広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2011年度(前期) 第05回b
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2011年06月10日(金9・10時限,B201)
発表者:高橋祥吾(哲学,D3)
発表題目:アリストテレス『トピカ』における「真に述語付けられること」について
配付資料:A4原稿6枚(両面,11頁)
プロトコル:高橋祥吾

1.発表要旨

 本発表では,アリストテレスが「真に述語付けられる」という語を『トピカ』の中でどのような状況で使用しているのかを検討する.

 『トピカ』の中で「真に述語付けられる」という語は第4巻から第7巻までで,14箇所見出される.そのうち,第5巻とそれ以外の巻で,傾向が異なる.第5巻での使用は,「言明が真に述語付けられるところのものに,名もまた述語付けられなければならない」あるいは,「名が真に述語付けられるところのものに,言明もまた述語付けられなければならない」という形で用いられる.しかしながら,第5巻では,「真に述語付けられる」という語と「述語付けられる」という語の区別が明確ではない.第5巻では,「述語付けられる」と同じ意味で使用されていると考えられる.

 その一方で,第5巻以外の箇所では,問答法との関係で特徴的な用いられ方をしているように思われる.第6巻でのアリストテレスの説明によれば,「真に述語付けられる」ということは,「「真である」と言うこと」であり,「「帰属する」と言うこと」に結びつけられている.問答の場面において,問答の相手によって提出された命題は,真であるか否かについて,問答をしている両者の間で同意が形成されていない.応答する側には,問答の相手によって提出された命題を真であるかどうか吟味する必要が生じる.「真に述語付けられる」という語は,問答の相手が提出した命題を吟味,破棄する場面において用いられている.逆に命題を構築する場面では,「真に述語付けられる」という語は用いられることはない.


2.質疑応答

[問] 「恒常的固有性」,「一時的固有性」は,発表中に説明があったが,「自体的固有性」,「関係的固有性」,についてはなかったが,これは二つは如何なるものか.

[答] 「自体的固有性」は, 「恒常的固有性」のように常に固有性であるだけなく,常に全称命題の形を形成する.「恒常的固有性」は個別的なものについての場合にも該当する.「関係的固有性」は,他のものとの関係に限り,固有であるもののこと.「一時的固有性」とは異なり,一時的な関係ではなく,全称的であるものが考えられている.

[問] 固有性を構成する条件の一番目と二番目の条件についてより詳しく説明して欲しい.

[答] 一番目の条件「すべてのものに真に述語付けられるかどうか」とは,「名に真に述語付けられるものに,言明もまた真に述語付けられる」ということであり,記号化すると(x)(Ax→Bx) (Aが名で,Bが言明に相当する)となる.二番目の条件「その限りで真に述語付けられないかどうか」は,「それだけに帰属すること」であり,「言明に真に述語付けられるものに,名もまた真に述語付けられる」ということである.記号化すると,(x)(Bx→Ax)に相当する.

[問] 「真に述語付けられる」という場合,個物に述語付けられる場合が考えられるのではないか.

[答] そのように考えることができるのではないかと思われたが,それを実証する記述は見出せなかった.

[問] 「時に動き,時に静止するもの」が「動物」の固有性でないとはどういう意味か.

[答] 「時に動く」と「時に静止する」にわけ,「動物」に「動く」と「静止する」が常に帰属するわけではないという点で,固有性ではない.

[問] トポスとは何か?『トピカ』とトポスとの言葉の関係は?

[答] トポスは,ここでは問答における議論の論拠を意味する.もともとは「場所」などの意味.『トピカ(topica)』は形容詞topicosの中性・複数形を書名にしたものである.

[問] 第5巻が偽作であるという研究の信頼性はどの程度あるのか.

[答] 書評などで,この研究は信頼できるものという評価があるが,発表者は現在のところ,まだコミットしていない.

[補足] 他,表現の問題などに関する指摘があった.



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