広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2006年度(前期) 第4回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2006年5月19日(金9・10時限,B201)
発表者:李宰炯(インド哲学,D1)
発表題目:非存在の非実在性に基づく因果関係否定の論理-- VP3.3.66-81を中心に--
配付資料:A3原稿4枚(両面)
プロトコル:松岡寛子(インド哲学,D1)

1. 発表要旨

インドパ−ニニ文法学派を代表する文法学者・言語哲学者であるバルト リハリ(世紀5世紀頃)によれば,非存在は日常的言語活動のレ ヴェルにおいては二次的存在性,すなわち概念知に浮かび上がる形象形 象としての存在性を持つと認められる.しかし,形而上学的考察のレ ヴェルにおいては,非存在は一切の存在性を持たない非実在であると規 定される.非存在が非実在であることから,存在の生じる以前の状態と 滅した後の状態(=非存在)はそこに原因が地歩を占めることができな いものであると考えられる.ゆえに,存在が原因お作用を通じて生じた り,滅したりすることはない.このように存在は生じたり,滅したりし ないものであるが,驚くべき作用を通じてあたかも原因の作用によって 生じて滅するものとして顕われる.


2. 質疑応答

[問] 「真実在であるブラフマン」(p.1)とは何か?

[答] 現象界に存在するすべての事象の背後に真実在としてある もの,それ自体が持つ能力を通じて現象界の様々なものとして顕われる もの,しかし現象界にあるものを対象とする言語表現とか概念知によっ ては把握できないもの,それがブラフマンである.

[問] 「一次的存在性=存在するもの」と捉えられるか?

[答] 二つのレヴェルを区別して考える必要がある.まず,言語 活動のレヴェルに於いて,「一次的存在性」とは概念知に浮かび上がる 対象(=二次的存在性)に対して,外界に存在する対象を意味する.一 方,形而上学的考察のレヴェルにおいては,「一次的存在性」とは外界 対象であれ概念知に浮かび上がるものであれ現象界に存在するもの統べ て(=二次的存在性)に対して,現象界の背後にある単一な真実在であ るブラフマンを意味する.

[問] 「単一なもの」が「多様なものとして顕れる」(p. 8)とはどういうことか?

[答] 単一な実在がそれ自体の本質を失うことなく,区別を装う ことを通じて多様で,真実ではない他者の相を受け入れることが多様な ものとして顕われること,すなわち仮現である.

[問] 因果関係が機能するのは,言語活動のレベルにおいてで あって,形而上学的考察のレベルにおいて成立しないのは,なぜか?

[答] 言語活動のレヴェルに於いては非存在は二次的存在性,す なわち概念知に浮かび上がる形象という存在性を持つものとして認めら れるから,その非存在に対して原因が地歩を占めることが考えられる. しかし,形而上学的考察のレヴェルに於いては,非存在は一切の存在性 を持たない非実在であると考えられるから,原因がそれに地歩を占める 足場がないものである.ゆえに,形而上学的考察のレヴェルでは因果関 係が認められない.




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