広島の自然環境に対する人々の意識

吉田 操 

 

     全体像

1.はじめに

@     目的

A     アンケートについて

  2.分析

@       広島と聞いて思い浮かべるもの

A       広島の自然に対する認知度・関心度

B       知られている広島の自然

C       21世紀に残したい広島の自然環境

D       人々の意見

  3.まとめ

 

1.はじめに

 @目的

    広島の自然環境について一般の人々はどのように、またどれくらい意識しているのか。21世紀を担う若い人たちはどう考えているのか。また、その意識は地元の人とそうでない人とでどのように違っているのか。これらのことをアンケートで得られた結果から比較・分析し、自然と人との関係を考察する。

 Aアンケートについて

    一般の人々の意見を聞くために、広島駅と宮島で口頭、または記述のアンケート

   を行った。地元の人と観光などで来ていた他県(他国)の人からあわせて235(広島駅118、宮島117)のアンケート結果を得た。次に、若い人たちの意見として、広島大学の学生にアンケートをした。対象としたのは自然環境に多少の興味や知識を持っている人たちで、合計289のアンケート結果を得た。

    全体の集計結果の他に、一般の人々と広大生、地元広島の人とそうでない人(その中でも中国地方の人、九州・四国・近畿地方の人、その他の日本の人、外国の人で区別する)で比較して分析する。人数に差があるので各グループ内でのパーセンテージによって比較する。 

全体

一般

広大

地元

524

235

289

166

中国

,,

国内他

外国

43

238

61

16

 

 

2.分析

@広島と聞いて思い浮かべるもの 

   広島と聞いてまず思い浮かべるものを複数可で自由に挙げてもらった。やはり広島といえば原爆らしい。一般の人も広大生も、地域の差なく原爆に関するもの(原爆ドーム、平和公園など)を挙げる人が最も多かった。外国の人の中でもだんとつだったことから、広島の原爆は国内だけでなく世界的にも有名なようである。次に宮島(厳島神社、鳥居、紅葉など)と答えた人が多かった。宮島でアンケートをとったという理由もあるだろうが、ここは日本三景の一つであり世界遺産にもなっているので、知名度は高いようである。続いて広島東洋カープ、もみじまんじゅう、広島風お好み焼、カキの順に多く挙げられた。これらは一般の人より広大生、地元の人より他県から来た人の方が高い割合で挙げている。若い人や県外の人は広島のスポーツや食べ物などに関心がいくようである。

   上位六つは上のとおりで、広島と聞いて自然に関するもの(山、川など)を挙げる人は、地元の人からは他と比べると多いにしても、非常に少なかった。宮島が挙がってはいるが、これは文化的・観光的要素が強いようである。広島の自然は印象がうすいらしい。県外の人ほどではなくとも、地元の人の中でもその傾向は強いようである。

 

A広島の自然に対する認知度・関心度 

   広島の自然に関して、「全く知らない」「あまり知らない」「まあまあ知っている」「よく知っている」の中から一つ選んでもらった。地元の人の中で「まあまあ知っている」が一番だった以外は、全体的に「あまり知らない」と答えた人が最も多かった。一般の人より広大生の方がより「知らない」と感じているようである。

   同様に広島の自然に対する関心度を四段階に分けて答えてもらった。全体としては「まあまあ関心がある」が一番多かった。外国の人は遠くからはるばる来ただけあって「とても関心がある」人が一番多かった。反対に地元広島の人の中で、身近であるにも関わらず「全く関心がない」と答えた人の比率がかなり高かった。身近でありすぎると当たり前すぎて逆に関心を持つことがなくなるのかもしれない。

B知られている広島の自然

   広島の特徴ある自然(宮島、太田川、溜め池、瀬戸内海、中国山地の5つ)の中から、具体的なイメージの浮かぶものを答えてもらった。宮島を挙げる人は約八割、瀬戸内海は約六割と、非常に高い割合であった。全体的に一般の人より広大生の方が多く答えていて、それは溜め池、中国山地でとくに顕著だった。太田川は地元の人にはイメージが浮かびやすいようだが、それ以外では答える人の割合は低かった。宮島に関して地元の人の挙げる割合が比較的低いのは、『イメージ』の基準の違いだと思われる。

 

C21世紀に残したい広島の自然環境

   21世紀に残したい自然は何(どこ)かを答えてもらった。ここでも宮島を挙げる人が最も多かった。次いで瀬戸内海、太田川などが挙がった。平和公園と答えた人も多かった。「全て」「山」「川」 「緑」などおおまかな答えや、地元の人からは「三段峡」「帝釈峡」「もみのき森林公園」などのローカルな意見もあった。しかし無回答や「よく知らない」「わからない」という意見もかなりあり、広島の自然に対する認知度の低さがあらわれている。

D人々の意見

   広島の自然について思っていることを自由に答えてもらった。答えてもらった中から、多かった意見を四つのタイプに分けて挙げてみた。

<自然破壊がすすんでいる>

     海、川が汚れている。

     開発のし過ぎ。山が削られている。

     松枯れがはげしい。

     土砂崩れ・がけ崩れが多い。

<自然は多く残っている>

     緑が多い。

     川が多く、水はきれいでおいしい。

     野鳥が多数生息している。

     海も山地もある。

     都市と自然のバランスがとれている。

     宮島がきれい。

<知らない>

     知る機会がない。

     都会のイメージの方が強く、自然といわれても思い浮かばない。

<自然保護すべき>

     自然をこのまま残していく。

     自然と共生できる街づくりをしていく。

     レギュレーションを増やす。

海が汚いという意見は普段見ることの多い地元の人だけでなく観光に来ていた人からも出ていたので、広島の海の汚いところはかなり目に付くようである。松枯れの意見は広大生からしか出てこなかったが、多かった。実際に見て感じるというより、知識として知っている感じである。また、広大生は西条で暮らしている人が多いためか、西条の自然に対する思い(緑が多い、寒いなど)を挙げる人が多かった。

広島を都会と思う人もいるが、田舎と言う人もいたりして、見る場所や捉え方によってかなり意見は違っている。一概に自然破壊がすすんでいるともいえないし、自然は残っているともいえないようである。現状は良い悪いどちらであっても、「海が汚いからきれいにしたい」「水がきれいなままにしておきたい」というように、自然を大切に守っていくべきだという思いは一致している。知らないという意見はここでもかなりみられたが、その分知りたいと思っている人もいた。

 

3.まとめ

   これまで見てきた中でいえることは、広島の自然は宮島や瀬戸内海など有名なものを除いてはとにかく知られていないし、そのことを考える人も少ないということである。これは他県の人であれば仕方のないことかもしれないが、地元の人でさえ似たような状態なのである。しかし「知らない」「知っている」の判断の基準は人によって違っている。つまりは「知らない」と感じている人が多いということなのである。関心度に比べて認知度が低いのは、自然に触れたくてもそのような機会や場所が日常生活の中にはないということをあらわしている。もっと自然と関わることのできるような暮らしにしていく必要があるだろう。

自然を大切にしたい、すべきだという思いは程度の差こそあれみな同じだと思う。21世紀を迎えるにあたって、私達はもっと自然と自然環境について知らなくてはならないし、考える機会を持つべきである。

 

 

戻る