広島大学知的財産ポリシー
平成16年2月10日
部局長会議承認
(平成18年4月1日一部改正)
I.基本的な考え方
- 大学の使命・責務と運営方針
大学の基本的使命として、教育,研究に次いで社会との連携がある。地域社会や国際社会に対し、大学の有する知的・人的・物的資源を積極的に開放・活用し、社会と密に連携した継続的なイノベーションによる未来社会の設計と建設に貢献することが、大学の基本的使命の一つとして位置付けられている。
広島大学(以下「大学」という。)は、知的財産として価値の高いものを創出し、適切に管理し、積極的に社会に移転して活用を推進すると共に、教育研究活動を通して、知的財産の重要性についての学内外での意識改革を進め、自ら知的財産重視の模範を示し、これにより、知的財産重視型社会の形成に貢献する。
これまで、大学の教職員や関係する学生など、研究成果を論文発表という形で知識や技術の移転を行うことを最重要の仕事としてきた。これは、今後とも変わりなく重要な仕事であるが、研究成果を直ちに発表する場合、特許その他の知的財産権としての保護が難しくなることを認識しなければならない。このため、研究成果の発表前に、特許出願等の知的財産化のための保護手続きをとる必要がある。特許化するということは、研究成果を公にすると同時に、研究成果の独占的実施権を保有するという両面があり、産業界においては、権利の明確化があって初めて魅力ある研究成果と成り得るのである。研究成果が、社会で幅広く活用されることは、同時に、研究者の社会的評価並びに学内での個人的評価を高めるのみならず、共同研究や受託研究或いは実施料収入につながり、大学や研究室、教員の研究資金を補うものとなる。この意味において、知的財産権の創出は、論文と同等の位置付けであるとの意識を確立し、実践していくことが肝要である。
- 知的財産ポリシーの対象者
知的財産ポリシーの対象者は、大学に雇用されている教員、職員、大学の設備を利用している者等、大学との関係において、大学の職務発明規則に従うことを契約した者(以下「教職員等」という。)とする。大学の学生、大学院生及びポストドクター(以下「学生等」という。)は一般的には大学とは雇用関係にないため、学生等が独自で行った発明は学生等に帰属し、本ポリシーの対象にはならない。但し、教職員等による教育・研究との関連が深く、教職員等の行う学外との共同研究や受託研究に参画する学生等はこのポリシーの対象者となる。
II. 研究成果等に関する取扱いと権利の帰属・承継
- 特許等を受ける権利の帰属
教職員等がなした発明,考案,意匠の創作(以下単に「発明等」という。)のうち、大学から或いは公的に支給された何等かの研究資金を用いて行った研究の成果又は大学の施設を用いて行った研究の成果に係る発明等(以下「職務発明」という。)についての特許・実用新案登録・意匠登録を受ける権利(以下単に「特許等を受ける権利」という。)は、原則として大学帰属とする。
- 発明等の届出と特許等を受ける権利の承継
教職員等は、自己のなした発明等について、職務発明規則に定める手続きにより、速やかに大学に届け出る。大学は、職務発明規則に定める手続きにより、当該発明等が職務発明に属するか否か、当該発明等の登録性(新規性と進歩性)、実用性(産業界での実施の可能性)、有用性(基本特許や原理特許及び産業界との用途開発等の共同研究の可能性等)及び我が国の技術安全保障の観点からの必要性等を勘案し、当該発明等についての特許等を受ける権利を承継するか否かを決定し、その結果を、当該届出のあった教職員等に通知する。
- 発明等の出願
大学が特許等を受ける権利を承継した職務発明については、直接出願、外部代理人への手続き委嘱、或いは、広島TLOや科学技術振興機構の有用特許支援事業等の外部資金の活用等により、合理的な方法で戦略的に国内出願手続きを行う。
又、外国出願する場合には、手続き費用等の投資に対する見返り等の可能性及び我が国の技術安全保障を考慮して決定するが、広島TLOや科学技術振興機構の海外出願支援制度の活用を図る。
- 有体物
(1)有体物とは
対象となる有体物とは、次の(a)〜(d)に該当する学術的・財産的価値があるもの(論文、講演その他の著作物に関するものを除く)をいう。
| (a) |
研究開発の際に創作又は取得されたものであって研究開発の目的を達成したことを示すもの |
| (b) |
研究開発の際に創作又は取得されたものであって上記(a)を得るのに利用されたもの |
| (c) |
上記(a)又は(b)を創作又は取得するに際して派生して創作又は取得されたもの |
| (d) |
上記(a)〜(c)の対象について記録・記載した電子記録媒体、例えば、FD,MT,CD,DVD等の電子記録媒体(データ、理論・法則、コンピュータプログラム、音声、画像、図面等の研究開発成果情報を記録したもの)、又は、上記(a)〜(c)の対象について記載した紙記録媒体(データ、理論・法則、コンピュータプログラム、音声、画像、図面等の研究開発成果情報を記録したもの) |
(2)有体物の利用
有体物を具体的に取扱うにあたり、利用目的に応じ以下のように取扱う。
| (a) |
研究開発のための利用
| (イ) |
大学内における研究開発のための利用は原則自由とする。但し、法令に反する場合、他人のプライバシーを侵害する可能性がある場合、利用者に適切な管理をする能力がない場合、複製できないものの場合、無断で第三者に提供する可能性がある場合等、適当でない場合には利用を認めない。 |
| (ロ) |
第三者による利用の場合の手続きは、教職員等が大学の了承を得て行う。その際、大学と当該第三者との間で、研究材料提供契約(MTA:Material Transfer Agreement)を結ぶ。その手続きは簡素なものとする。 |
| (ハ) |
第三者への提供価格は、原則として実費提供とする。但し、当該第三者と大学との関係等を考慮して、無償又は有償提供を行うことを妨げるものではない。 |
| (ニ) |
有体物の提供を受けた者が、当該有体物を利用して新たな知的財産権等を創出した場合の取扱いについても必要に応じて研究材料提供契約中に予め規定しておく。 |
|
| (b) |
産業利用
| (イ) |
産業利用のための有体物の提供に当たっては、原則有償とし、利用により得られた利益の大学への還元、提供を受けた者が提供された有体物を利用して新たな知的財産権を創出した場合の取扱い等を研究材料提供契約に規定する。 |
| (ロ) |
有体物の産業利用による利益が大学に還元された場合の教職員等への還元ついては、有体物取扱規則に別途定める。 |
|
| (c) |
大学が第三者の所有する有体物を受け入れる場合、大学が、機関として研究材料受入れ契約を締結して有体物を受け入れた上で、当該有体物の受入れに関連する教職員等に保管・利用させ、その状況について把握を行う等により提供機関の権利を尊重した取扱いを組織として担保する。 |
- データベース及びプログラムに関わる著作権並びに回路配置利用権
(1)データベース及びプログラムに関わる著作権
大学においては様々な著作物が創作されている。このうちデータベース及びプログラム(以下、「データベース等」という)については、単独で、或いは特許権との組み合わせにより、技術として利用される可能性が高いことから、大学において作成されたものであって、産業上の利用が見込まれるものについては、組織的な管理・活用を図ることとし、以下のように取扱うこととする。具体的な取扱いについては別途学内規則で定める。
| (a) |
大学から、或いは公的に支給された何等かの研究経費を用いて、大学において行った研究又は大学の施設を利用して行った研究の結果として生じたデータベース等については、学術目的、産業利用目的を問わず、以下の場合に「発明等の届出」に準じて大学に届出を行う。
| (イ) |
当該データベース等を公表もしくは学外に移転する必要が生じた場合 |
| (ロ) |
当該データベース等に関係する発明等について大学に届け出る場合 |
|
| (b) |
上記届出を受けた大学は、以下の項目についての検討を行い、取扱いを決める。
| (イ) |
当該データベース等が職務著作に該当するかどうか(職務著作であれば大学帰属) |
| (ロ) |
職務著作でない場合には、当該データベース等を大学が管理する必要があるか否か(例えば、商業上利用される可能性がある場合、他の知的財産権と共に育成・移転・活用することが適当な場合等が考えられる。) |
|
| (c) |
上記(b)-(イ)に該当する場合には、大学による管理を行う。又、上記(b)-(ロ)に該当する場合には、個別契約により大学が著作権を承継することができる。 |
(2)回路配置利用権
半導体集積回路の回路配置については、回路配置利用権として保護の対象となる。これについては、データベース等の著作権の取扱いに準ずる。
- 著作権
教員や学生等の大学での研究成果を学術論文として発表する場合、その著作権は、当該教員や学生等に帰属する。但し、第三者との契約による研究活動に基づく成果の発表内容と時期は、第三者との契約に基づくが、企業と大学の利害が衝突する場合がある。大学の本来の教育・研究の責務を損なうような契約の場合は、十分に第三者との協議を要する。場合によっては、そのような共同研究は放棄する事も考慮すべきである。又、著作権を出版業者に排他的に譲渡する場合、そこに含まれる内容について、教材としてや電子出版での継続利用の権利を確保しておくことなど検討を要する。大学の管理運営の方針に従って創作された職務著作の著作権は大学に帰属する。例えば、授業内容の概要(シラバス)や、試験問題、コンピュータ支援の教育パッケージや学部ガイドなどがそれに該当する。マルチメディア教材については注意を要する。マルチメディア教材は多様な出所の材料を含んでいるため、その教材を作る教職員等は、他人の著作物を利用する場合には著作権法上の著作者人格権或いは著作権の制限規定を十分に理解し、その利用が、これらの法律上の著作者の権利制限に該当しない場合には、著作権者から適切な同意を得ておく必要がある。大学の企画で作られた教育パッケージ全体の著作権は大学に帰属する。但し、教材として、教職員が作った個人の講義ノート、OHPシートや類似の教材は本人の著作権となる。
尚、マルチメディアに関する著作権については、
(1) 許諾は利用形態ごとに確認する必要がある。
許諾時に想定されていない利用形態で使用する場合には、利用形態ごとに確認する必要がある。メディアのデジタル化に伴い、一つの素材を複数の利用形態で利用する事が容易に実現できるようになった。テレビのインタビューとして撮影した素材は、これまで番組の放映でのみ使用することが暗黙の前提条件であった。番組素材の二次利用、例えばDVDパッケージ化による販売や、インターネットのホームページコンテンツとしての利用等を行う場合には、出演者や著作権者に、利用形態を示して確認を行う必要がある。
(2) 教育機関での特例
営利を目的としない教育機関において、教育の一環として著作物を利用する場合の使用料は、その利用状況等を参酌して決定することになっている。教育機関の特例として、特別な手続きなしに著作物を無料で使用するためには、
| (a) |
「学校教育法の定める学校」が主体となって行う配信である事 |
| (b) |
「教育の一環として」の利用である事 |
| (c) |
「情報料及び広告料等の収入がない」事 |
が条件である。インターネットのホームページにおける合唱コンクールの演奏の配信、学校紹介のビデオのBGMやホームページのBGM等は、上記の特例には該当せず、著作権手続きが必要となる。
(3) 学内での収録物の取扱いについて
新たな形態で利用する場合には、出演者に対して確認を行う必要がある。収録を行う前に、収録物の利用形態を明確にしておくと良い。又、出演者の肖像権も確立されつつあるので、著作権とは別に承諾を得ておくと良い。
III. 知的財産等の管理・活用の推進
- 研究成果の実用化に向けた大学の義務
(1)承継した知的財産の活用に向けた大学の責務
大学が承継した知的財産は、(a)市場性が高く産業側に利用され得るもの、(b)共同研究などに発展していくもの、(c)将来に利用が見込まれる基本特許等があるが、(a)と(b)については、権利譲渡契約やライセンス契約に合わせ、又は共同研究契約に際して、必要に応じて、産学連携センターと広島TLOとの連携で、発明者を実施者側に紹介し、発明に関わる詳細な知識の開示を促すために、教職員や学生等の派遣についての所要経費などの準備を大学と産業側で用意するなどの便宜を与える。(c)は、産学連携又は産学官の連携による応用研究を目指して、発明者と産学連携センター及び広島TLO等との連携によってパートナー開拓を行う必要がある。又、科学技術振興機構との連携による将来的に有望な技術移転先をマーケティングする。
尚、大学が承継した発明等の有効活用を図ることは、発明者等やその関係者の職務にとどまらず、大学の全職員の責務であることを周知し、且つ全職員にも知的財産の有効活用に参画し得るシステムの構築を図るものとする。
(2)ライセンシングの基本的な考え方
| (a) |
ライセンシングは、原則として広島TLOを通して行う。このため、必要に応じて広島TLOに専用実施権の設定や再実施許諾権付通常実施権の許諾を行う。 |
| (b) |
共同研究等のパートナー企業には、優先実施権を付与することができるものとする。 |
| (c) |
相手方が独占的実施権を希望する場合には、独占的通常実施権,専用実施権又は特許権の譲渡を含めて対応できるものとする。但し、この場合には、一定の条件を付して、独占的通常実施権,専用実施権の取り消し、又は特許権の返還を求める事ができるように配慮した契約とする。 |
| (d) |
ライセンスを受けた者が3年間実施しない場合には、ライセンス契約を解除し、第三者に実施権を与えることができるように配慮した契約とする。 |
| (e) |
ベンチャー企業や中小企業等に対しては、必要に応じて専用実施権の設定を行うと共に、ライセンス料をランニングロイヤリティ方式とする等の知的財産権の活用に当たり費用の低減措置をとる。 |
(3)発明者等への報償
知的財産権の実施等に伴う発明者等に対する報償は、ライセンス収入から手続きに要する直接経費を差し引いた残りを財源とし、これを、広島TLO、大学及び発明者等に還元する。その分配比率については、職務発明規則及び技術移転規則等に定める。尚、直接的なライセンス収入の無いケースの多い、クロスライセンスの場合にも、報償を行うべく検討する。
- 知的財産の管理と管理責任
(1)知的財産の管理体制
大学の知的財産管理の最終責任者は学長であり、社会連携担当副学長が実質の管理責任者となり、その下で、産学連携センター長が業務推進責任を負う。このため、大学は、産学連携センターに必要な要員の配置と、調査ツール、管理ツール等の必要な機材の整備を行う。
(2)研究者への知的財産の返還
| (a) |
大学に届出のあった発明等について、職務発明に該当しない発明等や、職務発明であっても大学が特許を受ける権利を承継しないと決定した発明等については、大学は特許を受ける権利を承継しない旨の文書と共に、届出を行った教職員等に返還する。 |
| (b) |
大学に帰属した特許権等であって、大学が、その権利維持を行わない旨の決定をしたものについては、当該特許権等の発明者等の希望により、当該発明者等に返還する。 |
(3)知的財産権の学術目的の利用
大学に帰属する知的財産権の学術目的の利用については、無償を原則とする。著作権等の教職員、学生等の個人に帰属する知的財産権の学術目的の利用については、無償を原則とするが、費用が生じる場合は実費で対価を支払う。学外機関による知的財産権の学術目的の利用についても、同様の扱いをする。このために必要な利用手続きは、産学連携センターが行う。
IV.共同研究・受託研究に伴う権利の帰属とライセンスの考え方
契約に基づく共同研究で扱う知的財産等については、原則として発明者が帰属する機関に帰属するものとし、共同出願の場合の持ち分は、両者の貢献度合いに応じて決定する。共同出願に当たっては、個別に又は相手方と包括的な共同出願契約を締結するものとし、その内容は、共同研究者の利益を考慮し、且つ、個々の案件毎の状況を考慮して、独占的実施権の容認等を含めて柔軟に対応する。又、受託研究の場合には、委託企業の事業戦略を勘案して、特許を受ける権利の譲渡や無償の実施権供与を含めて柔軟に対応する。尚、契約に基づく共同研究や受託研究の他に、多様な学術交流や技術交流等を通して、産業界等の外部機関との連携の中から生まれる知的財産等についても、共同研究と同様の取扱いをする。
V. 教職員や学生等の守秘義務
- 教職員及び学生等は、原則として未公開の学内研究成果についての秘密保持義務を負う。
- 学外第三者との契約に基づく共同研究や受託研究等に従事する教職員等は、契約時に守秘義務の内容、期間等を両者合意の下で定めた秘密保持契約を締結する。この契約が、大学の本来の責務である教育・研究と研究成果の学術論文としての発表の内容や時期等において、当該第三者との間で調整が困難な場合には、共同研究や受託研究等の実施の中断や中止も考えられるので、共同研究契約や受託研究契約又は秘密保持契約の中で、この旨を明記しておく事も考慮しなければならない。
VI. 知的財産等の取扱いに関する異議申立手続きと処理方法
大学における知的財産等の取扱いに関し、権利の承継、権利の機関帰属に対する報償等について、教職員等に異議がある場合には、これを、部局等の長を通して産学連携センター長に申出ることができるものとし、その詳細手続き及び処理機関等については、職務発明規則に定める。
以上
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