活動状況

2018年度 HINDAS 第3回 研究集会 報告

【主催】南アジア地域研究 広島大学拠点(HINDAS)

【日時】2018年7月21日(土)13:30〜16:50

【場所】広島大学 文学研究科 1階 大会議室(東広島キャンパス)

【報告】

宇根 義己(金沢大学)

「コインバトール地域の紡績工業からみた南インド繊維産業の流通構造と労働市場」

本報告は2回に渡ってタミル・ナードゥ州コインバトールで調査した11の紡績工場の分析をもとに,同地域における紡績工業の流通構造と労働市場に着目し,南インド繊維産業の存立構造を考察した。

タミル・ナードゥ州はインド最大の織布産地であり,その中心がコインバトール州である。一方,同州では紡績部門の川上・川下にあたる綿花生産および織布生産が近年減少している。そのため,コインバトールの紡績工場にとって,遠方からの原料調達および遠方への製品出荷が求められ,そうした取引相手の獲得が成長の重要な鍵となる。このような工程間の流通部分を担うのが地域内外の個人エージェントである。彼らは個人的人脈や情報,言語能力によって売り手と買い手を結びつけ,繰り綿業者と紡績工場,紡績工場と織布工場といった工程間の流通を担っている。

当地域は,2000年代中頃以降に労働者不足となり州外労働者の流入が顕著になってきた。現在は多くの州外労働者が当地に滞留し,より給与と待遇の良い職場を渡り歩くジョブホッピングが一般化している。これにより紡績工業における労働者の獲得競争の激化を招いていることが窺える。

質疑では,ムンバイーやアフマダーバードなど他産地の盛衰との因果関係,ワーカーの技術的要求水準,個人エージェントによる流通の将来性,工程間地域間分業に関する研究における流通やエージェントの役割とその位置付けなどに関して質問やコメントが寄せられた。

 

      

 

梅田 克樹(千葉大学): 

「大都市近郊における商業的酪農の勃興―デリーとベンガルールの事例から―」

 

    

 

 

上杉 妙子(専修大学)

 「国境をまたぐコーポラティズムー在外ネパール人協会とネパール政府」

本発表では、非西欧市民社会の動態についての研究を進展させるために、移出民の越境市民社会の団体と出身国政府との関係について検討した。具体的には在外ネパール人協会(Non-Resident Nepali Association)とネパール政府の関係を取り上げて検討をした。

結論は以下の通りである。第一に、越境市民社会団体である在外ネパール人協会とネパール政府は、国境をまたいでコーポラティズム的な関係を構築している。第二に、このコーポラティズム的関係において、ネパール政府と在外ネパール人協会は対等ではない。移出民は、ネパール市民権の有無にかかわらず選挙で投票することができない。そのため、在外ネパール人協会は政府の監督・指示を受け入れたり、政策形成に参加、国外における政府の業務を代行するなどして、政府と密接な関係を築き、陳情を繰り返している。政府にとっても、同協会と密接な関係をもつことには、移出民たちの財と活力、知識技術を経済発展のために利用することができるという利点がある。第三に、同協会と同政府との間のコーポラティズム的関係を通した政策形成は国内在住の有権者の目には見えにくく、国内のネオ・コーポラティズムについて指摘されている二元的政治構造 (議会制民主主義とネオ・コーポラティズムの併存)が見られる。移出民の越境市民社会団体と政府のコーポラティズム的な関係が、政府の説明責任や民主主義的体制、国内市民社会にどんな影響を及ぼすのか検討する必要があろう。

    

 

                             

 

  

 

     

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