研究業績1:単著・共著・分担執筆
Glaube zwischen Vollkommenheit und Verweltlichung. Eine Untersuchung zur literarischen Gestalt und zur inhaltlichen Kohärenz des Jakobusbriefes (Wissenschaftliche Untersuchungen zum Neuen Testament, 2.Reihe 93), Tübingen: Mohr Siebeck, 1997. XI, 244 Seiten.
スイス・ベルン大学に1994/5年冬学期に提出、受理された博士論文を一部改訂したもの。「ヤコブの手紙」の文学類型(初期ユダヤ教における「ディアスポラ書簡」の伝統を継承している)や手紙全体の内容的一貫性、またパウロ的キリスト教との関係などを論じています。印刷機にかける原版を自分でパソコンを使って作ったことや(それが出版の条件でしたので)、まだEメールというものが普及していなかったので、ドイツの編集担当者とファクスでやり取りしたこと(真夜中にファクスが来て起こされたこともありました)、そのときに初めて Windows 95 に触れたことも、今となっては懐かしい思い出です。現在も入手可(59ユーロ)。
『ヤコブの手紙』(現代新約注解全書)、新教出版社、2002年。294頁。
「ヤコブの手紙」の学術的注解書。上記の学位論文で論じたことはほとんどこの注解書に織り込まれています。雑誌『福音と世界』(新教出版社)の1999年1月号〜2000年2月号に「新約釈義 ヤコブの手紙を読む」を連載しましたが、その原稿がこの注解書の基礎になっています。また、本書に先立って『新共同訳 新約略解』(日本基督教団出版局)に執筆したヤコブ書の略解(下記「分担執筆」の項参照)はいわば本書の簡略版ですが、略解の執筆後に釈義上の意見を変えた箇所も若干あります。ヤコブ書という文書の人気がないせいなのか、私の本がわかりにくいせいなのか、いまだに初版第1刷のままです。定価5000円。中身の濃さからして、決して高くないと思います。ヤコブ書とていねいに取り組んだ研究書は日本でこれ1冊なのですから。英語かドイツ語に直して出版したいとすら思っています。
『現代を生きるキリスト教 もうひとつの道から』(芦名定道・土井健司・辻 学共著)、教文館、2000年、改訂新版2004年。315頁。
大学におけるキリスト教学の講義用教科書として、京都大学の芦名定道氏・玉川大学(現在関西学院大学)の土井健司氏と一緒に執筆したものです。第一部第2章「聖書概説」と、第二部各章の第1講「聖書」の部分を担当。第一部で、宗教としてのキリスト教とその教典である聖書について基本的な知識を得た後、第二部では、現代社会における様々な問題(男女、結婚、貧富、グローバル化、生命、環境、終末など)を、キリスト教の立場から考えるという構成になっています。キリスト教の教科書としては構成上も内容の点でも独自な試みになっているこの本は、学校はもちろん、個人で利用される他、教会の聖書研究・勉強会などでも利用していただけると思います。315頁もあって定価2000円は安いはず。
『「新約聖書」がわかる。』 (AERA Mook 40)、朝日新聞社、1998年 (執筆項目:「牧会書簡」・「公同書簡」)
公同書簡について簡略に書いてくれと、AERA Mook の編集者からある日突然電話をもらい、引き受けたものです。キリスト教関係以外の出版社から原稿を頼まれたのは初めてだったので、はりきって書いたのを覚えています。ところが、この編集の人は、第二パウロ書簡(パウロの名前で書かれた偽名書簡)の存在を知らなかったらしく、牧会書簡はどうするのかと私が尋ねて初めてその存在に気づいたようです。牧会書簡も結局引き受けたのですが、なんとその他の第二パウロ書簡(第二テサロニケ書簡、コロサイ書簡、エフェソ書簡)がこの本からはすっぽりと抜け落ちています。どうも新約聖書にはまったく素人の編集者だったようです。牧会書簡の頁に当時の顔写真が出ています。
『新共同訳 新約聖書略解』、日本基督教団出版局、1999年 (執筆項目:「ヤコブの手紙」・「ペトロの手紙一」・「ペトロの手紙二」・「ユダの手紙」)
新約聖書全巻の注解を1冊に収めようという、考えてみればかなり無理のある企画ですが(全体で802頁)、旧版が非常によく売れたようで、新共同訳聖書に準拠した新版を発行することになったようです。ならば、新共同訳の当該文書を訳した人が担当するのが筋だと思うのですが。本のタイトルにはふさわしくないのですが、新共同訳の訳文に対する批判をちょこちょこ書いています。ヤコブ書はすでに、学位論文や『福音と世界』の注解連載で扱っていたから、割合簡単に書けましたが、他の3文書の注解にはかなり時間がかかりました。これらの文書についてもいずれは詳しい注解を書きたいと思っているので、その準備作業としては大変良かったのですが、ユダ書を400字詰め×10枚で書いてくれというような注文には閉口しました。公同書簡がほとんど省みられることのない、日本の研究状況を如実に表すような話です。税込み定価6300円。
『岩波キリスト教辞典』、岩波書店、2002年 (執筆項目:「パウロの名による書簡」)
岩波書店から、なぜか上記の項目だけ執筆依頼が来ました。当時、牧会書簡についての学会発表や論文執筆をよくしていたせいかと思います。400字程度の短いものですが、第二パウロ書簡全部をこの字数で書くのはかえって難しいものです。
『新版 総説新約聖書』、日本基督教団出版局、2003年 (執筆項目:「牧会書簡」・「ヤコブの手紙」)
1981年に出版された『総説 新約聖書』の新版。旧版同様オムニバスですが、書き手は全面的に入れ替わり、新しい研究動向なども反映されています。最初は、牧会書簡と第一・第二ペトロ書簡、ユダ書簡を依頼されていたのですが、牧会書簡以外は、すでに上記の『略解』で自分の見方を書いてしまっているので断りました。ヤコブ書簡は、だいぶん後になってから追加で頼まれたものです。ヤコブ書簡は、注解書の原稿を書き上げたところでもあったので、最初の担当予定者の前で、「自分なら目をつぶってでも書ける」と大言壮語してしまったところ、じゃあやってくれ、と押しつけられてしまったという次第です。えらそうな口はきくものではありません。それにしても、546頁で7560円はちょっと高すぎる気がします。確かに、これ1冊でとりあえず新約聖書概論には間に合うわけですが。
前島宗甫編著・関西学院大学共同研究「暴力とキリスト教」研究会編、『暴力を考える キリスト教の視点から』、関西学院大学出版会、2005年(執筆担当:「復讐するのは神――新約聖書と暴力」、89-112頁)。
2001度に発足した、関西学院大学キリスト教と文化研究センター内の研究プロジェクト「暴力とキリスト教」の共同研究成果として公刊された書物です。「復讐は神にゆだねよ」という、旧約・新約を貫いて流れる勧告の伝承がどのような背景や意図で語られたか、またその勧告を下支えする思想は何かを論じています。1700円プラス税。2007年度まで、関西学院大学開講の総合コース802「暴力とキリスト教」で教科書として使われました。
日本聖書協会主催「聖書セミナー」『講義録』VOL.1、クリスチャンセンター神戸バイブル・ハウス発行、2006年(執筆担当:「牧会書簡と初期キリスト教」、9-50頁)。
2003年の5月から6月にかけて、クリスチャンセンター神戸バイブル・ハウスで開かれた標記セミナーで、「新約聖書の世界―牧会書簡と初期キリスト教」と題して4回の講義を担当しました。講義録を出版するという話を、講義を引き受けた後で聞かされたのですが、講義の際には、本筋に関係のないムダ話もしますし、まだ確かめていないことや自信のない事柄も話すので、内容をそのまま出版することはできないと思い、しばらく時間をもらってから(本当はもう書かないつもりでしたが、仕方なく)、原稿を新たに書き直したのがこの「講義録」です。講義の時期が上記の『新版 総説新約聖書』の「牧会書簡」の項を書いた時点とかなり重複していることもあり、内容的には同じようなことを書いている部分も少なくありません。こちらの方が、分量が多いので、ていねいに書けているし、話し言葉でわかりやすく書いているという違いはありますが。『総説』以降にわかったことも含まれています。
関西学院大学キリスト教と文化研究センター編、辻 学・水野隆一・嶺重淑・樋口進共著、『聖書の解釈と正典 開かれた「読み」を目指して』、キリスト新聞社、2007年(執筆担当:「聖書―歴史的読み方の限界と可能性」、12-52頁)。
関西学院大学キリスト教と文化研究センター内の共同研究プロジェクト「聖典と今日の課題」が2005年度に開催した4回の公開研究会における発題とその後の討議を収録した書物。私が第1回の担当者でした。プロジェクト自体は、キリスト教が今日の様々な問題に取り組み、発言していくときに、聖典である聖書の読み方がどう機能する(べき)かを考察しようとするものです。私の発題は、歴史的・批判的な聖書解釈が持つ問題点と今後の課題を考えようという内容でした。同じ内容のものが、若干の補足・改定を施した上で、論文としても発表されていますが(「聖書――歴史的・批判的解釈の限界と可能性」、『関西学院大学キリスト教と文化研究』第7号、2006年3月、45-57頁)、本書の中では、発題時の内容をほぼそのまま収録し、話し言葉の形も残してあります。1500円プラス税。
平林孝裕編著、関西学院大学共同研究「愛の研究」プロジェクト編、『愛を考える キリスト教の視点から』、関西学院大学出版会、2007年(執筆担当:「隣人愛とイエス、初期キリスト教」29-52頁)。
関西学院大学では、分野を異にする研究者が共同研究を行うプロジェクトが行われており、この「愛の研究」プロジェクトもそのひとつです。名前が少々恥ずかしいのですが。本書は、その共同研究の成果として出版されたもので、研究成果を還元するための講義(総合コース804)も開講されています。私の担当分は、1997年に書いた論文「ルカ10:25-28の伝承史」(論文の項をご参照下さい)を下敷きにして、「隣人愛」をイエスがどう捉えていたか、それを初期キリスト教徒たちがどう受け止め、発展させたかを描こうとしています。2000円プラス税。
樋口進・中野実監修、『聖書学用語辞典』、日本キリスト教団出版局
、2008年3月。執筆項目:「牧会書簡」「再臨」「書簡文学」 「職制(初期キリスト教の)」「公同書簡」「徳目表・悪徳表」 聖書学の分野で用いられる専門用語や主要な研究者などについて解説をした辞典。執筆者が多数に亘るので、記述の丁寧さなどにばらつきがあるのはやむを得ません。類書がないので貴重かと思います。聖書学の本を読むとき、傍らにあると役立つ他、ぱらぱらめくって読むのも面白いです。2008年6月末まで特価6825円プラス税(定価は7560円)。厚みの割には高価な印象を免れませんが。
辻 学・嶺重淑・大宮有博編著『キリスト教の教師:聖書と現場から 山内一郎先生献呈論文集』、新教出版社、2008年11月。執筆担当:前書き(1-3頁)および「聖霊の導き――新約聖書における按手の意味」(126-143頁)
関西学院大学の恩師、山内一郎先生への献呈論文集です。先生への感謝の気持ちを込めて、全体の編集作業および上記の論文執筆を行いました。献呈論文集とはいえ、「キリスト教の教師」という統一テーマの下に12人が聖書学および実践の場からの論考を寄せた専門書でもあり、このテーマに関心のある方々に広く読んでいただければと思っています。3800円プラス税。
『新カトリック大事典』W、新カトリック大事典編纂委員会編、
研究社、2009年 (執筆項目:「ヤコブの手紙」1042頁) 遅れていたこの第W巻がついに発行されました。項目を執筆したのはかなり以前のことです。カトリックの事典にプロテスタントの人間か書いてもいいのかな、と思いながら原稿を準備したことが思い出されます。
『キリスト教平和学事典』、関西学院大学キリスト教と文化研究センター編、教文館、2009年 (執筆項目:「愛」「家族」『黙示』)
関西学院大学キリスト教と文化研究センターが取り組んできた平和研究の結実ともいえるこの事典が発行されたことは、最初の企画の段階から関わっていただけに感無量です。私自身は、広島に移ったため、途中で担当を抜けてしまいましたが、この仕事を最後までやり遂げたセンターの皆さんに敬意を表します。
『隣人愛のはじまり――聖書学的考察』、新教出版社、2010年6月。
キリスト教の看板ともいえる「隣人愛」。しかしイエス自身はこの「隣人愛」をどのように捉えていたのでしょうか。福音書の描き方は一様ではありません。隣人愛の概念が旧約聖書から初期ユダヤ教に引き継がれ、さらにそれが――イエス自身の意図するところを超えて――キリスト教の中で重視されるに至った過程を、聖書や聖書外文献にあたりながら見ていく試みです。「聖書学的」と副題にはありますが、専門知識がなくても読んでいただけるように書いた(つもりの)一冊です。1700円プラス税。
蛭沼寿雄著『新約本文のパピルス』第III巻、新教出版社、2010年 (「刊行委員会」による編集作業)NEW!!
私の研究業績ではないので、本来はこの項目に入れるとおかしいのですが、「刊行委員会」の一員として編集作業に携わったこともあり、特別な思い入れもあるのでここに挙げました。2001年2月に逝去された蛭沼寿雄先生(関西学院大学名誉教授)のライフワークである『新約本文のパピルス』、新約聖書のパピルス写本を1番から順に、可能な限りパピルスの写真版も掲載しながら、その本文を転記し、1語1語について他の写本と比較検討していくという比類なき業績ですが、その第3巻を、先生の没後9年目にして刊行することができました。刊行費用のために募金下さった方々に感謝します。15000円プラス税。なお、第I巻と第II巻は大阪キリスト教書店より刊行されています(取り扱いは同書店[TEL. 06-6345-2928]および西宮聖文舎)。