Cognitive Linguistics

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2023年9月5日
 以前,ひつじ書房さんのウェブマガジンに連載させていただいた「認知文法の思考法―AI時代の理論言語学の一つのあり方
」が大幅に加筆修正され書籍化されました。連載当時は,まだChatGPT登場以前でしたので,ディープラーニング中心の記述になっていますが,ChatGPTを支える根幹の設計はディープラーニングですので,まだ時代遅れにはなっていないと思います。AIの専門家でもない僕がこのような書籍を出版して良いものか大変悩みましたが,今後の理論言語学と語学教育のあり方を考える一助になればと思っています。批判もあろうかと思いますが,暖かい目で見守っていただければと思います。




2023年9月5日
 先月,久しぶりに国際学会(The 16th International Cognitive Linguistics Conference)で発表してきました。渡航費の高騰と円安が重なって,びっくりするほど研究費を使ってしまいましたが,世界の動向が分かっただけでも有意義だったかなと思います。文系学問的な風潮が強かった旧来の認知言語学がすっかり影を潜め,データサイエンス色の強い研究が主流になったことが肌で感じられました。ただ,僕のようなラネカー的な研究はもう古いというのは理解できますが,古くても良いものは続けていきたいという思いもありますので,データサイエンス全盛の時代でも,細々と認知図式を描き続けていきたいと思いました。それにしても,ドイツ(デュッセルドルフ)は寒かった。(発表資料はコチラ



2023年3月14日

 最近,ChomskyはAIについていろんなところで発言していますね。今回は,The New York Times (2023/03/8)の記事です。これに関しては,ココココでも言及されています。たしかにAIが期待されすぎているという点では同意できますが,それ以外に関しては,負け惜しみに聞こえてしまうのは僕だけでしょうか。身体もなく環境との相互作用もない,そのため,意味を理解できない,感情を持たないプログラムが人間のような知性を持たないことは,当たり前すぎて,この分野の研究者には全然響かない的外れな批判のような気がします。できないことを挙げればきりがないと思いますが,何十年もルールベースでやってできなかったことが,できているという事実に目を背けること自体,科学者の態度ではないような気がします。人間の知性は統計学習だけで説明できないのはたしかですが,人間は思っていた以上に統計的に学習している可能性があることをまじめに検討してみる良い機会だと思うんですが,検討すらしないんですね。それこそ,科学者の態度ではないような。


2023年1月29日
 
ChomskyがOpenAIのChatGPT(対話型人工知能)について話している動画を見つけました。教育に関心のある方がインタビューしているので,話が学生の不正(plagiarism)の問題とごちゃごちゃになっているのですが,やはり,ChomskyはDeep Learningのインパクトを理解していないように思えますね。理論言語学者にとって,膨大なデータからそれなりにちゃんとした文章が生成できるということのインパクトはかなり大きいと思うんですけどね。high-tech plagiarismって言っているのが印象的でした。動画はコチラ。(追加:もっと良い動画を見つけました。コチラ。どっちにしても,はぐらかしているようにしか聞こえないような。all and only possible sentencesを生成するという目的が膨大な事例の学習である程度達成されているという事実は,単なる表面的な事象として無視してよいのだろうか。少なくとも,もう少し真剣に検討してもよいような,,,)

2023年1月17日
 
来月2月19日に,同志社ことばの会におきまして,講演をさせていただくことになりました。久々の発表なので今から大変緊張していますが,ここ最近僕が考えていることを思い切ってぶつけてみたいと思います。タイトルは「(間)主観性から始める言語研究―日本語認知文法からの一つの提案―」となっています。会員以外の方も参加できるそうなので,当日キャンパス会場またはZoomで参加をご希望される方は同志社ことばの会事務局までお問い合わせください。詳しくはコチラ


2023年1月5日
 出版社に務めている卒業生から『言語沼』を送ってもらいました。前にも紹介した「ゆる言語学ラジオ」のYouTuberが書いたものです。日頃,ことばの面白さを学生にどうやって伝えようかと苦心している僕としては,大変参考になるYouTubeチャンネルです。こんな風に授業が進められたらいいな。





2023年1月5日
 
明けましておめでとうございます。なかなか心穏やかに過ごせないせいか,ここ数年HPの更新が滞っていて申し訳ありません。実は昨年とても良いことがありましたので遅ればせながらお知らせいたします。実は,昨年の9月,チェコ共和国のブルノ市にあるマサリク大学で集中講義を行ってきました。講義内容は日本語認知言語学です。お招きいただきましたマテラ先生にも大変良くしてもらいましたし,学生たちにも恵まれたので,大変楽しい仕事でした。良い経験にもなりました。もうこのようなチャンスは二度とないと思いますが,まじめに研究してきて本当に良かったと思いました。
 さて,今年はどのような年になるのでしょうね。あまりにも社会的情勢がめちゃくちゃなので少し焦り気味な日々を過ごしておりました。心がかき乱されることが多くて研究に専念できないといった感じでしょうか。ジョージ・オーウェルの『1984』の世界にいる気分です。ふと,戦時中の知識人たちは,どのような心境で研究を続けていたのだろうかなんてことを思ったりもしました。真実とは何かがわからなくなる感覚が意外と身近にあったようです。論理的に導き出した結論があっさりと否定され,合理的だと確信している判断がけんもほろろに嘲笑されていると,世間という大きな感情の流れに理性で抗うことは不可能のような気もしてきます。
 ということで,とりあえず,今年のnew year's resolutionは

  自分のできることだけに専念する

にしました。よく他人の仕事と自分の仕事を区別せよ,そして,自分の仕事だけに専念せよ,と言いますが,たしかに,ここ数年,僕は他人の仕事についてあれやこれやと頭の中でジャグリングすることが多かったように思います。なので,今年こそは山に籠る感覚で勉強したいと思います。結局,自分の人生を切り開くには自分でやるしかありませんから。


2022年の軌跡


2022年3月28日
 日本認知言語学会前会長の辻幸夫先生がこの3月で勤務校の慶應義塾大学を退職されました。長い間,ご苦労様でした。特に,日本認知言語学会の設立から運営に当たって,陰に陽に大変なご尽力を頂いたことに心より感謝の意を表したいと思います。日本認知言語学会において研究業績を積んだ多くの若手研究者がその後多くの大学での研究職のポジションを得られたことを考えると,辻先生の果たした学問的影響力は計り知れないものがあると思います。ご退職に当たって,この度,退職記念論文集も出版されましたのでここにお知らせいたします。僕もAIと英語教育と認知言語学を絡めた論考を載せてもらっていますので,興味のある方は是非。




2022年1月15日
 
今日はうれしいお知らせです。この度,くろしお出版より『認知統語論』(共著)が出版されました。僕は,第1章「認知文法の基本概念」,第3章「日本語らしさと認知文法」,第4章「概念の構築と格助詞スキーマ」,第5章「構文拡張の認知メカニズム」,「あとがき-認知文法の展開-」を執筆しています。僕なりの視点から日本語の主語の省略の問題や日本語のラレル構文に関する問題などを取りあげています。不十分な点や誤解に基づいた議論などもあるかと思いますが,その辺りは,批判的にご検討いただけますと幸いです。近年は,認知言語学関係の書籍の出版が盛んですので,お腹いっぱいの感が否めませんが,執筆者一同,一生懸命時間をかけて書きましたのでよろしくお願いいたします。




2022年1月4日
 
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。昨年中にはこのコロナ騒ぎは収束すると思っていましたが,まだまだですね。安全性が確認されていないにもかかわらずワクチン接種は“安全”だと喧伝する一方で,オミクロン株はほぼ重症化を引き起こさないというデータや研究結果が出ているにもかかわらず,それらが完全には証明されていないからという理由で自粛や隔離が行われています。(べつにワクチン接種に反対しているわけではありません。念のため。論理が破綻していて一貫性が無いことを指摘しておきたいだけです。)このまましばらくは心穏やかに過ごせない時間を過ごさなければならないと考えると気が重くなりますが,とりあえず,入試やクーポンに関する愚策が回避されただけでも良しとしましょう。そして,本当に困っている人に支援の手が差し伸べられることを切に願いたいと思います。
 僕はと言いますと,長年準備してきた『認知統語論』(共著)がいよいよ「くろしお出版」より出版されることになりました。肩の荷が下りたというより,どちらかというと,喉のつかえが取れたという感じでしょうか。ですので,今年から気分を新たにしてまた研究を再スタートしたいと思います。今年のNew Year's Resolutionは

  初心に返って一からはじめる。

です。とにかく,まずは日常を取り戻すのが先ですね。それから,できれば,趣味や旅行も行きたいです。




2021年の軌跡

2021年11月25日
 
今日は,ちょっと面白い記事があったので紹介します。最近,YouTubeで「ゆる言語学ラジオ」という優れた番組が配信されています。ことばについてこんなに楽しそうに話しができるのは本当に素晴らしいと思います。学生にとって勉強になることはもちろんですが,言語学を教える教員にとっても教え方の良いヒントになると思います。それにしても言語学のネタで登録者数が9万人を超えているとは。

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2021年11月10日
 
新しい本(『意味論・語用論と言語学諸分野とのインターフェイス』(米倉よう子 編)が開拓社より出版されました。僕が執筆しているのは,第4章「意味論・語用論と「視点」とのインターフェイス」です。「捉え方」の問題についてあまり専門的にならないようわかりやすく書いたつもりですので,興味がある方はぜひ読んでみてください。




2021年4月28日

 忙しくてお知らせが遅れましたが,朝日小学生新聞からインタビューを受けました。僕のような者でよいのかとも思いましたが,これも社会貢献のうち,言語学者の使命と思い引き受けました。記事は4月6日に出ましたが,個人情報を伏せたものをここに載せておきます。

2021年3月9日
 
先日,Professor Gilles Fauconnierが亡くなったという悲しいお知らせを頂きました。メンタルスペース理論やブレンディング理論などで認知言語学をリードしてきた大学者ですね。日本にも何度も来ています。僕が初めて見たときは,フランス語訛りの英語がカッコよかったですし,なによりも,ルックスが抜群にかっこいいと思ったのを覚えています。チョムスキーをはじめ現在の理論言語学の流れを作った大物たちがますます高齢になっていきます。彼らのように時代を変えるようなインパクトのある研究が最近出ていないと思っているのは僕だけでしょうか。なんだか焦ります。ご冥福をお祈りいたします。


2021年1月5日
 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 昨年は,新型コロナウイルスの感染拡大で大変なことになりましたね。オンライン授業という全く新しいスタイルの授業を一から作り上げましたので,個人的にはまったく余裕のない一年になってしまいました。大学の教員は幸いその程度の影響で済んでおりますが,直接大きな影響を受け苦しんでおられる皆様に対しては,一刻も早い十分な支援が政府から出されることを切に願っております。
 国民は納税という形で日ごろ社会に貢献しています。その国民が自力ではどうにもならない事態に苦しんでいるときには,国が公助という形で十分な支援を行う必要があるのではないでしょうか。少なくとも,国民を守ることが国の義務だと思います。プライマリーバランス黒字化という科学的な根拠が疑われている目標達成のために,目の前で苦しんでいる人々に自助を求めるのは国のとるべき態度ではないと思います。ぜひ苦しんでいる人々に救いの手を。
 それと合わせて,昨年の偏向報道にも目に余るものがあったと思います。大手マスコミの皆さまには,客観的事実を“必要十分”なだけ伝えるという誠実な報道姿勢を強く求めたいと思います。例えば,言語学の研究において,自分の主張に合うデータだけを取り上げて主張に合わないデータは意図的に隠すということをしてしまうと言語の真の姿を歪めてしまうことになります。もちろん,学者たちはそのようなことが起こらないよう常にお互いに批判的な検討を行っていますので,そのような不誠実な研究は次第に排除されていきます。しかしながら,マスメディアの場合は違います。情報の発信側と受信側における情報格差が圧倒的に大きいため,受信側は発信された情報をもとに現実を捉えるしかないのです。事実を捻じ曲げて報道するのは言語道断だとしても,文脈から切り離し事実の一部だけを伝えたり,誤解を招くデータを使って不安を煽ったりするのは,大変誤解を招きやすく,その点では,フェイクニュースとなんら変わらないということを自覚する必要があると思います。“累計”の感染者数を発表することに何の意味があるのでしょうか。インフルエンザの感染者数を“累計”で出しますか?
 
 という感じで,何とも煮え切らない年明けとなってしまいましたが,とりあえず,今年の自分のことを考えてみましょう。昨年は一言でいうと,状況に振り回された一年だった思います。その“状況”には新型コロナウイルス対応も含まれますが,それ以外にもたくさんのことが次から次へと降りかかってきて,自分のために時間を使うことがほとんどできなかった感じがあります。「忙しい」という字は「心」を「亡くす」という意味だとよく言われますが,まさにその通りで,研究が僕の頭の中を占める割合が極端に小さくなっているのを感じました。本を読んだり,論文を読んだりする時間が極端に少なくなってしまいましたし,何より,頭の中を整理したり,思考を熟成させるために必要なワーキングスペースが脳内のどこかに追いやられてしまった感があります。
 という反省を踏まえて,今年のnew years resolutionは,

   自分の仕事に集中する。

にしたいと思います。「自分の殻にこもる」と言い換えてもいいかもしれません。とにかく,いったん自分を取り戻さないと研究者としての自分のアイデンティティが崩壊しそうなので。
 
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Last modified 2023/9/5