比較論理学プロジェクト研究センター/第2回研究会

発表日:2003年9月30日(火)
場所:大会議室
発表者:岡崎康浩(広島県立高宮高校教諭)
発表題目:ウッドヨータカラにおけるインド論理学の展開
配付資料:B4用紙5枚(レジュメ)
時間:発表 15:00〜15:50
   質疑 15:50〜16:30
司会:本田義央(インド哲学・助手)
プロトコル作成:江崎公児(インド哲学・博士課程後期1年)


発表要旨

 まずニヤーヤヴァールティカが置かれている歴史的文脈を先行研究に基づいて考察。 その中でウッドヨータカラが、仏教論理学などの攻撃からニヤーヤ学説を擁護するこ と を目的とし、彼等に強力な攻撃を浴びせながらも、時にはそれらの学説を取り入 れ、ヴァイシェーシカ の存在論との統合をはかりつつ、新たなニヤーヤ学説の再編 を図ろうとする姿が明らかになった。特に、推理と論証の関係を彼の論理学の枠組み として考察。ウッド ヨータカラがヴァーツヤーヤナなどの先行ニヤーヤ学説に忠実 であり、ディグナーガの「自己のための推論」、「他者のための推論(=論証)」と いう区分とは一線を画していることが明らかになった。
 次に、ウッドヨータカラが属性と基体の関係に基づき推論を分析する際に、属性を 「肯定」「否定」「独立」の観点から分類し、「否定されるもの」も属性の一つとし て認めたことを指摘。さらに、ウッドヨータカラが因の三相説を批判的に継承しなが ら、ニヤーヤの推理、 論証の理論の中に読み込んでいったことを確認し、それらを 統合した概念がavyabhicaaraであって、それは後世の遍充概念に極めて近いものであることを指摘。 また、ウッドヨータカラ の16句因における妥当な証因の条件に ついての一つの可能な仮説を記号論理学的解釈を用いて提 示。さらに、そこで妥当 な証因とされた「背離関係による証因」の特異な形式に着目し、『ヴァール ティカ 』における実例を網羅しながら、その論理構造を考察し、「背離関係による証因」が 否定される属性から否定される属性への推理、論証であると結論。
 最後に、ヴァールティカにおいて「背離関係による証因」と同義とされるアヴィー タ の歴史的展開を考察し、古典サーンキヤからディグナーガの批判を経てウッドヨー タカラの理論に至 る道筋を方向付けた。


質疑応答(摘要)

問:インド論理学において、「推論と論証」、「演繹と帰納」はどのような関係にあ るのか?
答:推論に関しては、先天的(ア・プリオリ)に正しさが認められているから、その 意味では演繹的な要素があると考えられる。また、論証に関しては、現実の具体的な 事例において吟味するのであるから、その意味では帰納的な要素があると考えられる かもしれない。しかし、文献的な根拠が薄いため、今の段階では断定不可能である。

問:発表者は、推論対象となる属性(dharma)を肯定される(vidhiiyamaana)属性・否定される(pratis.idhyamaana)属性・独立した(svatantra)属性という三つに分類しているが、その内の否定される属性とvyatirekinは同じものなのか。
答:aviita / aaviitaの定義からすれば、両者は結び付くのではないかと考えられる。

問:発表者による、ウッドヨータカラの論理学の分析に関して、量化(quantification)と「dharma-dharmin」関係のコンセプトは矛盾するのではないか。
答:dharminを個体変項として捉えれば問題はないと考えている。しかし、全ての場 合に妥当するわけではないことには注意する必要がある。

コメント:議論を通して、西洋とインドの論理学の伝統で育まれた「術語」の類似性 と差異性、インドにおける独特の論理概念の存在が明らかになった。

以上