広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2012年度(前期) 第02回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2012年04月27日(金9・10時限,B201)
発表者:高橋祥吾(哲学)
発表題目:「自体的付帯性」に関する一考察
配付資料:A4原稿3枚(両面,6頁)
プロトコル:阿南貴之(哲学,M2)

1.発表要旨

『分析論後書』と『形而上学』において, アリストテレスは「自体的付帯性」という表現を用いている. この一見すると矛盾しているような語句に対しては多様な解釈がなされるが, 大きく次のような仕方で二様に区分される. (1)自体的付帯性を固有性と同義のものとして捉える. (2)自体的付帯性は固有性と同義のものではなくて, そうではなくて, 『分析論後書』一巻第四章において述べられている「自体的」のあり方のうちで二番目の意味で自体的な付帯性である. とするものである. (1) は伝統的な解釈であり, 支持者として, Ross, Hadgopouls, Tricot, Hicks, Bonitz が挙げられる. この解釈は根拠として, 『形而上学』第五巻第三十章において用いられていることが, 同書第五巻十八章において述べられる「自体的に」のうち五番目の意味でのものに相当すること, そして『トピカ』第五巻第一章において述べられる「自体的固有性」の説明と同じであることが挙げられる. しかし『形而上学』第五巻第三十章においては「自体的付帯性」という言葉はもちいられておらず, 「自体的付帯性」が用いられるのは『形而上学』第二巻であり, ここでは付帯性や自体的という語句についての説明はなされていないため, 他の箇所と異なる仕方でこれらの言葉が用いられている可能性は否定できないと発表者は指摘する. (2) は『分析論後書』第一巻第四章において行われる自体的な属性に対するアリストテレスの説明に依拠する. そこで挙げられる説明の一つである「「自体的に」というのは, それら(a) がこれら(b) に帰属するときに, [それら(a) の] 「何であるか」を明らかにしている説明言明のなかに, これら(b) が包含されている限りのもの(73a37-38)」であるとする. これに従った自体的な属性の特徴は, 例えば数に対する奇・遇のように, 諸特性が対立しているものであるという点である. また, この解釈すると, 種差は自体的付帯性の一種となるであろうと発表者は述べる. これら二つの解釈を包括する新たな根拠として発表者は, 『分析論後書』第四巻の, 73b26-32 における「普遍的に」帰属するものについてアリストテレスが論述する箇所を取り上げる. そこで発表者は(1)の解釈での自体的付帯性の例として, 三角形に対する二直角, (2) の解釈での付帯性として, 数に対する奇・遇のような「「自体的に」というのは, それら(a) がこれら(b) に帰属するときに, [それら(a) の] 「何であるか」を明らかにしている説明言明のなかに, これら(b) が包含されている限りのもの」を上げ, これらのどちらも「普遍的に」帰属するものであると述べる. だがしかし, どちらも「普遍的に」属するものであるが, そのどちらの解釈による自体的付帯性以外のものも, 「普遍的」に属しうる. これらのことから, 発表者は「自体的付帯性」を「「普遍的に」帰属するものどものうち, 基体の本質を明らかにしないもの」であると結論することを, 本発表の暫定的な結論とした.


2.質疑応答

[問]アリストテレスが2Aの方をより意識していたと考えるのはどうしてか?

[答]ギリシア語の語形変化によって意味の変化があるか否かをどう考えるか, などという問題があって、すぐには答えられないが, 内容の中でそう方向づけられているように読み取ったため.

[問]第一番目の解釈で, なぜ固有性ということになるのか, もっと詳しく教えて欲しい.

[答]固有性の定義は『トピカ』を見よ. 実体を指す名称と, 固有性, 自体的付帯性は同様に同じ外延を持つことから自体的付帯性は固有性と言われる.

[問]自体的付帯性の解釈を明らかににしたときに, アリストテレス解釈に変化はあるのか?

[答]付帯性の定義に当てはまらないような付帯性といわれているものについての説明ができるようになるのではないかと思われる.

[問]普遍的に帰属するものは自体的にも帰属するというのは具体的にどういうことか?

[答]2Rはすべての三角形に帰属するということから, “普遍的に”という. 他の例がないのでどうしていいか分からない. 外延が一致するということは“普遍的”であるということかと.

[問] Plato 等は自体的付帯性という表現を用いているのか?

[答]付帯性という表現はアリストテレスが用い始めたので, Plato は論じていない. アリストテレス以降には, 不可分離的付帯性と自体的付帯性の区別がつかなくなっているので, 後代にどのように自体的付帯性が解釈されていたかが問題になる. Aristotle はこの二つを明確に区別していると思われる.

[問]「実体の中にない」とはどういうことか?

[答}「何であるか」を示すものの中にないということである.

[問] 数の奇遇は種差で, 雌雄はそうでないというのは, どのような基準で種差か, そうでないかがわけられるのか?

[答] Aristotle はそのように例を挙げるが, なぜかははっきりとしない. しかし, 論点先取的な述べ方になるが, 雌雄は動物を種へとわける性質ではないので, 種差ではない.



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