広島大学産学連携センター知的財産部門
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知的財産権Q&A50

Q1  「産業財産権法」で保護される対象には、どのようなものがありますか?

「産業財産権法」で保護される対象には、以下のものがあります。
〔産業財産権法〕 〔保護する対象〕
 特許法・・・・・・・・・・・・・・ 「発明」
 実用新案法・・・・・・・・・・ 「考案」
 意匠法・・・・・・・・・・・・・・ 「意匠」
 商標法・・・・・・・・・・・・・・ 「商標」
 不正競争防止法・・・・・・ 「信用と技術的ノウハウ等」
 著作権法・・・・・・・・・・・・ 「著作権、プログラム等」
 回路チップ配置法・・・・・ 「半導体回路チップのパターン配置

【参照事項】
発明: 自然法則を利用した技術的思想の創作。物の発明と方法の発明の2つがある。
考案: 物品の形状・構造またはこれらの組み合わせ。だから、「方法」は該当しない。
意匠: 物品の形状、模様もしくは色彩、またはこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるもの。平たく言うと「物品のデザイン」ということ。
商標: 文字、図形、記号もしくは立体的形状、もしくはこれらの結合、またはこれらと色彩との結合。簡単に言うと、商品やサービス業務につける「ネーミング」や「ブランド」(マーク)ということ。

Q2  特許権、実用新案権、意匠権、商標権には、どのような違いがありますか?

1.特許権:

自然法則を利用した、新規かつ高度な発明に対して、出願から20年間の独占権が与えられるもの

2.実用新案権:

物品の形状、構造、組合せによる考案に対して、出願から6年間独占権が与えられるもの

3.意匠権:


視覚を通じて美感を起こさせ、独自性のある物品の形状、模様、色彩に関するデザインで、登録から15年間保護されるもの

4.商標権:

商品や役務(サービス)に使用するマーク(文字、図形、記号、立体的形状)を保護するもの


【参考】 〔特許と実用新案、そのアイデアの程度の違いは?〕
 
 特許が対象とするものは「大発明」、実用新案が対象とするものは「小発明」などとも言われてきました。先ほどの定義でいえば、特許の場合では、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、「高度なもの」と、実用新案の場合では、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、「高度ではないもの」といった程度の差になるのでしょう。

 ただし、それはあくまでも条文の中でのこと。実際に登録されている特許と実用新案とで、アイデアの程度を比べてみても、その差は不明確だろうと思います。ここからは高度で、ここからは高度ではない、といった基準があるわけではないのです。
  たとえば、お馴染みの「洗濯機用のクズ取りネット」(「洗濯機の糸くず取り具」)にしても、網袋に吸盤を取り付けただけのシンプルな構造で、特許の権利を得ているのです。

  だから、「特許」にするか「実用新案」にするかは、アイデアの程度の差で決めるよりも、その2つの登録制度のうち、どちらが今後の展開上有利になるかで決めるべきでしょう。
  特許と実用新案の登録制度上の違いについては、《Q10》を参照してください。


Q3  特許を取得するまでの手続きの概略は、どのようなものですか?

特許権を取得するまでの手続きは、以下のような流れになっています。
出願書類の準備
  ↓
特許出願
  ↓
方式審査
  ↓
(出願日から1年6ヶ月後)
  ↓
出願公開  →  公開公報発行
  ↓
出願審査請求  →  審査請求がない場合 → みなし取り下げ
  ↓
実 体 審 査
↓  ↑  ↓
      拒絶理由通知
↓  ↑  ↓
     ← 意見書・補正書 → 拒絶査定 → 拒絶査定不服審判請求
                                    ↓ 

特許査定
↓                                   ↓
設定登録  ←   ←  特許審決  ←     ←    審理(審判)            ↓                                   ↓
特許公報発行                           拒絶審決
                                     ↓
                             東京高等裁判所で審決取消訴訟
                                     ↓
                                   最高裁判所

※拒絶査定不服審判の請求期間は、拒絶査定の謄本の送達の日から30日以内 (→《Q37》を参照)

Q4  「出願審査請求」とは、何ですか?

 「出願審査請求」とは、特許権を得るために必要な「実体審査」を受けるために提出する請求のことです。特許出願の日から3年以内に、この請求を行わないと、出願を取り下げたものと見なされます。
  このように、特許庁に出願された特許願は、そのすべてが審査されるわけではなく、出願人または第三者が出願審査請求料を払って、出願審査の請求をしたものに限って審査されるのです。

【出願審査請求についての基本事項】
  • 出願審査請求ができる人: 誰でも出願審査請求をすることができる
  • 出願審査請求ができる期限: 特許出願の日から3年以内
     (平成13年9月30日以前に出願したものは、出願日から7年以内)
      (国内優先権主張出願では、後の出願の出願日から3年)
  • 審査請求費用: 168,600円+(請求項の数×4,000円)
      (分割出願・変更出願には特例がある)
      (国立大学法人は、平成19年3月まで無料。その後は2分の1を負担)
※ 権利化を急ぎたいとき、審査請求をすると優先審査を受けることができる。
   もっと早期の結論を得たい場合は「早期審査」などもある。


Q5  「実体審査」とは、どのような審査なのですか?

 実体審査では、基本的に「特許請求の範囲」が審査されます。明細書は、補助的に審査されます。
 これは、出願された技術内容が、特許権の取得に該当するかどうか、つまり「技術の進歩性」などが考慮され、その特許性が審査されるのです。
以上のことから、「特許請求の範囲」をどのように書くかが問題となります。
明細書は、当業者が発明内容を理解でき、すぐに実施(製造など)できるように、明確に十分に記載しなければなりません

【要点】 〔【特許請求の範囲】の【請求項】とは?〕
ここには、特許の明細書中の、発明が保護されるべき「権利の範囲」が明らかにされている。
 
      〔特許の権利範囲とは?〕
「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」のこと。


      〔【特許請求の範囲】に記載するポイントとは?〕
「発明の構成要件をできるだけ少なくすること」
「できるだけ広い意味をもつ用語や表現を用いること」
「上位概念による表現を心掛けること」

【参考】 〔「特許請求の範囲」の記載は、不明瞭であってはならない〕
 「特許請求の範囲」の記載は、明細書(特に【発明の詳細な説明】)に記載した範囲内でなければなりません。例えば、明細書に「温度が400℃から500℃」と記載したのに、「特許請求の範囲」で「400℃から600℃」と記載することはできません。
 同時に、不明瞭な表現も避けなければならないでしょう。例えば、「・・・を適当に決めて処理する」の「適当に」という部分や、「電気コンロ等で加熱」の「等」などは不明瞭なので、これを明瞭な表現にしなくてはなりません。
 また、出願の単一性を満たさなければなりません


Q6  「出願公開」は、どのように行われますか?

 出願の日から1年6ヶ月が経過すると、その審査段階に関わらず、出願されている特許案件の内容が「公開特許公報」を通して公開されます。
この公開公報をみて、他人がどこまで研究を進めているのかを知ることができます。同時に、どのくらいの企業が興味を持って、研究開発を進めているのかも知ることができます。
そして、公開により補償金請求権が発生します。(→《Q7》を参照のこと)

 ちなみに、国内優先権主張出願では、先の出願の出願日から、そして、パリ条約等の優先権主張出願では、第1国出願の日から、1年6ヶ月で公開されます。
また、分割出願、変更出願で、1年6ヶ月を経過しているときには、遅滞無く公開されます。

          

Q7  出願公開されると何か得がありますか?

 もし、出願公開後(特許権の発生まで)に、実施の権利をもたない者が発明を実施した際には、特許権を取得後にその者から実施料相当額の支払いを請求できるという権利が得られます。これを「補償金請求権」といいます。
そのためには、「出願公開されている」という条件が必要なのです。

【補償金請求権が発生する条件】
  • 出願公開があったこと(※)
  • その特許出願の発明を記載した書面を内容証明郵便で発送する
  • 警告すること

 以上の条件がそろったとき、特許取得後に、特許権の発生前における実施について、補償金を請求することができます。但し、特許にならなかったときは、請求することができません。
 「特許請求の範囲」の記載に変更があったときは、その都度、内容証明郵便を発送し、それについて警告することが必要です。
 この警告も「業務を中止しなさい」というような、強い警告の場合には、反対に損害賠償を請求される恐れがありますので、「貴社の製品は本件特許出願に記載の発明の技術範囲に属すると思われます。ご注意ください」程度のものが良いでしょう。

※ 出願公開: 出願から1年6ヶ月を経過した出願内容が公開公報に掲載され、
          公開されること(→《Q6》を参照)
 
                
 

Q8  実用新案を取得するまでの手続きの概略は、どのようなものですか?

 実用新案権を取得するための手続きは、以下のような流れになっています。

 出願書類の準備
   ↓
   出願
   ↓
 基礎的要件審査
   ↓
  方式審査      ※ 技術評価書の請求
   ↓
  設定登録
   ↓
  公報発行


※ 権利行使をするときには、「技術評価書」を請求しなければならない。評価の内容
   が「登録性なし」との評価を受けたにも関わらず、権利行使をすると、相手方から
   損害賠償を請求されることがある。
    今後の法改正で、実用新案登録が行われたあと、特許に変更できるようになる
   予定あり。

【参考】
  • 〔「方式審査」とは?〕
  •    提出された書類が法に定められた様式に従って作成されているかどうか(これを
  •    方式要件という)の審査をいいます。
  • 〔「方式要件」とは?〕
  •    ・出願手数料が納付されていること
  •    ・個々の書類が法あるいは法施行規則に定められた様式に従って作成されている
  •     こと
  •    ・個々の書類の必要的記載事項およびその内容が正確に記載されていること…etc


Q9  「技術評価書」とは、どのようなものですか?

 審査を経ないまま権利が発生している実用新案は、どうしてもその権利内容が不安定ですので、その権利を行使する前に特許庁から、実用新案の技術に関する評価をしてもらう必要があります。これは、そのための評価書です。

【参考】 〔実用新案権の行使には、大きな責任が伴う!〕
 実用新案権を行使する場合は、前述のように特許庁からの技術評価書を得て、実用新案登録の確実性を確認しなければなりません。
技術評価書には、審査官が調査した先行技術が記載され、それらに基づいて実用新案登録が無効になる蓋然性が高いか否かが記載されます。

 例えば、実用新案登録が無効になる蓋然性が高いのに、実用新案権に基づいて他人の業務を中止するように警告を発し、それに基づいて他人が業務を中止したとしましょう。
 この場合、実用新案権が無効になった場合には、他人が業務を中止したことによる損害賠償を行う必要が出てきますので、その点に注意を払わなければならないのです。


Q10  特許出願と実用新案登録出願において、その制度上の違いには、どのよう
 なものがありますか?

 特許は出願後、実体審査を経て、また出願審査請求が必要ですが、実用新案では、実体審査を経ないまま、出願後数ヶ月で登録が可能となります。
このことから、早期の権利化を望む場合は、実用新案のほうが有利ですが、審査を経ずに権利が発生しているため、特許に比べて、その権利内容が不安定であることは否めません。

【参考】 〔特許と実用新案の権利存続期間の違い〕
 特許権の存続期間は出願の日から20年、実用新案権の存続期間は出願の日から6年なので、両者の権利期間もまた、大きく異なることがわかります。
ちなみに、特許を受けたあと、農薬等の認可のために2年以上実施をすることができないことがあります。この場合は、5年を限度に特許権の存続期間を延長することができるのです。
                    

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