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バイオマス科学会議

報告者:松村 幸彦
開催日時 : 2006年1月17日(火)〜1月18(水)
場   所 :東京大学 安田講堂

2006年1月17日、18日と東京の東京大学安田講堂において第1回バイオマス科学会議が開催されています。
今回はバイオマスセッションは20件の口頭発表、51件のポスター発表があります。
また、農工大の柏木先生に特別講演「我国の新エネルギー政策とバイオマス」をいただき、
横山前部会長のコーディネートでパネル討論会「バイオマス温故知新:ブームから本流へ」が行われます。
この会議では、全体で意見を共有するために口頭発表セッションを1カ所とし、全員が同じ発表を聞く形で進めています。
同時に、ポスターセッションについては時間の前半で著者が2分ほど説明するツアーをいくつか並行で行う形を取っています。

以下に初日の口頭発表の内容について報告させていただきます。

山地部会長から「地に足の着いたバイオマス研究」のための科学会議に、との挨拶の後、以下の講演がありました。

技術1 座長:美濃輪(産総研)
O201 食品廃棄物高速メタン発酵システムの開発 吉岡ら(富士電機アドバンストテクノロジー)
 高温メタン発酵の条件制御を細かく行うことによって生ゴミのメタン発酵日数を4日とする。
O202 高効率エタノール発酵に基づくセルロース系バイオマスからの燃料用エタノール生産プロセスの開発と評価 山田ら(アルコール協会、NEDO)
 リグノセルロース系バイオマスからのエタノール発酵技術開発のレビューと
アルコール協会で進めている75%の濃硫酸を用いたプロセス開発の紹介。
O203 高速度発酵細菌によるセルロース系バイオマスからのエコエタノール製造 簗瀬(鳥取大)
 すべてを生物化学的に行うリグノセルロース系バイオマスからのエタノール発酵のための微生物育種。
O204 超臨界水ガス化の昇温部分における反応特性の検討 松村(広大)
 超臨界水ガス化において昇温速度が生成ガス特性に及ぼす影響をタールの生成、各反応速度定数の決定、
   反応シミュレーションによって確認。

技術2 座長:坂西(産総研)
O205 酸化カルシウム触媒を用いた廃食用油からのバイオディーゼル油製造 高津ら(けいはんな、白石工業、産総研、同志社大)
 アルカリ廃液を生成しないバイオディーゼル油製造のための酸化カルシウム触媒において、遊離脂肪酸が触媒を分解することを確認。
O206 木質バイオマスの熱分解ガス化原料の前処理乾燥方法の研究 笹内ら(中外炉工業)
 ガス化の前処理としてのチップ乾燥方式の比較。バンド通気乾燥かドラム乾燥が有効。
O207 高含水バイオマスの油中改質乾燥・ガス化システムの開発 渡邊ら(電中研、神戸製鋼所、石川島播磨重工業)
 含水性バイオマスの効率乾燥として100℃以上の油で処理をし、発生した水蒸気は圧縮熱回収、生成物をガス化するプロセスの検討。
O208 粘度系廃棄物を流動媒体とする循環流動層による木質バイオマスの水蒸気ガス化 野田ら(東京農工大)
 レンガ粉砕物を多孔性流動媒体としてバイオマスガス化を行う時に、レンガ粉砕物を水素還元しておくことによる効果を確認。

導入・システム 座長:松村(広大)
O301 アジアを中心とするバイオエタノール生産の動向と将来展望 仲田と坂(京大)
 アジア各国におけるエタノール導入状況の報告。
O401 木質系バイオマスからのエネルギー物質生産システムにおけるガス化−液体燃料合成プロセスの検討 藤本ら(産総研)
 BTLプロセスのプロセス計算。必ずしもエネルギー自立型が高効率ではない。
O402 バイオマス利用への現実的シナリオについての考察 堀尾と野田(東京農工大)
 地域に実効的なバイオマスを導入する方策として、地域の状況を理解し、同時に地域に理解を深めてもらう方法論の提案。
O403 適材適所のバイオマス・インダストリー・コンプレックスの構築を目指して−農学の視点から− Jinと飯山(東京大)
 バイオマスの組成、構造を踏まえたカスケード利用例の提案。

特別講演 座長:山地(東大)
我国の新エネルギー政策とバイオマス
 総合エネルギー調査会としてのバイオマス導入への期待を紹介。京都議定書対策として、
バイオマス熱利用を進める必要性とマイクログリッドの可能性について紹介。

以上です。


<第2日目>
2006年1月17日、18日と東京の東京大学安田講堂において第1回バイオマス科学会議が開催されました。

昨日のメモに引き続き、以下に2日目の口頭発表の内容について報告させていただきます。なお、ポスターについては各座長から報告いただく予定です。

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資源 座長:吉田(森林総研)
O102 建設廃木材に含まれる化学物質 −処理の種類と使用薬剤− 山崎ら(北海道立林産試験場)
 建設木材に対する各種処理とそれによって含有される薬剤のレビュー。含有の確認には赤外(携帯式あり)や蛍光X線など。
O103 資源作物「ヘンプ」のカスケード利用モデル 赤星と舟山(バイオマス産業社会ネットワーク)
 ヘンプの各部分を適切に利用して全体として経済性の出せるシステムを構築する可能性を検討。
タイトルの「カスケード利用」は「バイオマスの適材適所利用による全体利用」の意味。
バイオマス・ニッポンの用語の使い方としてはむしろ「バイオマス・リファイナリー」に相当。
O104 中山間地域における森林バイオマス資源の長期的な利用可能性 有賀他(宇都宮大、日本大、東京大)
 森林資源を搬出、利用するコストを詳細に検討。路網整備でコスト低下、林家の合意が必要。
O101 山林放牧による資源採取の最大化:直接採食と木質爆砕飼料化との相補システム 佐野ら(地球エネシス、産総研、近畿大)
 山林放牧で、2年目以降は家畜が飼料とする部分がないので柴相当部分を回収、爆砕して飼料とする提案。

政策 座長:藤野(国立環境研)
O501 バイオマス産業社会のアプローチ 岡田と泊(バイオマス産業社会ネットワーク)
 バイオマス産業社会のコンセプトについての紹介。
持続可能性が重要だが、持続可能性には、経済的、社会的、環境的な側面も含めることが必要。
O502 ペレット温故知新−木質成形燃料工業の発展と課題− 小島(鳥取大)
 石油ショック後のペレットの導入と衰退を踏まえ、ペレットが定着していなかった実態を確認。
O503 山梨バイオマス社会ビジネスモデル4 鈴木(山梨大)
 山梨大学のバイオマス活用による持続可能な社会づくりのためのモデルを提案。
大学として教育と研究に止まらない地域との連携を模索。
O504 日本の森林の有効利用―地域経済における政策、方向性提案― 
泊ら(バイオマス産業社会ネットワーク、テクノバ、荏原製作所、鹿島建設、広島大)
 エネルギー学としての日本の森林の有効利用検討の一環。バイオマスの利用には、地域の特性を生かしたシステム構築が重要。各種課題を踏まえ、関連法律整備、地域へのメリット、マーケティングシステムなどを。

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パネル討論会「バイオマス温故知新:ブームから本流へ」
 コーディネータ:横山伸也(東京大)
 パネリスト(各15分講演、木谷、熊崎氏の後一度質疑応答)
  木谷(日本大)、熊崎(岐阜県立森林文化アカデミー)、藤本(農林水産省)、泊(バイオマス産業社会ネットワーク)、坂西(産総研)
(パネリスト講演)
木谷:「バイオマス技術開発と科学の発展」 バイオマスに関する技術開発の概観を行う。
ブラジルの国家アルコール計画がうまくいった理由として十分な技術の蓄積と社会経済環境が重要。
今後、技術の常識を科学で修正することが求められる。

熊崎:「木質エネルギー 回顧と展望」 これまでの木質バイオマスの利用を振り返る。従来型、改良型、近代型の利用を整理。
産総研の言う、悪夢の時代には既存技術の改良が進んでおり、木質バイオマスもこの状況か。


(質疑応答)
Q:ブラジルの成功要素のひとつである社会経済環境について、これがどこまで変われば日本でもバイオマスが利用?
 (木谷)国を挙げての継続的なサポート体勢が必要。ブラジルは1930年代から一貫して続けてきた。

Q:海外バイオマスの扱いはどうだったのか
 (木谷)エネルギーについては大量のため市場メカニズムによる。海外、国内の差別化はない。同じ質なら安いものが入るのが当然。

Q:ペレットよりチップと思っていたがどうか、また、チップの規格は?
 (熊崎)ニッチ市場で、チップを軸とした中山間地での利用を広げるのが戦略。チップの規格は3通りある。


(パネリスト講演)
藤本:「『バイオマス・ニッポン総合戦略』の見直し」バイオマスをどのように導入するかに腐心している。
地域のバイオマスを使ってどのように「食えるシステム」を構築するかが鍵。

泊:「バランスの取れた持続可能なバイオマス利用推進」 経済的、社会的、環境的に持続可能なバイオマス利用が必要。
方向性として、農山村地域の持続可能な発展の中心と都市部での廃棄物や輸入バイオマスの利用が考えられる。

坂西:「バイオマスエネルギー研究開発における産総研の取り組み」 昨年産総研バイオマスセンターが発足、
2005年〜2009年は中期計画の中でエタノール+ETBE、トータルBTLディーゼル製造技術、シミュレーションによる経済性評価を進める。
バイオマス10への挑戦を進める。


(質疑応答)
Q:チップの規格にはパルプの規格もあり、これを含めていく必要もあろう。食料との競合については、
米作のできない地域のあることも考慮すべき。
(泊)資源作物を全否定している訳ではなく、持続可能な形とすること、非可食部の利用が重要。

Q:木質については、中国の紙の使用量が増加しており、今後状況が変わることもあり得る。
 (熊崎)燃料用、紙、ボード用の棲み分けを考える必要があり、パルプは品質の良い物が求められるので使える部位は限られる。

Q:学に何を期待するか。
 (藤本)個別の分野に詳しいだけでなく、隣の分野のこともわかり、これを素人にもわかりやすく説明することを。
逆に、政府に何を求めるかを聞きたい。
 (泊)役に立つ学であってほしい。現場をみないで単純な画一モデルを作ることなどはバイオマスの実状に合わない。
税金を使う責務を果たせ。

Q:補助金や助成などを求める声は強いが、これは社会負担になる。どう考えるか。
 (泊)社会負担が少ない方が良いのは当然。現在の予算の用途の改変、台風や水害の機会コストの転換などを考えるべき。

Q:バイオマスの導入にビジョンが必要では?
 (坂西)各地域の特性を生かした小さくても経済性のあるシステムを積み重ねて導入へもっていくのではないか。

Q:悪夢の期間を乗り越える戦略は?
 (熊崎)新技術がないとダメ、と考えず、できる技術でしのぐこと。

Q:BTLといってもガス化とGTLで後者はある。他の分野の技術の積極的利用が必要では?
 (坂西)エネルギー産業との連携は進めていく。

Q:ビジョンの前にCO2削減、持続可能というミッションがあるべき。持続可能を踏まえて、ミッションの明確かを。
 (泊)生態系という足もとを削ることなく生活を向上させる。このためにはより広いビジョンを持ってバイオマスを考えることが必要。
欧州のアムステル条約のように、日本でもバイオマスニッポンの前に持続可能な日本ビジョンがあるべき。

Q:バイオマスタウンの改訂にあたり、自給率を高める視点を入れてほしい。
 (藤本)具体的にどうしろということは言わない。各地域のアイディアをいかす制度である。

Q:全体を含めて木谷先生から一言いただきたい。
 (木谷)バイオマスは多面的かつ多様であり、非常に複雑な系であるので、一研究組織だけでは限界がある。
もっといろいろな専門分野の融合が進み、広い目で見られる成果につながることを期待。


(コーディネータコメント)
ここまでの議論の実現には人材が大切であり、学融合、システム、法律、マーケティングでキーパーソンはいるが一人でできることでもない。
学融合、情報共有を進めて、人材育成に貢献をできる活動が求められる。
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ポスター賞授与
 以下の3名に山地部会長からポスター賞が授与された。
 P411 八木と中田(東北大)「資源分布を考慮した木質バイオマス発電の経済性評価」
 P237 柿薗(広島大)「微生物燃料電池を用いるバイオマスから高出力発電法の開発」
 P213 吉田ら(広島大)「エタノール発酵のためのリグノセルロースにおける水熱前処理の最適条件の決定」

閉会挨拶
 山地部会長から閉会の挨拶があった。


今回のバイオマス科学会議は、1会場で講演を行いましたので、講演件数には制限がありましたが、
全体を通してバイオマスの研究を俯瞰できる意味で有効だったと考えています。
また、報告には含めていませんが、各セッションの最後に総合討論があり、
その分野での意見や考え方を整理するのに有効でした。
ポスターセッションに前半各自2分〜5分の説明時間をおくことで、こちらもかなり充実して聞くことができました。
個人的には、バイオマスをどのように学に落とし込めるか、
あるいは学としてのバイオマスの方向性を模索する機会となればと考えていたのですが、
技術開発へのより深い化学工学等の適用、資源生産・利用・変換にあたっての生物学的な知見の適用、
導入・システム・政策における評価技術の確立、といった方向性を感じています。
また、パネルで藤本様からいただいた「全体を俯瞰した形での学」、
泊様からいただいた「役にたつ学」、木谷様からいただいた「分野間の学融合」という視点は今後も重要かと思います。

最後に、部会幹事としてご協力いただきました皆様に感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

以上です。