講演会後の懇親会で、そういうノリから、「歌を一曲」と言われたのですが、まったく歌えないので、代わりに細いテーブルの上で、逆立ちをやってのけました。しかも、大酒を飲んでからのことですから、我ながら大したものだと思ったのですが、それを見た人はあっ気にとられただけでした。二年前に開いて頂いた京都ハイアットホテルでの還暦パーティーでは、閉会式での謝辞の代わりに、壇上にあがり、赤フンドシで逆立ちをしましたが、あの写真を撮った人は、私の没後100年祭では、きっと100万円で売れると思います。(残念なことに、参加者は誰も生きていません!)
 アプリには、そういうイカガワシイ逆立ち映像は流れてきませんが、一回250円のダウンロードで、iPhone やiPadで何度でも聞けるそうなので、どうぞお試しください。「町田宗鳳の般若心経」と打てば、サイトが出て来ます。(2012・7・17)



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