科学教育学会年会96

第20回 科学教育学会年会 1996 in 広島


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私の聞いた発表

  1.  課題研究「環境教育研究の課題と展望」
    オーガナイザー 木俣 美樹男(東京学芸大)

  2. 生涯学習としての環境教育の課題   阿部 治(埼玉大)
  3. 環境教育としてのグローブ計画    樋口利彦(東京学芸大)
  4. 環境教育における環境倫理の展開   谷口文章(甲南大)
  5. 都市での環境学習の課題       盛岡 通(大阪大)
  6. 科学史における環境教育の位置づけ  鈴木善次(大阪教育大)
  7. 環境教育と国際性          中山和彦(筑波大)
  8. <印象に残った言葉>
    人と自然との関係だけでなく,人と人との関係を視点に入れた環境教育。
    人間の欲望のコントロールは,社会的な規制よりも自律へ
    環境(文明)問題への意志決定能力や環境倫理観を育成するカリキュラム
    日本の環境教育:ネイチャー学習が欠如していた。現在はこれに集中している。
    環境教育の学問としての体系化の時代の到来。

<私の想い>
 今回参加した3つの学会のうち,この科学教育学会は,実践研究の発表よりも,大学を中心とした研究者の発表が中心であった。
 「環境教育は何をめざしているのか」,疑問を抱いてきた。特に,現在までの 環境教育の実践事例は,上の指摘にもあるように,これまでの日本の教育に欠け ていたとされる「自然を体験する学習」に偏重し,自然の中へこどもを連れ出す ことが環境教育の目的であるかのごとく,捉えられていたような気がする。初等 教育においてはそれも必要だが,環境教育を行う側の意識としては,そこで止ま ってしまってはいけない。
 中等教育における環境教育としては,社会の一員としての「意志決定能力」や を育成することに,重点がおかれるべきであると感じた。そのためには,こども の自然体験と思考課程を考慮に入れた,環境教育のカリキュラムの確立が急務で ある。空き缶回収などのリサイクル活動を行うことにも意義はあるが,行動の論 拠となる内容について,学校教育の中でしっかり教えなければ,継続は望めない。 自らの倫理観と判断基準に基づいて,持続可能な社会をめざす生徒を育てる教育 とは,いかなる実践が必要となるのだろうか。

 生涯教育としての環境教育の中で,学校教育に求められるもの,課せられるも のは何か。あまりにも取り扱われる内容の範囲が広すぎ,それぞれの実践者の意 識にも,かなり大きな食い違いがあるように感じられる。
 環境教育の学問としての体系化が必要であることはうたわれても,現在の段階 は,それには遠い道のりを要するように感じる。環境教育の実践者だけでなく, 研究者においても環境教育の中心となるべき概念や理念が確立できていないので はないかと感じた。今はまだ,実践を積み重ねる中から方向性を見いだしていく 時期なのかもしれない・・・そう感じた。

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