広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2009年度(前期) 第8回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2009年06月05日(金9・10時限,B153)
発表者:ブンエイ(哲学,M2)
発表題目:良妻賢母をめぐる中日女性観の比較
配付資料:A3原稿2枚(両面)
プロトコル:加藤良太(西洋哲学,B4)

1. 発表要旨

儒教を起源とする中日両国の「良妻賢母」のあり方は,とりわけ近代以降に,国家の求める女性像を反映し,その相違が明らかになる. 日本の場合,その国体観念や家族国家観を反映し,女性は家庭の内で,家事と育児に注力する事を通じて,間接的に国家に貢献するのが求められていた. 中国の場合も「良妻賢母」の理念の下で,確かに女性は,時代を担う子供を生み育てる役割が求められているのではある.しかし強調されるべきは,半植民地化という国家の危機的状況を反映し,男性と同じように,女性自身も知識や学問を身につけ,救国の志を持つことを通じて,国家に直接的に貢献することもまた,求められたことである. このことは,「良妻賢母」という思想の強化に伴って,日本では家庭婦人としての主婦が登場したが,一方で中国では,秋瑾のような女性革命家が登場したことからも窺える. そして,より積極的に社会への参与をしようとする,現代中国の女性の生き方も,この「良妻賢母」観の影響であると思われる.


2. 質疑応答

[問]中国の場合にしろ,日本の場合にしろ,近代以前は母親が積極的に子供のしつけに関わらないならば,誰がその役割を担ったのか.

[答]中国であれば,前回発表したように,母子一体観に立ち,母親も子供のしつけに参与する部分が無いわけではない.しかし日本の場合は,特に武家社会において見られるように,子供の教育は父親によって為される,というのが一般的である.

[問]民族意識とは何か.

[答]結語においても記したように,半植民地という亡国の危機に臨んだ際に,そのような状態から脱する,つまり,国を救わんとする意識である.女性の場合,それは一般的には,母として,時代を担う優秀な子供を生むことによって体現された.

[問]儒教社会とは何か.そして,その社会に男尊女卑が見受けられるのか.

[答]儒教思想を通じて国を治めることである.例えば,生活規範や,儀式典礼に関すて儒教の教儀である,「礼」や「楽」のあり方を政治制度に応用し,統治体制を固めることである.そして,男尊女卑というのも,その一環である.

[問]古代社会が儒教社会である,とするならば,漢代以降のテキストのみを参考にするのはなぜか.

[答]先秦時代からの儒教の変遷も確かに問題ではあるが,しかし儒教の初期においては男尊女卑的傾向は無く,漢代になって国家の統治に利用されるようになってから,男尊女卑的傾向を持つようになったので,今回は漢代以降の資料を用いたのである.

[問]「胎教」,「母教」とは何か.

[答] 「胎教」とは,次代の富国強兵を支える子供を生む存在として,母親の健康を維持することであり,一方で「母教」とは,母親が子供を育て,教育するために,その知識を身につけることである.

[問]陰陽説と男尊女卑の関連はどのようなものか.

[答]陰陽説によれば,男は陽,女は陰である.一方で,陰は,陽に従わなければならない.そのことから,女は男に従わなければならない,という男尊女卑の考え方が生じてくるのである.




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