シロオビアゲハの雄は吸水行動で取り込んだアンモニウムイオンを使って飛翔筋や精子タンパク質を生合成する。
Honda, K., Takase, H., Omura, H., Honda, H. (2012) Procurement of exogenous ammonia by the swallowtail butterfly, Papilio polytes, for protein biosynthesis and sperm production. Naturwissenschaften 99:695-703. ある種のチョウ−特に若い雄成虫−は水たまりや尿に集まり、吸水することが知られています。これはパドリング(Puddling)と呼ばれる行動で、雄チョウは基質から金属イオン(Na+)を摂取していると考えられてきました。私たちは「チョウは窒素分を吸収するためにパドリングを行う」と仮定し、シロオビアゲハ成虫に窒素安定同位体15Nを含むアンモニウムイオンや硝酸イオンを投与したところ、アンモニウムイオンを摂取した雄の飛翔筋や精巣内タンパク質(精子や精液)において15Nの取込を確認しました。15Nが取込まれたタンパク質は15N非摂取個体がもつタンパク質と類似のアミノ酸組成を示したことから、チョウは摂取したアンモニウムイオンを使って特定のアミノ酸を生合成するのではなく、全種類のアミノ酸を新たに作り出し、その結果、タンパク質の全体量が増加するのでは?と考えました。この仮説を確かめるため、チョウに通常のアンモニウムイオンを経口摂取させたところ、雄では有核精子数、雌では成熟卵数が増加することを確認しました。成虫が取り込んだアンモニウムイオンは飛翔能力や繁殖能力の回復・向上に役立つと考えられ、パドリングの理由の一つはアンモニア態窒素の獲得にあることを初めて明らかにしました。 この研究は、朝日新聞、中国新聞、読売新聞の紙面で紹介されました。 |
2012年8月14日 朝日新聞大阪本社版朝刊より転載 2012年8月17日 中国新聞朝刊より転載
(朝日新聞社より許諾を得て転載しています) (中国新聞社より許諾を得て掲載しています)