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判別分析を用いた顔認識

主成分分析は、上記のように情報の圧縮という観点では有効な手法であるが、各 データがどのクラスに属しているかの情報は利用しておらず、識別のための固有 空間を構成する手法としては必ずしもよい手法ではない。一方、判別分析は、同 一クラス内のデータはなるべく近くなり、逆にクラス間のデータはなるべく離れ るような線形写像を構成する手法であり、固有顔を構成する場合にも有効である [101]。

今、画像の集合 $X = [\mbox{\boldmath$x$}_1,\cdots,\mbox{\boldmath$x$}_N]$ には、 $K$ 個のクラス $C_k = \{\mbox{\boldmath$x$}\} \ (k=1,\ldots,K)$ のどのクラスに属しているかの情報が与 えられているとする。

判別分析では、画像 $\mbox{\boldmath$x$}$ に対するスコア(固有空間での表現)を、

\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$y$} = A^T \tilde{\mbox{\boldmath$x$}}
\end{displaymath} (11)

により構成する。この時、係数行列 $A = [\mbox{\boldmath$a$}_1,\cdots,\mbox{\boldmath$a$}_L]$ は、判 別基準
\begin{displaymath}
J = \mbox{tr}(\hat{\Sigma}_W^{-1} \hat{\Sigma}_B)
\end{displaymath} (12)

が最大となるように決定する。ここで、 $\hat{\Sigma}_W$ および $\hat{\Sigma}_B$ は、それぞれ、スコアの空間での平均グループ内共分散行列 と平均グループ間共分散行列である。この判別基準を最大とする係数行列 $A$ は、固有値問題
\begin{displaymath}
\Sigma_B A = \Sigma_W A \Lambda , \ \ \ A^T \Sigma_W A = I_L
\end{displaymath} (13)

の解として求まる。ここで、$L$ は判別空間の次元で、 $L \le min(K-1,M)$ で ある。また、$\Sigma_B$ および $\Sigma_W$ は、それぞれ、クラス間共分散行 列およびクラス内共分散行列である。係数行列の各列 $\mbox{\boldmath$a$}_l$ は、主成分分 析の場合と同様に、固有顔として解釈できる[101]。

判別分析の場合には、2枚の画像 $\mbox{\boldmath$x$}_1$ $\mbox{\boldmath$x$}_2$ に対する主成分ス コア間の距離 $\vert\mbox{\boldmath$y$}_1 - \mbox{\boldmath$y$}_2\vert^2$ は、多クラスの分布間の平均マハラ ノビス汎距離 $(\tilde{\mbox{\boldmath$x$}}_1 - \tilde{\mbox{\boldmath$x$}}_2)^T \Sigma_W^{-1}
(\tilde{\mbox{\boldmath$x$}}_1 - \tilde{\mbox{\boldmath$x$}}_2)$ と密接に関係していることが知られ ている[78]。つまり、判別分析の場合には、平均クラス内分散の逆 $\Sigma_W^{-1}$ で重み付けた画像間の距離を近似的に計算していることに対応 する。

判別分析を用いた固有顔に関しては、Swets等[101]が主成分分析を用 いた場合との比較実験を行ない、判別分析を用いた方法の優位性を示している。



平成14年11月18日