通勤圏

 これもイラストレーターで作成しています。通勤圏図を描くことにより,都市圏を求めています。


<福島県>

 福島県は、その広大な面積から明瞭な通勤圏を大きく分けて8つ見出すことができる。
 まず、最大の通勤圏を形成するのは、県庁所在地である福島市である。福島県中通り地方北部10市町村の第1位通勤先である。このほか、福島県中通り地方では、二本松市、郡山市、須賀川市、白河市に通勤圏が見られる。二本松市は3町の、郡山市は8市町村の、須賀川市は4町村の、そして白河市は8町村の第1位通勤先となっている。このことより、福島県中通り地方では、東北新幹線、東北自動車道沿いに北部・福島市、中部・郡山市、南部・白河市を通勤圏の大きな核があり、その中間の二本松市、須賀川市に小規模な通勤圏があるという構図になっている。
 一方で、会津地方は9市町村の第1位通勤先である会津若松市と、6市町村の第1位通勤先である喜多方市の2眼レフ構造となっている。ただし、人口が多く、会津盆地の交通の要所である会津若松市の方が、通勤圏は広い。また、会津地方の特色として、山間地域ゆえにどこの通勤圏にも属さない通勤不活発地域が、西会津町、三島町、金山町、昭和村、只見町、田島町、南郷村、舘岩村、檜枝岐村の9町村にも及ぶことである。檜枝岐村に関しては3人と、通勤がないに等しい。また、伊南村、下郷町も通勤は存在するものの、全体の10%以下とわずかである。
 最後に、浜通り地方であるが、ここも、特色ある通勤圏となっている。まず、4市町村の第1位通勤先である原町市。次に、3町村の第1位通勤先である富岡町と大熊町である。人口36万人を有するいわき市は、2町村からの流入と少ない。これは、15市町村を合併して日本最大の市域面積となったことで、いわき市内でいわき市中心部への通勤がまかなえるということになるであろう。また、いわき市の場合、第1位通勤先が5%未満では茨城県北茨城市となっている。次に、富岡、大熊両町であるが、人口の割に、ある程度の通勤圏が形成されているのは、両町にある東京電力福島第一・第二原発や関連施設の従業者であると思われる。
 このように、県域が広い福島県においては、浜通り、中通り、会津とそれぞれが独立していて、その中で、いくつもの通勤圏が形成されているのである。


<福井県>

 この図は1995年の国勢調査による,福井県の就業者の通勤者数・通勤率を示した図である。明らかに福井市への通勤者数が多く,全35市町村中16市町村が同市へ通勤している。特に福井市の隣接している松岡市,美山町,清水町などの通勤率は40%前後とかなり高い数値を示している。これらの市町村は平野の広がる福井市と違って山地であるため就職先があまりないからであると思われる。これに対し三国・芦原町からの通勤率が15%前後であるのは,温泉旅館が建ち並び観光地として栄えていて、現地に就職する人が多いからである。福井県嶺南は市町村が少ないため、近隣の敦賀市、小浜市に通勤している。高浜町だけが県外の京都府舞鶴市している。


<三重県>

 日々の人々の活動範囲を見ることで,実質的な市町村の結びつき,ひいては地域のまとまりを知ることができる。ここでは通勤を取り上げて,三重県内における中心都市とその影響圏を捉えてみたい。平成七年「国勢調査報告」の通勤統計によれば,三重県は北中部と南部で大きく異なっている。すなわち,北中部は比較的大きな通勤圏が複数あるのに対し,南部では大きな通勤圏は見られず,通勤者の絶対数も小さい。ただ北中部でも圧倒的に大きな通勤圏を持っている市は無い。おもな通勤先は北から四日市市,津市,松阪市,伊勢市の4市が挙げられるだろう。津市や松阪市,伊勢市の三重県中部での一番大きな通勤先は津市である。しかしやはり顕著に大きいことはなく,その通勤圏は比較的狭い。それは三雲市を挟んですぐ南に松阪市があるからだろう。松阪市は松阪以北の市町村からの通勤はないものの,以南6市町村からの第1位通勤先になっている。そして東,志摩半島に入ると,伊勢市が周辺7市町村からの第1位通勤先となっている。この3市が各々中心性の高い市であるために通勤圏の範囲は幾分狭く,それぞれに散っていると考えられる。三重県西部の内陸部では上野市が小規模な通勤圏をもっていて,周囲4町村からの第1位通勤先となっている。反対に県東部志摩半島の東端では阿児町が周囲4町からの第1位通勤先となっている。三重県北部は四日市,桑名,鈴鹿と通勤者数が多い市が並ぶ。その中での中心都市は四日市市であり周囲6市町村からの第1位通勤先となっているが,三重県の北部は大都市である名古屋市に近く四日市市からの第1位通勤先も名古屋市である。名古屋市は三重県内では桑名,四日市,木曾岬,長島からの第1位通勤先となっている。南端部も規模は小さいが同じように和歌山県の新宮市に紀宝町,鵜殿村の2町村が第1位通勤先としている。いずれの通勤圏にも属さない通勤不活発地域は,関町,南鳥町,紀和町の3町であり,そのうち南鳥町,紀和町はいずれも南部である。南部では他にも極小の通勤圏しかなく,辛うじて残っているという印象を受ける。


<兵庫県>

兵庫県内における中心都市とその影響圏を通勤統計によって捉えてみると,次のようなことが分かった。兵庫県内で明瞭な通勤圏は,3つ見出せる。まず,県庁所在地である神戸市は,神戸市と姫路市の間の6市町村の第1位通勤先となっている。明石市からの通勤率が高いけれども,その他の市町村からの通勤率はさほど高くなく,また神戸市自体の第1位通勤先も大阪市であることから,神戸市の通勤圏の範囲は意外と狭いことが分かる。これは,大阪市という中心性の高い都市が存在することによると思われる。県南部の神戸市より東の9市町村は,隣接する大都市,大阪市を第1位通勤先としている。その通勤者数,通勤率は共に大きく,巨大な通勤圏を形成しているため,通勤結節流の顕著な集中先と言ってもよいだろう。また,市島町も京都府の福知山市への通勤者数が多いことから,兵庫県は県外への通勤が活発であるという点に特徴があると言える。そして,県西部の内陸部から沿岸部まで18市町村の第1位通勤先であり,大きな通勤圏を形成するのが姫路市である。姫路市周辺の人口規模の小さな市町村からの通勤者はだいたい姫路市まで通勤しているようである。これら3つの通勤圏以外では,豊岡市,西脇市,和田山町,社町,山崎町などに,小規模な通勤圏が存在している。また淡路島では,津名町が最も大きな通勤圏を形成しているが,淡路町だけは明石海峡大橋とつながっており,通勤が容易であることから,第1位通勤先は神戸市となっている。このように,兵庫県は特徴的な通勤流動を示しており,結節地域化が進んでいると言える。


<広島県>

 1995年の「国勢調査報告」の通勤統計によれば、県内には広島市、呉市、三次市の3つの明瞭な通勤圏が見出せる(図)。最大の通勤圏を形成するのは広島市である。周辺21市町村の第1位通勤先であり、通勤結節流の顕著な集中先となっている。これは広島市が政令指定都市、支店都市であるため多くの企業など雇用先が集中しているからであると考えられる。県北では、三次市、沿岸部では呉市の通勤圏が広い。しかし、通勤者の絶対数、また通勤率からみれば広島市と並ぶ広範囲の通勤圏は存在しない。東広島市自体は広島市の通勤圏に含まれ、従属都市とも捉えられる。今はまだ広島市のベッドタウンとしての働きの方が大きい東広島市であるが、周辺4町村の第1位通勤先となっており、また広島大学の移転に伴い開発が進んでいる市であるため、今後大きな通勤圏を形成することも考えられる。県東部の福山市も小規模な通勤圏を形成してはいるが、東部の中心都市にしてはあまり大きな通勤圏ではない。このような通勤圏の形成には交通の整備が必ず影響していると言える。道路や公共交通機関が整備されないことには通勤という行為がスムーズに行われないからである。他の視点からこのことを捉えれば、新しく道路が整備されるなどすれば、そこを利用した新たな人の流れができるわけで、通勤圏も変わってくるのである。いずれの通勤圏にも属さない通勤不活発地域は県境に位置する吉和村、芸北町、高野町の3つであり、広島県は通勤流動からみて、結節地域化が進んでいるとは言いきれない。


<高知県>

 平成7年の「国勢調査報告」の通勤統計によると高知県には一つのおおきな通勤圏があることが分かる。周辺14市町村の第一通勤先であり県最大の通勤圏を形成するのは高知市である。高知市はその東西から通勤者が集まっている。高知市以外には安芸市,中村市,宿毛市,奈半利市,須崎市に小さな通勤圏が存在する。しかしいずれの通勤圏にも属さない地域はまだ県内にかなりの割合で残っている。県境の市町村や高知市と中村市,宿毛市の間の地域が通勤不活発地域である。高知県は東西に長く高知市以外に中心となる市町村が無い。通勤流動からみて,結節地域化は進んでいないといえる。


<大分県>

日々の人々の活動範囲を見ることで,実質的な市町村の結びつき,ひいては地域のまとまりを知ることができる。ここでは通勤圏を取り上げて,大分県内における中心都市とその影響圏を捉えてみたい。平成七年「国勢調査報告」の通勤統計によれば,最大の通勤圏を形成するのは大分市である。図を見ても通勤結流の顕著なことが分かる。大分県で中心性の高い都市は,県庁所在地でもある大分市位しか存在しない。ある程度の中心性を持った,観光地として有名な別府や,湯布院,福岡に隣接する中津市でも,まだまだ,大分市ほどの通勤結流は見られない。
他に目を向けた場合,図を見てみると,佐伯市や竹田市,宇佐市などに通勤圏は存在しているが,その規模は極小規模なものである。
 大分県には,いずれの通勤圏にも属さない通勤不活発地域は,数多く存在している。このように,大分県は通勤流動から見ても,結節地域化はあまり進んでいないと言える。


<宮崎県>

 宮崎県の通勤圏についてみてみると,大きい通勤圏が二つ,小さな通勤圏が三つあるのがわかる。最も顕著なのは,県庁所在地である宮崎市であり,とくに宮崎市のベッドタウンとして近年人口が増加している清武,田野,佐土原町からの通勤がおおい。県南の中心都市である都城市も周辺市町村からの通勤行動が見られる。小さな通勤圏として,小林市を中心とした地域,日向市を中心とした地域,延岡市を中心とした地域で隣接町村からの通勤行動が見られる。さて,県中部,児湯郡の第一次通勤先を見てみるとどんどん南へ下がっていく行動結果がみられた。これは,県中部の交通事情が悪く企業が立地しづらい環境にあるため,労働者がより労働機会豊富な南の市町に働きに出ているからであるとおもわれる。実際都農町から国道を宮崎市方面に向かうと,だんだんと町がにぎやかとなり,工場もおおくなっている。県西部では通勤に多大な時間を要するため,目立った通勤行動は見られず,国道の整備が進んでいる五ヶ瀬,日之影町にわずかに見られる程度である。
県西部を除くと宮崎県の結節化は進んでいるといえるのではないか。私はこの県西部を宮崎県の結節地域に組み入れることが今後の山間部の活性化の鍵をにぎるものと考える。