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例示画をキーとした類似画検索の課題

例示画をキーとした類似画検索では、システムは例示画とデータベースに蓄えられた 画像の類似度を評価する必要がある。この場合、直接、画像(ビットマップ、ラスタ データ)間のマッチングに基づき類似度を定義し、それを用いて検索することも考え られる。しかし、一般に、画像データは膨大であり、例示画とデータベースに蓄えら れた全ての画像間のマッチングを行なうのでは、検索にかなりの時間が必要となる。 また、画像間のマッチングでは画像が少し傾く等の画像のずれによって結果が大きく 異なる可能性がある。従って、システムは各画像をある程度抽象化した画像特徴を自 動的に抽出することが必要となる。

図 9.1: 画像間の主観的類似度
\begin{figure}\begin{center}
\psfig{file=images/fig-9.1.eps,width=100mm}\end{center}\end{figure}

データベースの利用者が感じる画像間の主観的類似度は、利用者毎に異なっていると 考えられる。このような個人差に適応した類似画検索が実現できれば、データベース システムのユーザインターフェースはより改善される。また、画像から自動的に抽出 した比較的簡単な画像特徴では画像の信号的な特徴は捕えられるが、利用者の主観尺 度に一致するようなより抽象的な特徴までは捕らえにくい。例えば、図 9.1の4つの図形は、円に放射状の切込みが入っているという意味で似 ていると思われるが、これらを似ていると評価できるような画像特徴を自動的に抽出 することはかなり難しい。従って、各利用者の感じる画像間の主観的類似度を何等か の方法で測定し数量化することが必要になる。

さらに、例示画から利用者の主観に合致した類似画を検索できるためには、画像から 自動的に抽出した画像特徴と利用者の主観尺度を関係付ける必要がある。この時、デー タベースに蓄えられる全ての画像に対して各利用者の主観に関する情報を取るのでは 実用的でない。従って、データベースに蓄えられる画像の内の何枚かの代表的な画像 (学習用画像集合)に対して利用者の主観に関する情報を取ることによって、全画像 の画像特徴と主観尺度との関係を推定する必要がある。

また、図形を例示する際、画像が多少傾く等して同じ画像に対して必ずしも同一の画 像特徴が得られるとは限らない。つまり、データベースに蓄えられている画像と同じ 画像を例示画として再び提示しても、その画像を検索できない可能性がある。従って、 例示の際の画像の傾きや大きさ等のパターンの歪みも考慮する必要がある。



Takio Kurita 平成14年7月3日