広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2004年度 第14回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2004年7月29日(木5・6時限,B102)
発表者:岡田あゆみ(インド哲学,B4)
発表題目:ローカーヤタ研究
配付資料:A3原稿3枚(A3原稿10頁)
プロトコル:土肥晴美(インド哲学,B4)

1.発表要旨

 ローカーヤタはインドでは一般に唯物論者として受け入れられている. 紀元前30 0年以前にローカーヤタの経典として『ローカーヤタスートラ』が編纂されたと考え られているが, 現存しない. 彼らの思想は批判対象として仏教論理学派やジャイナ教 , 正統派バラモン哲学諸派の文献中で取り上げられており, それらの文献から, 彼ら の思想内容を知ることが出来る.
 ローカーヤタの主要理論は次の7要素に集約される. (1)正しい認識をもたらす 手段として妥当なのは《直接知覚》のみである. (2)地水火風の四物質要素のみが 真の実在であり, 万物はその四物質要素の仮の集合にすぎない. (3)精神作用は四 物質要素から生ずる. (4)《知覚されない力》が世界の創造に関与したり, 〈善悪 の行為の余力〉として多様な現象を秩序づけたりするのではない. 現象の多様性は, 本性に基づく自然発生的なものである. (5)人間存在とは身体にほかならず, いわ ゆる《a@tman》とは身体のことである. (6)他世はあり得ない. (7)人間の目的 は快楽と利益であり, 宗教的義務は無益である.
 ヴェーダンタ学派の不二一元論派に属するマーダヴァによって著された『全哲学綱 要』において, ローカーヤタの思想が紹介されている. ローカーヤタだけでなくイン ド哲学全体を包括的かつ詳細に述べた『全哲学綱要』の第一章において, マーダヴァ はウパニシャッドをはじめとする様々な文献から多くの引用をしつつ, まずローカー ヤタの学説の大要を述べ, 推理の否認について詳細に記述している. 直接知覚のみを 認識手段と認め推理を認めないローカーヤタの立場を明らかにし, 世界の多様なもの はまさに自然に生起するので, 推理によって証明される不可見力なども存在しないと いう. そして最後にローカーヤタの開祖であるブリハスパティの名を挙げて, その諸 論をまとめている. この書物で述べられているローカーヤタ思想はそれ以前に著され た他学派の文献に伝えられるローカーヤタ思想と一致しており, ローカーヤタの思想 は『全哲学綱要』において集約されたと考えることが出来る.

2.質疑応答

[問] 推理を否定するとはどういうことか?
[答] 例えば, 煙をみて「火がある」と考えることが推理である. それは直接知覚で理 解することはできない. ローカーヤタは直接知覚で認識できるものしか認めないので , 推理によって存在するものはない. しかし後代になると, 経験からくる推理は認め るようになった.

[問] 精神作用はどのような形で四物質要素から導出されるのか?
[答] 例えば, 酵母に様々な条件が付加されることによってアルコールとなるように, 四物質も様々な条件が付加され, 人間の体となった時に魂が生じる. 四物質要素から 魂が生じて精神作用を行なう.

[問] 正しい認識をもたらす手段として妥当なのは, 《直接知覚》のみであるというの と, 〈知覚される限りが宇宙である〉というのは同じ意味なのか?
[答] 見えるものがこの世界を形成しそれ以外は存在しないと考えるので, この二つは 同じ意味である.

[問] 精神が身体とは別に存在し得ないという説をローカーヤタは維持できるのか?
[答] 勉強不足のため現段階では答えることが出来ない. 今後考えていきたいと思う.



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