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はじめに

多変量解析的手法は、従来、主としてデータを解釈するための補助手段として 用いられて来たが、それは、今後急速に需要が高まるであろう複雑な仕事の計 算機による自動化のための補助手段としても有効であると考えられる。本章で は、日程表作成問題を例として直接最適解を求めることが難しい問題の準最適 解を高速に求めるために多変量解析的手法を利用する方法について考察する [75,78]。

日程表作成問題とは、例えば、多くの項目とその関係者の間の該当関係(相伴表、質 的データ)をもとに、打ち合わせ会議の日程表を作る問題である。会議は時間や場所 の制約により一日に何個かづつしか開催できないとする。つまり、全ての項目の打ち 合わせ会議を終了するには数日間必要であるとする。関係者が各々一つの項目のみ に関係している場合には問題はないが、多くの項目に同時に関係している場合には会 議の日程によって関係者の出席日数が変わる。日程表の作り方が悪いと関係者の出席 日数が多くなり、会議のために無駄にしなければならない日数が増える。特に、関係 者が会議に出席するために遠方から出て来なければならないような場合には、出席日 数を少なくすることは意味がある。従って、好ましい日程表とは、関係者の延べ出席 日数を最小にする日程表である。

このような問題に対して、最適解を直接組合せ的に求めようとすると、その計算量は 項目の数に関して指数的に増大する。従って、項目の数がある程度以上になると計算 不可能となってしまう。

ここでは、この問題の準最適解を高速に求めるために多変量解析的手法を利用するこ とを考える。

まず、こうした問題に対するより一般的な手法として、原データから多変量解 析手法を用いて大まかな情報を抽出することにより難しい問題を簡単な問題に帰着さ せて解く方法について述べる。具体的には、項目とその関係者の間の該当関係(相伴 表、質的データ)から数量化3類あるいはK-L展開(主成分分析)を用いて一次元 のスコアを求め、そのスコアをもとに日程表を作成する。

次に、問題から自然に与えられる評価基準に沿って導出したbottom-up merging(階 層的クラスタリング)による手法を提案する。それは問題に即した手法であり、従来 の何等かの距離(メトリック)をトップダウンに仮定する階層的クラスタリング手法 と異なり、クラスターの代表ベクトルおよび統合のための測度が論理的に一意に定ま る。さらに、クラスター代表ベクトル間のJaccardのMatching Coefficientをクラス ター間の測度とする手法を提案し、それが上記の手法と定性的に似た振舞いをするこ とを示す。また、従来の階層的クラスタリング手法の代表例としてGroup Average法 との関係についても述べる。

最後に、人工データおよび実際の会議の日程表を作成する問題に対してこれらの手法 を適用しその有効性を示す。



Takio Kurita 平成14年7月3日