地震の予知について
 
 

なぜ地震は予知できないのだろう?


それは,私たちが地球という大きな生命共同体のなかで生活しており,人間の欲望や支配では到底及ばない,自然現象を相手にしているからに他ならない。しかし,地震発生の素過程の理解や,これまでの地震の経験則から,ある程度は地震の予知は進んできている。ここでは,地震予知の最前線で,何が起こっているかを簡単に紹介したい。


まずは,大地震の前兆現象について,報告があるものを列挙すると,


    ・なまずにはじまる生物の異常行動

    ・発光現象や地震雲などの気象異常

    ・地下水の変位や濃度の変化

    ・地殻構造や応力状態の変化


などが挙げられる。これらのうち,上記2つは,突発的なもののため科学的な評価が難しい。地下水については,地殻の歪みに敏感なため水位が変化したり,ラドン濃度が地震前に上昇するなどの傾向が知られている。そのため,深層地下水の観測井戸が設けられ,現在もモニタリング中である(詳しくはこちら)。


以下は地質学的あるいは地球物理学的に,地震の予知につながるものを挙げる。



活断層分布

内陸にはプレート運動による歪みの”しわ”が多く分布し,そのような歪みは均質に解放されるのではなく,滑り易い箇所のずれで解放される。そのずれ易い場所は,過去に地震が起きた断層面であり,極めて近い時代にずれた断層また今後活動する可能性がある断層を活断層という。


地震調査研究本部では,それぞれの活断層の地震発生確率および想定規模(マグニチュード)を公表している(詳細についてはこちら)。


*なお,1995年の兵庫県南部地震で活動した野島断層の30年発生確率は,地震直前において0.4~8%と報告されていた。


 地震調査研究本部による主な活断層分布→

    


アスペリティ分布

プレート境界型地震の場合,アスペリティ(固着域)で溜まった歪みが解放されて地震が発生する。そのため,プレート境界のアスペリティ分布から,どこにどの程度の歪みが溜まっているかを調べることが大地震の予測につながる。前項ではGPSを用いたすべり欠損モデルを紹介したが,それに加えてスロースリップ(ゆっくりすべり)の分布がアスペリティの推定には有効である。なぜなら,プレート境界でゆっくり滑っているスロースリップの震源域は,アスペリティを縁取るように分布するからである。大地震が起きる場合は,アスペリティ全体が一気に滑るのではなく、アスペリティ周辺部からゆっくりとした滑りが開始し、それが徐々に拡大し,ある程度まで広がった段階で一気に滑るらしい。



前兆すべり(プレスリップ)

これまでの巨大地震の発生前には,前兆現象として数日前から異常な地殻変動が観測されたとの報告が多々ある。これは,巨大地震が発生する前に,アスペリティの一部がゆっくりとすべり始めるためであり,プレスリップと呼ばれている。このプレスリップを検知するべく,東海地方には歪計や地震計などが高密度で整備されており,現在もモニタリング中である。気象庁によると,東海地震でこの前兆すべり現象が感知されれば,「東海地震観測情報」として発表されることになっている。



緊急地震速報

これは地震予知には含まれないとの考えもあるが,どのような仕組みで緊急地震速報が発令されているかを簡単に説明する。地震で発生する波には,縦波と横波があることはご存知だろう。じつは,両者の波が伝わる速度はかなり違い,縦波に比べ横波の速度は半分程度しかない。そのため,地震発生後には先きに縦揺れがあり,それに続いて横揺れが起きる。震源が近い場合は,この時間差は短いが,震源からやや離れた地域では,縦波が到達したあと数十秒おくれて横波がやってくる。建物の揺れなどは,縦波よりも横波やその後続波のほうが大きいので,横波が来る前に速報で分かれば待避することが可能となる。



岩石中を伝わる縦波速度はおよそ6km/secに対し,横波の速度は3.5km/sec。そのため,震源が200km離れていれば,縦波が到達したのち,約24秒後に横波が到達する(この時間差からおおよその震源の位置や津波の襲来時刻を予測することもできる)。



近年は地震計が密に配置されているために,より正確な緊急地震速報が可能となっており,鉄道会社や工場などの生産ラインでも活かされつつある。



地震予知の実例

1975年に中国で起きた海城地震(M=7.3)では,中国国家地震局に「動物の異常行動や地下水変位などの地殻変動が目立つ」との連絡から,住民100万人を緊急避難させ被害を最小限にとどめた例がある。しかし,アメリカ西部のパークフィールド(有名なサンアンドレアス断層が位置する)においては,アメリカ地質調査所が地震の予知を目的に緻密な観測監視が行われていたが,2004年に起きたM=6.0の地震を予知することはできなかった。



現在のところ,長期的な地震予測はたつが,いつどこでどの程度の地震が起きるかを厳密に推定することは難しい。しかしながら,ある程度の範囲や時期に限定した予測は可能になっており,日々前進しているのが現状といえる。



もどる