広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2004年度 第15回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2004年10月15日(金9・10時限,B253)
発表者:江崎公児(インド哲学,D2)
発表題目:差異性(bheda)の定義について
配付資料:A3原稿1枚(表裏), A4原稿1枚
プロトコル:根本裕史(インド哲学,D1)

1.発表要旨

仏教哲学者のダルマキールティが,差異性を'viruddhadharma@dhya@sa'(矛盾する属性の付託)と定義したことはよく知られている.しかしながら,なぜ〈矛盾する属性の付託〉が差異性と考えられるのか,ということについては未だ明かではない.今回の発表では,このダルマキールティの定義がどのようにして正当化されているのかについて,主に,カマラシーラの『タットヴァサングラハパンジカー』に見られる,〈矛盾する属性の付託〉が差異性を証明するための証因として用いられている論証式を取り上げ,検討した.これらの論証式から,〈矛盾する属性の付託〉と差異性の間に二つの関係性があることが明らかとなった.また,この二つの関係性と,〈共存不可能な矛盾〉と〈相互否定の矛盾〉という二つの〈矛盾〉が対応している可能性についても指摘した.


2.質疑応答

[問] 〈矛盾する属性の付託〉と差異性の間の二つの関係性と, 二つのタイプの〈矛盾〉は, 果たして本当に対応しているのか?

[答] 今のところ仮説に過ぎないため,まだ検討の余地がある.

[問] 二つのタイプの〈矛盾〉の違いは何か?

[答] 同じ場所に共存しえない二つの実在間の〈矛盾〉の場合には, 第三の可能性があるのに対し, 〈相互否定の矛盾〉の場合には, 第三の可能性がない.

[問] 「粗大なもの」が単一でないということから, 如何なる結論が導かれるのか?

[答] 「部分」とは異なった単一なる「全体」は存在しないということが結論される.

[問] 「相互の認識の排除」とは「相互否定」のことを指すのか?

[答] その通りである.

[問] 普遍の単一性が否定される場合, 普遍には差異性が存在することになるのか?

[答] その通りである.普遍の単一性を否定する論証を行なうのは, 他学派の説を否定するためである.

[問] ダルマキールティによる「差異性」の定義の重要性は何処にあるのか?

[答] 例えば,刹那滅論証において, 存在は毎刹那ごとに異なっているということが証明されるのだが, その際に前提となるのが「差異性」の定義である.しかし, なぜこの理論がダルマキールティ初期の著作にのみ現れるのか, そしてまた, なぜ後代において重要視されたのかについては, まだ検討の余地がある.

[問] 差異性の定義の中に「付託」という要素があるのは何故か?

[答] これについては, 関連する用例を広く調査する必要がある.シャンカラによれば, 身体とアートマンを同一と見なすのは「相互付託」によるものである.また, クマーリラ・バッタの「差異性のエ={a}ropa」という表現などがある.




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