広島大学大学院文学研究科
比較論理学プロジェクト研究センター
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哲学・インド哲学「論文ゼミ」の記録


2004年度 第25回
哲学・インド哲学 論文ゼミ
発表日:2005年1月28日(金9・10時限,B253)
発表者:田村昌己(インド哲学,B3)
発表題目:ナーガールジュナの思想---縁起の思想を中心に---
配付資料:A3用紙2枚(両面)
プロトコル:江崎公児(インド哲学,D2)


1.発表要旨

 『中論』の主題は帰敬偈にあるように縁起である.したがってナーガールジュナの基本思想も縁起であったといえる.そこで今回の発表では,ナーガール ジュナの基本思想を理解するために縁起を取り上げ考察する.
 初期仏教では原因や条件によってものは生じるという縁起説をもとに苦と苦の原因を探究した結果,最終的に十二支縁起という形になった.ナーガールジュ ナは縁起を因果関係だけでなく相互依存の関係を含んだものとした上で,それを空性であるとする.したがって,ものは相互依存の関係にあり,本質的存在を 持たないということである.帰敬偈の八不はものが本質的存在としていかなる作用や関係も成り立たないことを示す.こうした考えは有部の本質的存在として のダルマを考える立場を批判するものであり,ことばの虚構を滅する縁起や空性の立場によって解脱があるとする.


2.質疑応答

[問] レジュメにある「もののあるがままのすがた」が空性ということなのか.

[答] その通りである.

[問] 発表者は,「実体」と「実在」を同じ意味で用いているのか.

[答] 否.「実体」とは自性(svabha@va)を持つもの,という意味で用いており,「実在」とは,そのような実体が存在すること,という意味で用 いている.

[問] 『中論頌』と『倶舎論』とにそれぞれ見られる縁起解釈には違いがあるのか.

[答] 一応違いはあると考えている.チャンドラキールティの注釈を見る限り,彼は説一切有部の縁起解釈を発展させているという点で異なっていると言える.

以上.



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