一般的に言えば
脳腫瘍とは頭蓋骨の内側の空間にできるすべてのできものを意味します。できものとは多少なりとも塊を形成しているもので、大部分は放っておくと大きくなるものをいいます。しかし中にはずーっとそのままの大きさでいるもの、ごくまれには勝手に小さくなるものもあります。
頭蓋骨の中には脳みそだけではなく、血管や脳を包む膜、下垂体というホルモンを分泌する大豆ぐらいの塊や脳の底からひげのように伸びている脳神経もあります。これらからできてくる腫瘍を脳腫瘍のなかでも原発性脳腫瘍といいます。くれぐれも脳腫瘍は脳みそだけから発生すると思わないでください。そのほか、脳以外のガンが脳にとんできて大きくなるものを転移性脳腫瘍といいます。
どのくらいの頻度で発生するものなの?
腫瘍は速く大きくなるもの、ゆっくり大きくなるものと本当にいろいろですから、厳密にはその腫瘍がいつ発生したかは神様しかわかりません。そのため毎年人口10万人について何人その腫瘍が診断されているかを腫瘍の発生率としています。再発例は含みません。原発性脳腫瘍の発生率は10人です。つまり、一年間に1万人につき一人の確率です。日本全国で毎年約12000人の人が原発性脳腫瘍と診断されているわけです。
転移性脳腫瘍の発生率ははっきりしません。いろいろなガンが全身に転位した場合、かなりの確率で脳への転移も認められますが、その場合、多くは全身の状態(栄養、呼吸、血圧、尿の出方など)が悪いため、脳への転移性腫瘍は治療対象にはなりません。逆に、全身の状態が良く、脳転移が発見された場合は治療対象になります。そのような良い状態で患者様の脳転移が診断される頻度は原発性脳腫瘍と同等と言われています。
どんな脳腫瘍があるの?
まず脳腫瘍は脳の中の何から発生したかで分類されています。脳みそから発生したもの、脳を包む膜(髄膜と言います)から発生したもの、脳下垂体から発生したもの、脳の神経から発生したもの、この4つが四天王です。その他の珍しい腫瘍も多数あります。精子や卵子のもとになる細胞が間違って脳に入って発生するものまであります。頭蓋骨の中には脳みそを始めとして約1500gの重量が入っています。これは60kgの体重の90分の1にすぎません。しかし、そこに発生する原発性脳腫瘍はなんと100種類以上あります。(この種類ごとの詳しい説明は“脳腫瘍の種類”の項を参照してください。)
それぞれの腫瘍はよく発生する場所(好発部位)とよく発生する年頃(好発年齢)があり、また、男女差が認められるものが多くあります。脳腫瘍に精通した医者なら、患者様の年齢と性別がわかっていて、CTとMRIを見せてもらうことができれば、可能性の高い腫瘍を2−3種類に絞り込むことも少なくありません。