ジオイド異常に対する粘性の水平不均質の影響
図:観測と計算によるジオイド異常
ジオイドは地球重力場の等ポテンシャル面であり、そのうち、平均海水面に一致するものである.地球重力はジオイド面に垂直であり、ジオイドは水平面、すなわち、地球の平均的な形を表すと言える.ジオイドは地球内部の密度分布と、地球表面や核・マントル境界のような密度境界面のでこぼこの両方で決まる.マントルの粘性が高いため、密度境界面のでこぼこはマントルの流れを反映したものになる。例えば、はちみつの中に重いものを落とすと、表面がへこむように、下降する流れのある場所では表面にへこみが出来る。つまり、マントル対流のパターンはジオイドに影響を与える。このことを利用すると、ジオイドからマントルの粘性分布を推定することが出来る。本研究では、3次元マントル対流シミュレーションを用いてマントル対流の流れを計算し、沈み込むスラブの粘性を推定することを試みた。流れの計算には、震源分布,および,地震波トモグラフィーによって得られた地震波速度異常から推定した密度分布を用いる。図の左上は観測されたジオイド、右上は球面調和関数の4次から10次まで取り出したジオイドであり、沈み込むプレートの密度異常と関係するジオイドの成分である。下の2つがシミュレーションから計算されたジオイドである。右は下部マントルの粘性が上部マントルの深さ200から410kmまでの粘性の100倍、右が1000倍としたモデルである。沈み込むプレートの粘性は上部マントルで周囲の粘性の104倍、下部マントルでは周りと同じとした。スラブの粘性を変化させて粘性を計算したところ、下部マントルスラブの粘性は周囲と同じ程度である方がジオイドを説明しやすいことが分かった。
 
関連論文
 
M. Yoshida and T. Nakakuki (2009) Effects of lateral viscosity variation caused by stiff subducted slabs and weak plate margins on long wavelength geoid, Phys. Earth Planet. Inter. 171, 278-288, doi:10.1016/j.pepi.2008.10.018