広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2007年度(前期) 第4回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2007年5月18日(金9・10時限,B253)
発表者:江崎公児(インド哲学)
発表題目:ウダヤナの仏教観について
配布資料:A3用紙2枚(両面)
プロトコル:杉本桂子(インド哲学,M1)

1. 発表要旨

 ニヤーヤ学派のウダヤナ(約11世紀)が激しく仏教徒を批判し たことはよく知られているが,ウダヤナ自身が仏教に対してどのような 見解をもっていたのか,ということについては案外よく知られていな い.興味深い事に,彼は仏教批判を主題とする『アートマ・タット ヴァ・ヴィヴェーカ』第四章の末尾において,何故仏教徒達が仏教聖典 を受容するに至ったかのかを,八つの場合に分けて説明している.ま た,同様の議論が,『ニヤーヤ・クスマーンジャリ』第2篇第3 詩節に対する自注部分においても見られることも注目に値する.

 本発表では,まず『アートマ・タットヴァ・ヴィヴェーカ』にみられ るウダヤナの仏教観の一端を整理して提示した.

 ウダヤナによると,仏教聖典を受容するに至った者達は以下の八種類 である.

  1. 怠惰で臆病な者達
  2. ヴェーダ学習の資格を持たない者達
  3. 飲食物に関する区分を無視する者達
  4. 悪しき論理に習熟する者達
  5. 異端と正統の区別をしない者達
  6. ヨーガの実践を誇る者達
  7. ヴェーダ社会に対する適性を持たない者達
  8. 詐欺師に騙された者達

2. 質疑応答

[問]ウダヤナによると,ダルマキールティやプラジュニャーカラグプ タは上記(2)ヴェーダ学習の資格を持たない者達であるが,彼 等はシュードラだったのか.

[答]ウダヤナがなぜそう考えたのかについてはわからないが,実際に は,彼等はバラモン出身であったはずである.

[問]ヴェーダ聖典は飲食物に関する規定が仏教聖典より厳しいのか.

[答]少なくとも,ウダヤナ自身はそう考えていたように思われる.特 に肉食に関しては仏教聖典の規定はヴェーダ聖典のそれよりも緩いと考 えられる.

[問]直前の問いと関連するが,ウダヤナは仏教の律蔵文献までも目を 通していたのか.

[答]決定的なことは言えないが,おそらく否ではないか.

[問]異端と正統とは何か.

[答]この文脈では,ヴェーダ聖典の権威を認める者が正統であり,認 めないものが異端である.





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