1.研究成果(馬場卓也教授)

2004年派遣開始から既に7年が経過し、既に20名を超える若者がザンビアプログラムに参加しました。このような教育実践を元にした研究活動、国際協力を元にした研究活動は、常に理想と現実のはざまで苦悩することが求められています。空虚な理想だけでなく、理想のない場当たり的な対応だけでなく、私たちは海図を作りながら嵐の吹きあれる海原を進んでいきたいと思います。

ザンビアでの活動は、理数科教育が主ですが、下に列挙したように多様な取り組みが見られます。私たちの理論と実践の融合的取り組みにおいて、問題の多様性、それに応じた研究アプローチの多様性は、今後も引き継がれていくでしょう。

制度、プロジェクトに関する研究 例 Zone Education Support Teamの現状と課題、HIV/AIDSの予防行動など

学校経営に関する研究 例 効果的な学校経営など

教材開発に関する研究  「数学はパターンの科学である」という見方に基づいた「本質的学習環境(SLE)」教材

生徒の理解・到達度に関する研究 例 図形学習の困難性、学力を多学年比較によって分析・考察など

教師の専門性及びその向上に関する研究 例 教師の専門性向上に役立つツールやアイデアの提案

修士論文

ザンビアにおけるZone Education Support Teamの現状と可能性

国際教育協力としての教員センターに関する研究―ザンビア共和国南部州の事例からの検討―

理科教育開発における授業研究の意義と役割−生徒中心を目指すザンビアの基礎教育を事例として−

ザンビア基礎学校における数学的活動に基づく授業展開の現状と可能性

ザンビア共和国におけるHIV/AIDSに関する情報量の多寡が予防行動に及ぼす影響

ザンビア基礎教育の図形学習における困難性に関する研究

ザンビア後期基礎教育における生徒のおかれている文化的状況についての研究

ザンビア後期基礎教育における分数理解に向けた授業実験

ザンビアにおける『本質的学習環境(SLE)』に基づく数学科授業開発研究

ザンビア後期基礎教育における数学科授業分析の研究―教師・生徒の言語活動を中心に―

ザンビア共和国の基礎教育における効果的な学校経営

ザンビアにおける基礎算数能力の獲得過程に関する研究

数学の言語的表現にみるザンビアの小学生におけるかけ算・わり算概念に関する研究

ザンビア後期基礎教育における数学と文化をつなげる教材開発研究〜図形領域に焦点をあてて〜

ザンビア後期基礎教育における数量関係の理解に関する研究

The present situations in science education in basic school of Zambia

ザンビア基礎学校における学校経営の改善

ザンビア中等教育における理科と数学の関連性に注目した授業開発研究

ザンビア基礎学校における数学の効果的発問に関する研究

ザンビア数学文章題における思考過程の研究


2.一般隊員とザンプロ隊員の違い(高阪将人 21年度1次隊)

私は、大学卒業後に青年海外協力隊の理数科教師としてパプアニューギニアに赴き、高校生に理科と数学の授業を行いました。帰国後、国際協力における教科教育に興味を持ち、広島大学国際協力研究科に入学しました。そして、ザンビア・プログラムに参加し、再び理数科教師として、高校生に物理と数学の授業を行いました。

ここでは、一般隊員として活動を行ったパプアニューギニアでの経験と、ザンビア・プログラム隊員として活動を行った経験の比較を簡単に述べたいと思います。

 

 

パプアニューギニア

ザンビア

・インターネットを駆使し、情報を収集するが、指導内容や生徒の学力など具体的な情報があまり手に入らなかった。その結果、パプアニューギニアに特化した具体的な準備を出来ずに赴任することになった。

・ザンビアから帰国してきた隊員も多く、教科書やシラバスなどがあり、指導内容や生徒の学力を容易に知ることができた。また、帰国ザンプロ隊員による訓練もあり、ザンビアに特化した準備を行うことができた。

・日々直面する課題に対して、表面的な解決は行えるが、根本的な解決策を講じることが行えなかった。

・意見交換できる相手が限られており、情報の幅に限りがあった。

 

・理数科教師としての活動以外も行う余裕があった。

・研究という視点をもって、一段階上の目線で、課題解決に取り組むことができた。

・メーリングリストやザンビアでの集中講義を通し、様々な情報にアクセスできた。

・研究があることで、良い意味で緊張感を持つことができた。



・帰国後の進路を決める必要があり、無職であることに、後ろめたさを感じた。



・大学院生という身分があり、帰国後行うべきことが明確だった。

 

以上より、ザンビア・プログラムに参加することによって、様々な利点があったように感じました。もし、もう一度青年海外協力隊に参加する機会があるのならば、ぜひザンビア・プログラムを選びたいと思います。



3.ダブルマスターと博士課程進学(中和渚 17年度2次隊)

私は数学教育のマスターを取得してからザンプロに入りましたので、やりたいことや研究テーマが入学前から明確にありました。もともと、IDECに入学したのはアフリカをはじめとする途上国で専門家として活躍したいという理由でしたので、ドクターを取る気持ちで入学したこともあり、マスターを取得することはプロセスの1つとしてとらえていたと思います。

今思えば、数学教育で学んだことを国際教育開発における教科の内容や方法に当てはまるという意味では以前取得したマスターが役に立ったとも言えます。また、研究を進めていくうえでのペースや計画性でもメリットがあったのかな、という風に感じています。

ただし、入学後に強く感じたことですが、国際協力の知識に関して全くありませんでしたし、研究の方法や内容、スコープに関しても新しく知ることが多かったので、自分がマスターをすでに1つ持っていることに対して、自信というものは殆どなかったように思います。

むしろ自分が知らなかった研究の方法や内容、トピックに対して違和感を感じることもあって、メリットを在学時に感じる機会は殆どありませんでした。

マスターを実践的な場に身を置いて取ることは、非常に大きな価値があると思います。これはマスターを2つ持っていることとは何ら関係なく全員に当てはまることだと思います。

先程、私はIDECで行われている研究に対してわからないことが多かったのですが、2年間のフィールドワークを経て帰国すると、それらの研究に対して自分なりの意見や価値判断を持って聞くことができるようになったと思います。

途上国の現場に身を置いて、研究をしようという姿勢で子どもや教師、文化、そして社会的な環境などを分析的に見るという視点を培ったことで、これらの能力が身についたのではないかと思います。



4.英語能力アップ(島本史也 20年度3次隊)

ザンビアの公用語は英語です。学校では小3から英語で授業を行うように推奨されていますが、実際は英語を理解できる人は限られているのが現状です。

ザンビアでは毎年8月にザンビア大学、広島大学、JICAの共同でワークショップを行っています。ワークショップではザンビアの教育についてそれぞれが日々研究している事を紹介します。

参加者が大学の先生、国際協力に携わる研究者、JICAの専門家の方々なので内容の質は言うまでもなく、高い英語力、すなわち、専門的な単語や言い回し、英語でプレゼンでのたち振る舞いなど研究者として必要な英語力が求められます。

日常会話としての英語力は日々の授業や生活の中で向上していきますが、ワークショップと言うアカデミックな場所での発表となると「しっかり英語で相手に伝えられるか」、「相手の質問を理解して、返答できるか」といった心配がつきません。

私はワークショップの一ヶ月前からは配属先の学校の英語教師に私が書いたレジュメや発表原稿の英語を何度も添削してもらい、発音の練習までやりました。その上、発表前日には同じく発表する人たちと練習を重ね当日に備えます。

ザンビアでは英語で数学を教えることから英語で研究を発表するという日本では絶対に経験できない経験が出来ました。

これから国際協力の世界で活躍しようと考えてるいる方にとっては”日常の英語”と”アカデミックな英語”の両方が学べる有意義な2年間になると思います。



5.教員になる前になにかしたい人、大学院か?協力隊か?(木村光宏 20年度3次隊)

私は、学部4年生のときにザンビア・プログラムのことを知りました。私は、広島大学の総合科学部で学部の4年間を過ごしました。もともと高等学校の教師になりたいという目標があったので、この学部で数学だけでなく、心理学や文化人類学などを学び、バイトやクラブ活動を通して、多様な体験をしたいと考えていました。そのときに感じたことの一つに、海外で何か活動してみたいということがありました。私は、あまり英語が得意ではありませんでしたが、グローバル化の進む社会において、海外における経験が全くないのに教師を目指すことは、自分の教師としての視野を狭めるのではないかと考えました。

私はザンビア・プログラムに参加して、Eメールなどを通して遠隔地という条件をカバーしながら先生方から指導を受けました。その甲斐あって、隊員活動と研究活動を同時に進めることが出来、充実した2年間を過ごすことが出来たと感じています。

帰国後は教員採用試験を受け、教員になるという夢の実現に努力を重ねています。教員採用試験では模擬授業などもあるのですが、協力隊に行く前にしたザンビアプログラムの授業練習が非常に役に立っていると感じています。実際に日本で教壇に立ったことのある先輩を交えて、みんなで意見を出し合って授業を改善していくというのは、非常に貴重な経験だったと感じます。現在は、逆の立場になって次にザンビアへ行く後輩たちに授業を指導しているのですが、自分の勉強にもなっているなと感じます。

大学で進路に悩んでいる人。ぜひザンビア・プログラムで協力隊と研究の両方をやってみてはいかがですか?