何をしたらよいですか?

――劣化ウラン。――

御庄 博実

 

碧紺の空に光る

瑠璃色のモスク

アリババと四十人の盗賊たちの

不思議な話を夢のなかで聞いた

―― 少年時代 ――

バクダッドの市場では

盗まれたランプが

いまも売られているか

 

大学小児科のジョルマクリ先生は言う

病院の廊下にさえあふれる白血病の子供たち

 処方する薬を持たない医者に何ができますか?

 ヒロシマの医者は、五八年前、患者さんに何をしましたか?

答えることのできない質問に

僕の記憶中枢はあの日の閃光に灼かれ

僕は黙って下を向く

 

若い母親の腕に抱かれた

白血病の子供たちの無心な笑顔

まぶたごと目玉の飛び出した無脳児 水頭症…

机上に広がる異形の写真

凝視しながら 僕は盲目となる

 

バスラからやってきたアル−アリ先生は言う

 処方する薬を持たない医者に

 何ができる?

 何をしましたか?

 何をしたらよいと思いますか?

 ヒロシマの医者の答えが聞きたいのです

 

耳元で囁きつづけるのは

お母さん あなたですか

机いっぱいに広がっている子供たち

やわらかい肌に

僕はそっと掌をあてる

冷たい! 氷の肌に


  白いベッド

――劣化ウラン「――

御庄博実

 

隣の少女は昨日死んだ

花のリボンをわたしに残して

白血病と言う刻印

明日 わたしは死ぬのでしょうか

果てしなく暗く

果てしなく遠い 明日

わたしはもう動けない

 

満天の星星が

わたしの夜空で輝いていた

砂嵐のあとで

わたしは忍従の闇へ落ちる

名前も知らない病院の

白いベッド

 

 地を走る影

遠くに響いてくる残響

わたしがまだ母さんの

お乳を飲んでいた頃の

遠い とおい昔のことなのに

昨日の砂嵐が

硝煙の臭いを

また 運んでくる

 

 白血病の子供たちで

わたしの病室はいっぱいなの

亡くなっていった一人のあと

砂嵐の吹くたびに

硝煙の臭いが吹くたびに

また一人が入ってくる

わたしはもう動けない


HP管理者から:著者からの2003年7月10日付けの手紙および2003年8月14日受領の手紙による指示に基づいて一部改訂しました。