活動状況

2019年度 HINDAS 第2回 研究集会 報告

【主催】南アジア地域研究 広島大学拠点(HINDAS)

【日時】2019年7月13日(土)13:30〜16:50

【場所】広島大学大学院 文学研究科1階 大会議室(東広島キャンパス)

 

【報告】

中空 萌(広島大学):知的所有権の人類学:現代インドの生物資源をめぐる科学と在来知

本発表では、2019年2月に世界思想社より出版した『知的所有権の人類学:現代インドの生物資源をめぐる科学と在来知』の内容を要約して紹介した。冒頭では薬草資源/在来知の知的所有権をめぐる諸問題の概要、その中でのインド、またフィールドである北部ウッタラーカンド州の事例の代表性、さらにこの問題に文化人類学的な手法で経験的にアプローチする意義を述べた。その上で、M・ストラザーンの所有論を参照しながら、ウッタラーカンド州デーヘラードゥーン県及びチャモーリー県において2年間かけて行った調査の結果を整理した。ウッタラーカンドの薬草資源の領域に「知的財産」という概念が持ち込まれる過程とは、薬草収集、慈悲としての知識の提供、治療の効果といった現地の実践や考え方との「翻訳」をとおして知識の「所有」についての新たな考え方が立ち上がる契機であると論じた。結論では、民族誌的な調査とロックの再解釈を通して、過去の労働の成果への権利ではなく、未来へ向けた義務と責任としての所有の可能性を提起した。会場からは、現代インドをめぐるより広い知的所有権問題(例えばジェネリック医薬品特許)や資源管理問題との関連や、対象となった在来知の内容や「ヴァイディヤ」などの治療者の多層性、プロジェクトがもたらした包摂と排除について、幅広い質問とコメントが出され、活発な議論が展開された。

                               

 

宇根 義己(金沢大学):新興綿紡績産地の形成―アーンドラ・プラデーシュ州を事例に―

アーンドラ・プラデーシュ州は1970年代以降に綿花生産が急速に拡大し,また綿紡績業も1990年代以降に展開するようになった,インドでは新興の綿紡績産地である。本報告は,同州のなかでも紡績工場が集中しているグントゥール県を事例に,新興産地としての綿紡績産地の形成要因を明らかにするとともに,調査企業の実態を示した。

グントゥール県における綿紡績産地の形成要因は以下の3点にまとめられる。①同県は1960年代に開発されたナガルジュナ・サガール・ダムと同ダムから取水される運河の開発によって綿花栽培が拡大した。②加えて,同県は超長綿の栽培に適した自然環境であり,国内外における超長綿の需要の高まりに対応するようにして生産量が伸びていった。加えて,③1990年代に繰り綿工場から紡績業へと事業拡大した企業・企業家の存在が重要であった。

現地企業の調査結果からは,当産地は基本的には繰り綿工場と紡績工場とが独立する分業構造を有していること,綿繰りから紡績,織布・染色まで垂直的な事業展開を行う企業が存在し,当産地における多角化・高付加価値化を牽引する役割となる可能性が示唆された。

質疑応答では,BTコットン(遺伝子組み換え綿)をめぐる農家等の動向や,各工程における生産と価値に関わる点,紡績企業経営者の経歴に関する点などについて指摘・コメントがあった。

                            

 

 

 

     

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