広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
(仮設Webページ)


哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2004年度 第6回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2004年6月3日(木7・8時限,B102)
発表者:片山由美(インド哲学,B4)
発表題目:サウンダラナンダの研究 パーリ仏典におけるナンダ伝を通して
配付資料:A3原稿3枚(表裏)
プロトコル:片山由美(インド哲学,B4)

1.発表要旨

 アシュヴァゴーシャ(馬鳴)の代表作『サウンダラナンダ』の主人公であるナンダ についての記述をパーリ仏典におけるナンダの記述と比較し,検討するのが発表の要 旨.パーリ仏典は,律蔵の『ダンマパダ』,『ダンマパダアッタカター』,『ウダー ナ』,『ジャータカ』,『ニダーナカター』等を用いた.
 まず,それぞれの文献の特徴を整理し,次にナンダに関する記述の要約をした.そ して,それぞれの,パーリ仏典におけるナンダ伝の比較をして気づいた点は,『ニダー ナカター』のナンダの結婚式の日にブッダが無理やりナンダを出家させるという記述 が,『ジャータカ』や『ダンマパダアッタカター』と一致していことである.『ウダー ナ』についてはナンダが出家してから話が始まるので出家前の記述はない.また,『 ニダーナカター』は出家後の記述がない.
 さらに『サウンダラナンダ』において,今回取りあげたパーリ仏典と比較すると, ナンダが修行に専念できず,ブッダに天界に連れて行ってもらうストーリーは『ダン マパダ・アッタカター』や『ジャータカ』や『ウダーナ』と一致する.しかし,天女 はアプサラスが登場し,盲目の雌ザルが描かれており,パーリ仏典にみられる誇張表 現はされていない.
 また,『ジャータカ』や『ニダーナカター』と同様にナンダの妻が出て来る.しか し,名前はジャナパダカリヤーニではなく美女スンダリーとして描かれている.パー リ仏典では,ナンダと妻の結婚の記述がでてくるが,『サウンダラナンダ』にはみら れない,そのような違いがあった.
 今後は,テキストは4章に続いて5章のナンダの出家の場面を読み,出家について 考察する.また同時に,今回の発表では扱えなかったナンダに関する様々な文献にあ たって,それぞれの文献でどのようにナンダの出家の場面が描かれているかを中心に 考察する.


2.質疑応答

[問] 情欲が侵入するとあるが,情欲は内から生じるものではないか.
[答] 情欲とは,煩悩である.仏教的な考えでは,煩悩は流れ込むと表現する.今後, 漏入について調べる.

[問] パーリ仏典と『サウンダラナンダ』が,相互に影響しあっていたと予想されう るとはどういう意味か.
[答] パーリ仏典は比較的古いものが多いから,『サウンダラナンダ』の構想の手が かりなったと思われるが,『サウンダラナンダ』よりも,後に書かれたものもあるの で,一方通行ではなく,その逆も考えられるから.

[問] 『ウダーナ』の愚痴と無知は違うのではないか.
[答] 原語は等しい(今回は翻訳しか見てなかったのでミス).三毒の一つの痴のこと.

[問] 『ブッダチャリタ』では,ナンダは脇役であるのに対し,『サウンダラナンダ 』では,ブッダが脇役になるのはなぜか.インドにおけるナンダの位置付けは.
[答] 『ブッダチャリタ』は仏伝でありブッダの生涯を描いたものである.ここでは, ナンダが大きな役割をした記述はない.一方,『サウンダラナンダ』では,ナンダが 煩悩に満ちている在家者の代表のように描かれており,ブッダの導きによって出家し, 阿羅漢になる.今後その過程の行についは研究する.

[問]ナンダが感覚器官の制御において第一とは.
[答] それぞれの弟子の特徴を示すのに,〜第一という表現が用いられ,南蔵大蔵経 には,ナンダは守護根門第一,行における第一と書いてある.今後もっと調べる.

[問] 文学作品と仏典を比較する意義は.
[答] 仏教における聖典は大蔵経である.今回はその中の律蔵から,ナンダに関する 記述のあるものを取り上げた.一方,サウンダラナンダは詩人であるアシュヴァゴー シャが書いた,文学作品であるので,ジャンルが違う.しかし,口伝なり,記述でナ ンダ像をとらえているはずなので,それを探るのが今回の発表の目的.




戻る→ 哲学・インド哲学「論文ゼミ」