二十一世紀の展望―広島の人間と自然との共生の道は?

              

                                三浦和歌子

全体像

@     共生とはどういう状態か?

A     広島県の特徴と役割

B     広島県の二十一世紀の展望

C     私が考える二十一世紀の広島

D     まとめ

 

@     共生とは?

共生(symbiosis)とは、生物学的には異種の生物が互いに利益を分け合って共同生活をすることである。しかし最近使われる意味での共生の意味は、「生態学的な(系の)健康状態が良好である状態」という意味であろう。つまり、その自然が持つ本質を回復可能な範囲で利用しつつ、持続させていくことである。広島県の世論調査の結果、環境のことも考えつつ、開発は進めるべきだと答えた人が最も多かった。

以上から自然と人間が共生するということは、人間が暮らしやすくなる開発をしつつ、その時に失われる自然を少なくし、逆に自然を取りこんでいったり、他の方法で自然を守るということのようだ。(=効率化)

 

A     広島の特徴と役割

     広島市という都市の役割

広島という都市は港町として栄え,広島上の城下町として、ある時期は日本の首都になったこともあるらしい。しかし近年、広島の人口の伸びは落ちている。札仙広福

ということばは、地方の大都市,札幌,仙台,広島,福岡,の頭の一字をつなげてできた言葉らしいが、広島はその中でもおくれをとっているかもしれない。札仙広福という都市は大都市に比べるとあまり交通渋滞もおこってないし、ビルの林立もそんなに起きてないというところから、新しい都市づくりのモデルになって欲しいと考えられている。新しい都市とは、緑を多く残し、都市機能をあるところに集中させ、使用者の便利を図るというような都市らしい。

     路面電車

     林野が多い

広島の74パーセントは林野である。広島には照葉樹林帯が広がるが、この地域は古くから人間の生活地域であったため、植生の破壊が激しく神社や仏閣の一部として残るのみである。そのため中国山地は他の地方に比べて二次林(一度伐採した後、放置されたままの林)が多い。それを有効活用する。

     瀬戸内海

広島の漁業といったら牡蠣の養殖だが、海水の汚染などで広島の牡蠣ブランドの評判が下がっている。海の水といえども無限大でないことを知った今、汚水を海に垂れ流すことはやめなければならないだろう。

 

B     広島県の二十一世紀の展望(広島県のホームページwww.pref.hiroshima.jp)

★広島県環境基本計画の基本目標

     循環−環境への負担が少ない循環型社会広島

     共生−自然と人がふれあう潤いのある広島

     参加−みんなの参加により環境をはぐくむ広島

     交流−交流と連携により環境を守り育てる広島

     地球−地球環境の保存に貢献する広島

 この五つは国の環境基本計画の基本目標に交流を加えただけのものであり、広島県の独自性はあまり感じられない。

★広島県新農林水産業・農産漁村活性化行動計画の重点プロジェクト

     土地利用型農業の再構築−集落農場型農業生産法人の育成

     採算の合う林業の再構築−経済林の明確化、コスト削減

     広島牡蠣ブランドの再構築−生産体制および漁業環境の改善

     総合的・計画的土地利用の促進−農産漁村における居住空間作り

     中山間地域等の農地保全−中山間地域等の農業生産条件の不利性を補償

★エコネット21ひろしま

     県民行動・事業者行動−すべて「〜しましょう」という口調で書いてある。

     行政行動−「〜をすすめます・努めます・検討します」というのが多く使われている。

 ある意味当たり前のことがかかれている。広島県が具体的に何をしているのかはこのページからはわからない。岡山県のホームページと比べたところ、広島県のホームページははわかりにくく一般の人向けではない。いろいろなところにページが分かれており、迷路のようだ。

 

C     私が考える二十一世紀の広島

1,県内での自給自足

   ・エネルギー面

    現在中国電力の発電は(図1)のようになっており、石炭・石油のCO2を大量に排出する発電になっている。原子力発電は個人的に反対なので減少させていく方向で考え(実際は島根と山口に新たに建設中であるが)、これを太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電などクリーンな発電とする。しかし、風力発電、地熱発電などは広島の地理的条件から考えると不可能そうなので、主に太陽光発電を家庭、会社などに奨励する何らかのバックアップを国、県にしてもらわなければならない。水力発電を増やすにはダムを造らなくては無理なので環境に影響を与える。他にも河川水・海水、下水処理水、清掃工場・発電所からの排熱の冷暖房利用なども考えられる。ただ省エネといっても生活水準を大きく変えることは無理なので省エネ型住宅の推奨を県がする。

   ・食料面

    出来る限り県内で出来たものを県内で消費する。県内であまり作られない作物への補助金制度などで農業の活性化を図る。今まで作りつづけていたのをあまり作られない作物に転換するのを強要するのではなく、新たに農業をはじめる人を増やし、食料の自給率を増加させる。外国から輸入するのは安く済むが将来的に少し不安であるからである。

   ・木材面

    平成十一年度の統計で広島県の製材用素材入荷量は223万㎥で,外国からの輸入はその約95%で全国一位を占めている。それを製材して出荷するわけだが,外国から輸入するのではなく、広島県内で木材資源を生み出す努力をすれば、今使われていない林野ももっと活用できるであろう。それはたとえば学校などの公共的な場所での木材建築物の建築や木材、木材製品の利用、また紙の原材料への使用などである。また、きのこ類や山菜類も林野を活用できる手のひとつである。

・水資源面

    広島の公共下水道普及率は41%(平成六年度調査)にとどまっている。河川、海洋の汚染を防ぐためにも早急に下水道を普及させ、水をきれいにしてから川に戻すようにしなければならない。現在いくつかのダムを建設中であるが、これ以上のダム建設の必要性は本当にあるのだろうか。

   ・ごみ資源面

    循環型経済を目指して、ごみ資源を有効利用できる社会を作っていかなくてはならない。そのためにはやはりごみの収集の有料化をして、ごみを減らすのが第一歩であろう。有料化が実施されれば人もお金がかかる過剰包装を拒否するようになるだろうし、そうすれば企業側の態度も違ってくるだろう。生ごみは肥料に、紙ごみは再生紙に、缶や壜は再生されるようになるだろう。燃えないごみとしてのペットボトルやビニール類を減らしていかないと、埋め立てるのも限界であろう。

 

 2.都市のエコシティ化

   ・車の排除

    排気ガスを押さえるためにも市内のある一部分から車を締め出してはどうか。ドイツには実際そういう街があるらしい。その代わりに市電を網羅させることによって車の代用をはかる。そうすると、車道だったところを緑地にしたりすることができる。市民は買い物に来ながらピクニック気分を味わえる。広島は平地で市電も有り、大きくも小さくもない都市だからほかの都市に比べて車を排除しやすいだろう。 

   ・屋上緑化

    今ある都市をエコシティにする第一歩として建築物の屋上に芝生を植えたり、畑にしたり、花壇にしたりする。そのことで空気は少しなり浄化されるし、都市の体温も低くなるだろう。

・コンパクト・シティ

エコシティの最終目標はコンパクト・シティである。都市機能をコンパクトに集めたり立体化して半分の街区にしそれによって余った土地を農業や自然の地形として残すことによってできる複合型都市である。これによって活気あるコミュニティと完全リサイクル型が可能になると考えられている。

 

 3.現在残る自然を守る

   ・貴重な自然を残す

    広島には貴重な自然がいっぱいある。たとえば八幡湿原や三段峡などである。県も国も自然を壊す開発にはお金を出しやすいが、自然を守るほうにはお金が出にくい。また、近隣の住民としては環境資源として見えてしまう。守るべきところは守っていかないと県は資料として大切な財産を失ってしまうだろう。

・現在普通と思われている自然も残す

特別なところばかり守り、普通の生活に根付いた自然がなくなるのはもっとおそろしいことである。たとえば賀茂台地に広がる田んぼの風景などの普通に目にする昔からの風景。これらも高齢化の波に押されて次々に減少しつつある。千年以上かけられてやっとここまで改良してきた田んぼがたった何年かでだめになってしまう。

 

 4.自然復元

    現在残る自然を守るだけでなく、今まで壊してきた自然をできるところから復元するという考えが必要になってくるであろう。特に海岸周辺部は開発しきってしまい、広島の海岸線の九割は人口海岸である(瀬戸内海を参考に)。人口干潟などを作ってこの埋め合わせをして成功をおさめているがまだまだ課題は多い。しかもいまだにマリンポート開発などで海を埋め立てている。このつけはどういう風にして返していくつもりなのだろうか。

 

D     まとめ

広島県は自然環境を守ることを考えていますという顔を一方でしておいて、他方で巧みにそれ以上に開発を進めている。これでは本当にちゃんと将来を考えているのかと不安に思ったし、現在のニーズに合ったものなのかが疑問だ。今県民が必要としているのは年間に多大なお金が費やされる便利な道路や、埋め立てて造られる人口の海岸やレジャースポットなのだろうか。「遊んで便利な生活をしてお金を落としていってください。」というのが広島県の意志なのか。平和都市、文化都市広島は何処に行ったのか。広島県がこれから生き残っていくには他と同じではなく、広島県独自の環境論が必要になってくるであろう。「ここが広島」と広島県人が他県に誇れるような政策をとって欲しいと思う。

 

参考図書

『地球環境と自然保護』東京農工大学農学部生物圏環境科学専修編集委員会編

『海岸の環境創造』磯部雅彦編著

『環境学がわかる。』朝日新聞社

『川と湖の博物館 8共生の自然学』森下郁子、依理子著

『地球化時代の環境戦略 自治体・地域の環境戦略3

 

戻る