広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2011年度(後期) 第20回a
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2011年12月02日(金9・10時限,B201)
発表者:高橋祥吾(哲学)
発表題目:『トピカ』第1巻9章の読解
配付資料:A4, 8頁
プロトコル:阿南貴之・高橋祥吾

1.発表要旨

 アリストテレスの『トピカ』第1巻第9章は,非常に読解が困難であり,多数の解釈が存在する箇所である.第9章では,いわゆるカテゴリーについて論じている箇所である.しかし,ここでは「何であるか (ti esti)」と「実体 (ousia)」が同じカテゴリーのひとつとしての意味で使われている箇所と,異なる意味で使われている箇所があるように思われる.第9章は,述語の種類は数にして十あること.そして,それらの述語は同じカテゴリーの主語について述べられる時,「何であるか」を示すと言われる.他方で,主語と述語のカテゴリーが異なる場合は,「何であるか」は示さず他のカテゴリーを示す.このとき,同一カテゴリーにおける述定において示すと言われている「何であるか」は,カテゴリーとしての「何であるか」とは考え難い.しかし,カテゴリーが異なる主語と述語の場合は,「何であるか」がカテゴリーとしての意味を持つように思われる.このような曖昧さを,アリストテレスは,むしろ意図的に保持したまま「何であるか」という言葉を用いているようにも思われるのである.


2.質疑応答

[問]可述語は十の範疇のうちにそれぞれ別々に分類されるのか? それともすべてまとめて一つの範疇に入るのか?

[答]十の範疇のうちにはいるもののそれぞれを類や付帯性等ということができる.

[問]『トピカ』とはどんな本か?

[答]推論の論拠についての本である.

[問]何であるかを述べ, 実体を意味表示している......等とはどういった意味か?

[答]何か, 例えば白について「白は色である」と述べるとき, 白について何であるのかを述べ, そしてその述べられた全体は白がどのような性質であるのかを意味表示しているということである.

[問]「場所」と「位置」の違いは?

[答]「場所」はそれが置かれた位置, 「位置」はいわばその状態や姿勢をさす. 「位置」という訳語は不適切な訳であった.

[問]「人間」を人間性を持つ実体と述べることができるのであれば, 「実体」はそこで分析が終わるものではなくて, さらに分析を進めることができるようなものであるように思われる.

[答]形而上学的に考えるとそうであるともいえるが, この箇所においてはそのような考え方を採用していない.

[問]十のカテゴリーのうち. 「何であるか」だけが上位概念のように思われるが...

[答]そうではない.

[問]「人間」の上位概念が「動物」といった場合, そのもっとも上位のものはなにか?

[答]「実体」である.

[問]「トピカ」という語の意味はなにか?

[答]場所, 論拠という意味でも用いられるtoposという語の形容詞topikosの中性複数である.

[問]述定と述語の違いはなにか?

[答]述語とはA is B といった場合のB になりうる語. 述定は述語付けの結果としてできた命題の全体を指す.



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