プレート収束帯の地震発生について

〜東北地方太平洋沖地震の解説を含む〜

 

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により被災された方々へのお見舞いと,一日でも早い被災地の復興をお祈り申し上げます。地震発生後,自分たちに何ができるか問い続けるなか,地震をはじめとする地球科学の研究に携わる者として,今回の地震発生について分かり易く解説するのがまず第一歩と思い,当サイトを立ち上げました。


サイト立ち上げ: 2011年3月17日

最終更新日:   2012年2月07日

  


プレートが集まる場所は地震が多い!


地球表面は何枚かの硬いプレート(岩板)に覆われており,このプレートは地球内部のマントル対流にのり動いている。


これをプレートテクトニクスといい,プレートの集まる場所ではプレート同士が衝突したり,片方のプレートの下にもう一方のプレートが潜り込んだりしている。

(赤線がプレート境界→)


地震はそのようなプレートの境界で発生する。これは境界域でプレート内にゆがみや歪みが生じ,それを解放するために地震が発生するためである。


                 

1980年〜1996年の震源分布(赤点)→

*マグニチュード4以上深さ100km以浅

(出典:東京大学地震研



多くの地震がプレート境界で起きているのが一目瞭然!


日本列島は4つのプレートが会合する場である。そのようなプレート境界であるがゆえ,地震が多発する(日本は地震国)。とくに,海洋プレートが大陸プレートの下に滑り込む沈み込み帯では,その境界面に沿って地震が集中して発生する。 東北地方では太平洋プレートが北米大陸プレートの下に,西日本ではフィリピン海プレートがユーラシア大陸プレートの下に沈み込んでいる。



過去10年間の日本列島周辺での地震活動 


*この図では,深さ30km以深の震源分布のため,地殻浅部の内陸地震は含まれていない。


  


地震には3つのタイプがある!


プレート収束域で起きる地震には3つのタイプがあり,ある地震学者は地震三兄弟と呼んでいる。


    (1)プレート境界型地震(プレート間地震)

    (2)海洋プレート内地震(スラブ内地震)

    (3)大陸プレート内地震(内陸地殻内地震)


(1)プレート間地震は沈み込むプレートの境界部分で発生する地震

(2)海洋プレート内地震は沈み込むプレート内部で起きる地震

(3)大陸プレート内地震は表層地殻内部の断層活動によって起きる地震


 東北地方(断面)の震源分布 →

 (Nakajima et al. 2001から震源を抽出)


*東北地方太平洋沖地震は,このうち(1)のプレート境界型地震にあたる。


  


プレート境界型地震では津波に要注意! 


プレート境界型地震では,地震発生は海の下で起きる場合が多い。その場合,地震破壊による地殻変動(解放された歪み)は海水を押し上げ,津波が発生する。



*プレート境界型地震では津波の危険性が高い。今回の東北地方太平洋沖地震をはじめ,2004年のスマトラ島沖地震でも,甚大な津波の被害がでている。


*プレート内地震でも,1993年の北海道南西沖地震のように,地震破壊が海の下で起こる場合は津波に注意が必要である。



津波は,地震よりやや遅れてやってくる!!


今回の東北地方太平洋沖地震でも,地震のあと約20~30分後に津波が襲来した。これは,岩石中を伝わる波は著しく速いのに対し,水のなかではゆっくり通過するためである。


 
津波の伝播速度は v = √gh


 g:重力加速度,h:水深

 *水深1000mの場合,時速360km


 地震動の伝播速度は v = √G/ρ


 G:岩石の剛性率,ρ:密度

 *横波の場合,およそ時速14000km


震源が約200km沖合の場合,地震動の伝播は50秒であるのに対し,津波の伝播時間は約30分。そのため,津波は地震動より遅れてやってくる。なお,震源が陸に近い場合は到達時間が短いため,迅速な避難が必要(震源地の推測については後述)。


津波は,遠方にも伝播する!!


津波は海水面上を四方八方に伝播する。そのため,沿岸付近での反射によるものや,遠地で起きた地震でも津波の警戒が必要である。とくに湾内など地形が狭く入り組んだ箇所では津波が急に高くなる危険性もある。


*1960年に起きたチリ地震(M=9.5)では,22時間後に三陸沖に津波が襲来し,被害が報告されている。


*2004年に起きたスマトラ島沖地震(M=9.2)では,遠方のスリランカで津波による甚大な被害が出ている。



東北地方太平洋沖地震による津波の伝播モデル→

(National Oceanic and Atmospheric Administration)

動画については,こちらを参照。



  


地震のマグニチュードとは? 


地震の規模を表すマグニチュードとは,地震破壊が発するエネルギーの大きさを対数で表したものさし。


  log E = 4.8 + 1.5 x M

  E:地震エネルギー,M:マグニチュード


そのため,マグニチュードが1増えると,エネルギーはおよそ32倍増加する。


東北地方太平洋沖地震のマグニーチュードは9.0(暫定値)と報告されており,これは1995年の兵庫県南部地震(Mw=6.9)の約1400倍の規模に相当する。


*東北地方太平洋沖地震では,マグニチュードが大きい割に震度(宮城県北部で最大震度7)が小さく揺れによる建物被害などは比較的少なかった。これは震源が陸から離れた沖合に位置したためである。一方,兵庫県南部地震では,内陸直下型地震のため地震の揺れによる被害が大きかった。


東北地方太平洋沖地震の規模(Mw=9.0)は,1900年以降に世界で起きた地震のうちで4番目に大きいものである。巨大地震の分布を見ても,環太平洋地域は巨大地震の巣であることが分かる。



アメリカ地質調査所(USGS)のデータに加筆


  


東北地方太平洋沖地震はなぜそこに? 


太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込む三陸沖から房総沖にかけては,これまでも多くの地震が報告されている。内閣府の地震調査研究推進本部によると(平成15年),宮城県沖での大地震は平均37年周期で繰り返しており,最新の活動が1978年6月12日であることから,2001年の時点で平均活動周期のほぼ61%になり(2011年3月ではほぼ88%),地震発生の可能性は年々高まっていた。


*2005年に宮城県沖でM=7.2の地震があったが,これは想定されたものより小さい。


当地域では,防潮堤などの防災対策は整備されてはいたが,地震の想定規模が最大でもM=8.2クラスであったため,今回の地震は想定外の規模であった。


1923年〜2008年6月にかけての三陸沖から房総沖の震央分布(気象庁の資料に一部加筆)→



なぜ想定を超える地震規模になったかは,これから議論が進められることになるが,現在のところ,3つ以上の断層(宮城沖から茨城沖にかけて)がほぼ同時に動いたため破壊エネルギーが非常に大きくなったと考えられている。

(詳しくは筑波大学八木研究室のサイトを参照)



プレート境界面はでこぼこ!


東北地方太平洋沖地震のようなプレート境界型地震では,沈み込むプレートの境界面での「でこぼこ」が地震の原因となる。このでこぼこを「アスペリティ」とよび,アスペリティでの引っかかり(固着領域)がはずれて,急激なずれ(すべり)が生じたのが大地震である。


そのため,どこにどの程度のアスペリティが分布するかは,地震を予測する上でも大変重要である。プレート境界面でのアスペリティ分布については,いくつかの方法で調べられいるが,そのうちの一つはGPSによる地殻変動とプレート運動量からすべり欠損量(歪み蓄積量)を見積もる方法である。東京大学のグループでは,太平洋プレート境界面でのすべり欠損分布を報告しており(詳細はこちら),それは今回の三陸沖から茨城沖にかけてのすべり分布と非常によく一致し,研究者の間でも話題となっている。



なお,2004年12月に発生したスマトラ沖地震(Mw=9.3)では,3ヶ月後の2005年3月に同じスマトラ沖を震源とする(2004年より南東250km)Mw=8.6の別の地震が発生している。これは,巨大地震の発生により,プレートにかかっていた力のバランスがくずれ,他のアスペリティへの応力集中が引き金になったと考えられる。東北地方太平洋沖地震においても,その規模から,M8クラスの別の地震が今回の震源域の縁で起こる可能性が指摘され,今後とも警戒が必要である。


 


いま日本列島は地震活動期?


プレート境界に溜まった歪みを解放するプレート境界型地震では,大地震はある一定の周期をもって繰り返し起こる。その再来周期は場所により異なるが,東海地方ではおおよそ100年周期,東北地方ではやや短く約40-50年周期で大地震を繰り返す。


東北地方太平洋沖地震では,2011年3月11日に本震が起きた後,三陸沖から茨城沖にかけての余震に加え,3月12日に長野県北部でMw=6.7の内陸地震,3月15日に静岡県東部でMw=6.4の地震が続いている。


これは,プレート境界での巨大地震の発生により,日本列島にかかる応力の均衡が破れたためと推察される。


そこで問題となるのが,いつ起きてもおかしくないと言われている東海・東南海・南海地震である。これらの地震が連動した場合,最悪では東日本大震災に匹敵あるいはそれ以上の被害が想定されている。


東海・東南海・南海地震の震源域はユーラシアプレートに沈み込むフィリピン海プレートの境界面であり,東北地方太平洋沖地震の震源域である太平洋プレートとは異なる。しかし,巨大地震の発生により箍がはずれた日本列島では,次の地震がいつ起きてもおかしくない状況に変わりはない。


長期的な傾向として,地震は活動期と静穏期を繰り返している。西日本周辺(糸魚川ー静岡構造線より以西)では,1995年の兵庫県南部地震まで大地震が少ない静穏期が約50年続いたが,1995年以降Mw>6.5クラスの大地震が相次いで起きている。


     1995年  1月:兵庫県南部地震(Mw=6.9)

     2000年10月:鳥取県西部地震(Mw=7.3)

     2001年  3月:芸予地震(Mw=6.7)

     2007年  3月:能登半島地震(Mw=6.7)


前回の南海地震では,1927年の北丹後地震(M=7.3)や1943年の鳥取地震(M=7.2)など内陸地震の活発化の後,1946年12月に紀伊半島沖を震源としたM=8.0のプレート境界型地震が発生した(その後,50年ほどの静穏期に入る)。このように,西日本では現在,地震の活動期に入っている可能性も指摘されている(詳しくはこちら)。


*日本列島には地震計が多く設置され,緊急地震速報をはじめ地震防災に役立てられている。そのような設備や情報がこの先充実し,今後このような大震災に至らないことを願います。なお,東海地震に関しては,大地震の前兆現象を現在もモニタリング中であり,検知されればメディアを通して発表されることになっている(詳しくはこちら)。





私たちにできることは,今回の東北地方太平洋沖地震から多くのことを学び,次の地震が発生した際にどう対処するか日頃から意識することではないでしょうか。時間が経過すると,どうしても忘れがちになりますが,そういう時に本サイトで地震のいろはを思い出して頂ければ幸いです。


ご意見や質問がありましたら,下記アドレスまでご連絡ください。

(片山郁夫 広島大学地球惑星システム学 katayama”at”hiroshima-u.ac.jp ”at”は@




研究室HP

〜ちょっと脇道へ〜


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地熱ルネサンスに向けて




より専門的なサイトの紹介

東京大学 地震研究所

京都大学 防災研究所

東北大学 地震噴火予知研究観測センター

産業技術総合研究所 活断層地震研究センター

超深度海溝掘削(KANAME)プロジェクト

アメリカ地質調査所(USGS)