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重回帰分析による画像修復

画像の鮮鋭化・平滑化、エッジ検出、画像の修復などの画像処理の多くの問題 は、もとの画像から望みの結果を出力する写像を推定する問題として定式化す ることができる。もし部分的にでも望みの結果があらかじめ得られるなら、平 均2乗誤差最小の意味で最適な写像を重回帰分析を用いて構成することができ る。これは、最も簡単で直接的なアプローチであり、適応的な画像処理システ ムを設計するための有望な方法であると考えられる。 大津等[52]は、画像の修復に重回帰分析を利用する方法を提案して いる。

画像修復では、一般には、劣化過程が完全にわかっていることは稀であるが、 重回帰分析を適用して画像を復元するためには、教師信号として元の画像の一 部分がわかるあるいは推測できる必要があるが、劣化画像には鋭いエッジなど の明瞭な形を推測できる部分が含まれていることが多く、そのような部分から 元の画像の一部を推定することはそれほど難しくない。そのような利用可能な (部分)画像を理想画像と呼ぶ。

多くの場合、劣化過程は局所的かつ位置不変であると見なせるので、画像修復 は劣化画像の近傍での局所的な演算(逆フィルタリング)で実現できると考えら れる。したがって、画像修復の問題は、劣化画像の局所近傍特徴ベクトル $\mbox{\boldmath$x$}$ から修復画像の画素の値 $z$ への写像を推定する問題として定式化 できる。この写像を線形モデル

\begin{displaymath}
z = \mbox{\boldmath$w$}^T \mbox{\boldmath$x$} + w_0
\end{displaymath} (15)

で近似する場合には、理想画像を目的変数としてパラメータ $\mbox{\boldmath$w$}$ および $w_0$ を重回帰分析により推定すればよい。

図 2: 画像の修復の例. (a)劣化画像 [左上].(b)学習領域 [右上].(c)理想画像(学習領域の2値化) [右2番目]. (d)学習重み(エッジ強度) [右3番目].(e)修復された学習領域 [右下].(f) 修復画像 [左下].
\begin{figure}\begin{center}
\epsfile{file=imres-car.eps,width=7cm}
\end{center}\end{figure}

2 に、重回帰分析を用いた逆フィルタの学習による画像修復 の例を示す。劣化画像は、シフトや回転を含む複雑な位置依存のボケにもかか わらず、局所的な改善がかなり見られている。



平成14年7月19日