広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2008年度(前期) 第11回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2008年07月04日(金9・10時限,B253)
発表者:服部美香(西洋哲学,B3)
発表題目:パラケルススを調べるにあたって
配付資料:B4原稿3枚(片面)
プロトコル:光岡沙衣子(西洋哲学,B3)

1. 発表要旨

  パラケルススは医師であったが,現代では自然哲学、錬金術的思考が主に取り上げられる.思想としては,大宇宙としての世界と小宇宙としての人間を対応させた世界観をもち,天体の人体への影響を重視している.病気には天体因,毒因,自然因,精神因,神因の五つの原因があるとし,医学における4つの柱として哲学,天文学 ,錬金術,医師倫理をとなえ,万物は硫黄,水銀,塩から成るという三原質説を提唱した.また天体因については占星術的な人間の性質の判断を否定し,秘質を通じて星から出された毒を人間が取り込むこと,天体が各々が管理すべき内臓器官や統制すべき生理現象・病理現象を持つとして人間の病気の原因を説明した.


2. 質疑応答

[問]「錬金術師=哲学者」とはどういうことか.

[答]それらによって宇宙の形について説明できると考えていたという一事に尽きると思われます.

[問]「教条的な医学」「伝統医学」とはどういうものか.またパラケルススはどのように批判したのか.

[答]それまでの医学はギリシアのヒポクラテスや, アラビアのアヴィケンナ, あるいはガレノスを介して間接的に書物を通じて学び, 実験などを行う実証的なものではなかった. ガレノスは解剖を行ったが, 動物に限られていた. パラケルススは書物に頼る医学に失望し, 旅をして各地域の医学に通じる人から知識を得た.

[問]マクロコスモスとミクロコスモスについて, マクロコスモスの中にミクロコスモスがあり, その中にさらにミクロコスモスがあったりするのか, それともマクロコスモスとミクロコスモスの二対応のみか.

[答]マクロコスモスとミクロコスモス, その二つのみで, さらにその中にミクロコスモスがあるといったものではない.ただし, 女性については, アダムからイヴが作られたため、女性が最小宇宙とされている.

[問]秘質,天体因,人間の関係はどのようなものか.

[答]人間は大地の上に立ち, 皮質は空気のように満たされており, また天体をも取り巻いている.天体が悪い位置にあると秘質が毒され, 人間がそれを取り込むことにより病気になる.

[問]Ens astrale, Ens veneniをそれぞれ「天体因」「毒因」などと訳しているが, そのときのEnsはEsseの現在分詞か.

[答]おそらく.

[問]Ensを原因と言う意味で訳しているのか.

[答]脚注の7にあるように訳語は大槻真一郎氏のものを参照した. 他の邦訳ではEnsを実体と訳しているものもある.

[問]神因とはどのようなものか.

[答]病気における神的原因であり, 神の鞭, あるいは罰のようなものである. 天体因と同様適切なときに癒されるのであって, 人間の作用で治癒することはできない.

[問]l.81「古くから知られていた」とあるが, 三原質説はいつごろから誰がとなえたものなのか.

[答]アラビア三原質といって, アヴィケンナの頃からその地方で唱えられていた言説である.

[問]水の中に毒を投げ込んで魚が死んだとき, その原因は毒を投げ込んだ人間であるように, 星が毒を出して人間が病気になる場合, 星が直接人間を毒していると言えるのではないか.

[答]文献にあたってこれから詳しく調べる.

[問]ミクロコスモスは人間だけか. 他の生物はミクロコスモスとは言えないのか.

[答]動物に関して, それらがミクロコスモスであると言うような記述は見つからなかった.

[問]医師としてのパラケルススに興味があるのか.

[答]全般的に興味がある.

[問]パラケルスス研究は盛んであるか.

[答]研究が盛んに行われている思想家である.

[問]パラケルススはペンネームか.

[答]ペンネームである. 当時人文学者の間ではやっていた.

[問]秘質は神と置き換え可能か.

[答]そのように言うことはできない.

[補]真空という概念がないため, 空間を満たす何かが必要になり, 秘質というものをおいたと考えられる. エーテルに近いものと考えてよい.



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