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はじめに

情報化社会の進展に伴いデータベースで扱われる情報は、従来の文字・数値デー タから画像・音声等を含むマルチメディアデータへと多様化している。また、 その利用形態もさらに高度化することが望まれている。特に、人間にとって最 も直感的にわかりやすい画像情報を蓄積・管理する画像データベースシステム の必要性は、今後ますます高まるものと考えられる。

画像情報は文字情報と比較してはるかに多くの情報を含んでいる。また、光ディスク 等の蓄積媒体の進歩により、大量の画像を蓄積することが可能になってきている。し かし、現在の画像データベースシステムの多くは、データベース管理者が各画像にあ らかじめ付けたキーワード情報に依存した検索しか実現していない[21]。 キーワードのみでは目標とする画像を表現することが難しく、検索結果は不満足なこ とが多い。また、各画像にキーワードを付与する際の労力も無視できない。従って、 画像データベースシステムでは、画像の性質をうまく利用した索引の自動作成法や検 索法の開発が重要であり、これまでにも画像処理を組合せた検索法がいくつか試みら れている [39,41,113,117,152,160,167]。

一方、現在、多くの分野で利用されるようになった関係データベースにおいても、キー ワードに完全に一致するデータのみを検索する従来法に加えて、データ間に距離を導 入することによって、より柔軟な検索を可能にする試みが始められている [116]。また、文書の柔軟な検索にベクトル空間を用いる試みもある [180]。

また、高度なマンマシン対話を実現するためには利用者が対象世界をどのように主観 的に解釈しているかをシステム自身がモデル化して持つ必要があるという認識から、 利用者の主観的な情報を取り込もうとする試みも行なわれている。藤田らのイメージ ファイリングシステムでは、人間の視覚心理を構成する空間を形容詞を用いて定義し、 形容詞間の相関を分析して幾つかの因子に縮約し、その因子を用いた検索が試みられ ている[29]。平林らは、索引作成者の感性を多くの利用者に伝える立場 から、索引作成者のイメージ空間を種々の観点の座標軸で作られた空間に射影し画像 データの分布を利用者に視覚的に提示している[43]。

本章では、まず、商標・意匠図形を対象とする画像データベース [50,51]の検索手法として、画像を直接キーとして似た図形を検索す る手法について論じる。一般に、データベースの利用者が感じる画像間の類似度は 利用者ごとに異なっていると考えられるので、利用者ごとの主観的な類似度を反映し た類似画検索が必要となる。ここでは、多変量解析を用いた例からの学習によって各 利用者の類似度を反映した検索空間を構成する [53,54,55,57,64,60,83,84,88]。

また、フルカラー絵画を対象とする絵画データベースの検索手法として、印象語から の画像検索手法を示す。この場合にも、データベースの利用者が絵画に対して感じる 印象は利用者ごとに異なると考えられる。ここでは、正準相関分析を用いて印象語と 画像特徴との相関関係を学習し、利用者ごとの検索空間を構成する [30,56,58,59,61,62,63,65,89,98]。



Takio Kurita 平成14年7月3日