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複素PARCOR係数

実PARCOR係数は実自己回帰係数と数学的に全く等価であるが、実 際の信号から実自己回帰モデルを構成していく上で実自己回帰係数にはない優れた利 点があることが知られている。また、それ自身をいろいろな問題に直接応用すること も可能である。そうした理由で、音声信号処理では、実 PARCOR 係数がしばしば用い られている。ここでは、輪郭点列の記述のために、実数値列に対する実PARCOR係数を 複素数値列の場合に拡張することによって、複素 PARCOR 係数を定義する。

実数値列に対する$m$次の 実PARCOR係数は、順方向および逆方向の($m-1$)次実自己回 帰モデルによる予測誤差の相互相関係数として定義されている。そこで、$m$次の複素 PARCOR 係数 $p_m$ を順方向および逆方向の$(m-1)$次の複素自己回帰モデルによる予測 誤差 $\epsilon^f_j(m-1)$ $\epsilon^b_j(m-1)$の複素相互相関係数として、

\begin{displaymath}
p_{m}=\frac{\mbox{E}_j(\epsilon^f_j(m-1)\bar{\epsilon}^b_{j...
...{j}(\epsilon^b_{j-m}(m-1)\bar{\epsilon}^b_{j-m}(m-1))\}^{1/2}}
\end{displaymath} (306)

で定義する。ただし、
\begin{displaymath}
\epsilon^f_j(m-1) = z_{j} - \sum_{k=1}^{m-1}a_kz_{j-k}
\end{displaymath} (307)


\begin{displaymath}
\epsilon^b_j(m-1) = z_{j} - \sum_{k=1}^{m-1}b_kz_{j+k}
\end{displaymath} (308)

である。ここで、 $\{b_{k}\}_{k=1}^{m-1}$ は逆方向の$m-1$次複素自己回帰係数で ある。

ここで定義した$m$次の複素PARCOR係数$p_m$は、$m$次の複素自己回帰係数 $\{a_k\}_{k=1}^{m}$$a_m$に等しいものとなっている。また、$m$次の複素自己回帰 モデルに対して一つの複素PARCOR係数$p_m$のみが定義されるので、モデルの次数が増 加してもその次数より低次の複素PARCOR係数は影響を受けない。



Takio Kurita 平成14年7月3日